【実話怪談ですよ07】初めての祓(中編)
さて行ってみたものの…
今思い出して、自分の車で行ったのか、バイクで行ったのか覚えていないのだけど…行ったのは、行った。
ややお金持ちが住む住宅街にそのマンションがあって、至って普通のマンションだったのは覚えている。何階か忘れたけど、行った時は夜…だったと思う。
なぜ「思う」と書いたかと言うと…部屋に灯りが点灯していたことを覚えているから。
でも、道中に(以前住んでいたエリアだったので)市民病院が見えた景色が曇り空だったことも覚えていて…はたして夜に行ったのかどうかの自信がない。これもまた人間の記憶が曖昧なせいと、すでに向こうの何かにハマっていたのか、今になっても分からないから不思議だ。
到着して、駐車場から電話して…そこから階段だった記憶があるけど、上まで登って。そして「部屋に灯りが点灯していた」という部分に繋がる。
ちょっと驚いたのは確か。
確かに部屋の灯りを点けるということは珍しいものでも何でもなく、MAXに明るくしているという部屋は薄暗く感じた。
「初めてのお部屋で言うのもアレですけど、何か暗いですよね。」
と口走ったことは、覚えている。
そこの家主であるYさんも、そう感じますかと言いつつもこの明るさに慣れてしまっているので、気にならないと言う。
昔は電灯の輪が二重になっていて、大きい方と小さい方の両方もしくは片方を点けるとと選択して部屋の明るさを決める電気だったのだけど…2つとも点いている。
灯りだけではなく…
そこでコーヒーが出て、色々とお話を聞いているとだんだん白いモヤみたいな、煙みたいな感じで部屋の中もYさんも薄い霧の中にいるように見え、ちょっと居心地悪いな…と思いながら、話に耳を傾けた。内容はSさんから聞いたまんまの内容だったので、はい。まぁ〜、そうですよねぇ。と大人な返事をしていたような記憶がある。話もある程度聞いたので、そろそろと「そのお嬢様が使っているお部屋を1分でいいので、少し見ていいですか?」と切り出した。
Yさんは待ってました!とばかりに話していたダイニングからお嬢様の部屋へと案内してくれた。「あ!」と小さな声で呟いてしまったと思うのだけど、ドアを開けた途端、私の目に入ったのは、綺麗に整頓されたお嬢様のお部屋の奥には大きな窓。その窓の向こうにある景色…からの、次の瞬間には上から黒い人が落ちてきたのが見えた。
ぉぃぉぃ、こういうパターンって聞いていないから。
心の中で度肝抜かれつつ、ドッと脂汗が出た気がした。
「先生、何かやっぱりありますか?」
「いや、まぁ、こういう先生ではなくて…まだ医療系の研修生なんですがね」とか濁しつつ、そっとドアを閉めた。
とりあえず、ダイニングに戻りましょうと話をしつつ戻る。
間を置いてから…
どこから話していいものやら…と思いながら、「Sさんにも伝えましたが、何しろ私もこういうことが専門でもなく、医療系の学生ですから」と本日何度目かの前置きをしてから、「お嬢様のお部屋の物とかは全く問題ないと思うのですが、もしかして最近その自殺したいって話…飛び降りたくなるって言ってません?」とおずおずと聞いた。
ハッ!としたのかどうか知らないけど、「どうしてそれ…」と言葉が止まる。確かにSさんもYさんも私に「自殺願望があるみたい」というような表現はしていたけど、「飛び降りたくなる」というキーワードは使っていなかった。
「ちょっと言いにくいんですけど、窓とか階段とかそういうのではなくて、ベランダから飛び降りたくなるって言ってないです?それも朝でも夜でもなくて昼間。ちょうど14時ぐらいから15時半ぐらいにかけて言うと思うんんですよね。ぃゃ、これは私のあくまで勘というか、推測なのですけど…間違えていたら、大変申し訳ないです」
と一気に話した。なぜなら、本当に期待を大きく持っているのはSさんやYさんの話ぶりで分かっていたので、それを裏切る結果なら、先に謝罪しておいた方がいいと思った。
「これも予測ですけど、お嬢様、かなり心の中でソレっていうのも何ですけど、戦ってますよね。本当に強いです。ただただお母さんと一緒にいなくちゃって思っているのが引き留めているだけなんですよね」
とここまで話すと、Yさんも「やっぱりそうなんですか!!」と、今まで私に言っていなかったことを一気に話し始めた。そこは家庭の事情の話になるので、書かずにおきますが…実はこの件のマンションから3日後に引っ越すことになっていること。引っ越しが決まるまで、決まってから…どんどんお嬢様が荒れていったことは確かなのだろう。
そんな話をしている時に、ちょうどお嬢様が帰宅。
私に挨拶をしたので、「お母さんの肩こりや腰痛の診察に来たんですよ」と笑うと「いやいや、先生、本当のことを言っていいですから…」とYさんがついさっきまでのことをお嬢様に手短に話し始めました。
『初めての祓(後編)』に続く
八山さん家の怪談
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(注意)
この作品は鉢山家の怪談…八山法龍が個人的に体験したことや聞いたお話になります。登場人物などは特定されないよう、偽名・イニシャルなどを使用しています。また場所や地域・ご神仏などを特定されないためにしておりますので、これを読んで勝手な憶測で他人様のご迷惑などないようによろしくお願いいたします。