【実話怪談ですよ10】行ってくるね

火垂るの墓を見て

　最近、海外でも『火垂るの墓』が放送され、様々な反響が出ていることを知りました。実話ではないのだけど、第二次世界大戦を経験した日本人なら経験した、目の当たりにしたような。そんな経験をした親族がいる日本人も多いのかもしれませんね。
　かくいう私の両親もその頃は（今で言う）小学生だったし、学校は焼けてしまったり他の兄弟のために集団就職という名の下、都市部に夜行列車で都会に出たという人生を歩んだ人たちの一人です。そんな両親からはあまり話を聞くことがなかったのですが、その足跡を辿ることは両親の兄弟姉妹が多かったので出来ました。

母の妹の話

　私の母のすぐ下の妹である叔母もまた母と同じく都会へと集団就職で来たのですが、私を生まれた時からとても可愛がってくれており、私のもう一人の母親でした。そんな叔母からも『火垂るの墓』がなぜ「蛍」ではなく「火垂る」と書くのかが分かる話を彼女の晩年に聞きました。
　「あの時はみんなに叱られたけど、二階から街に雨みたいに落ちる爆弾が花火のように綺麗だったのよ。私も幼くて、その怖さが分かっていなかったのね…」

　晩年、叔母は一人の生活でしたが、いつも「もう一人が楽なのよ」と時々訪れる私に笑いながらたくさんの話をしてくれました。それはもう私の一族では語り部が（恐らく）いないだろう、祖父母も両親も駆け落ち結婚だという小話から、先祖の話などなど。今となっては私の心の中でピカピカに光る思い出となっております。

そっくりな…

　老いれば、老いるほどに、叔母は私の母そっくりな顔、座り方、仕草をするようになり…私はなんとも言えない思いとなり、少し足が遠のきました。それでも電話だけは時折していたのですが…。

　そんな夏のある日。
　それは私の現在住んでいる家の呼び鈴がピンポーンと鳴ったから、はーいと玄関のドアを開けるという日常の一コマ。

　「あれ！？マミー？（叔母のこと）どうしたの！？よくここまで上がって来れたね」

　晩年の叔母は脚を悪くしておりました。そして私の家は五階にあるのですが、階段しかない古い建物なので、ビックリしたのです。

　「そうなんよ。もう元気になったから行ってくるねー♪」

　叔母は世界中の美術館と遺跡を見ることが趣味でしたから、私が若い頃に海外へ行くべきと旅行に誘った時のように元気溌剌で当時の若さに戻っている姿。叔母の好きなグリーンのTシャツに白いシャツを上着代わりに着ていました。階段の下には同じくグリーンの派手なワンピースを着たふくよかな黒人女性がいました。

　「次はアフリカなん？行ってらっしゃーい！気をつけて！！」

　その声に彼女はニコニコとして、いつものように手を振り、その黒人女性と共に階段を降り始め…ハッ！と目が覚めました。何だ夢かとういう感覚と共に、もしかしてとすぐにスマホに手を伸ばして電話したら「現在使われておりません」のアナウンス。
　そのまま父親に電話して「お父さん、大変！！マミーが亡くなったかもよ！？」と連絡したのです。

半年以上して…

　私たち親子が分かったことは、私が夢を見た年の春に亡くなったこと。
　そこから逆算したら凡そ四十九日か初盆少し前に当たる可能性があること。
　従兄妹たちは、親族はもちろん近所の人にも伝えておらず、近所の人も訃報を亡くなった月だろう時期の回覧板で知ったとのこと。

　あぁ、私が心配するから、知らせに来たんだなと思っています。
　だから一番元気だった頃の姿で
　だからお気に入りのグリーンカラーを身につけて
　だから（叔母がまだ行ったことない）アフリカに行くと…転生すると伝えたかったんだろうと

　愛する人との離別は「苦」であると、ゴータマ・シッダールタは紀元前五〜六世紀前に言葉を残されました。しかし真言密教では全てが大日如来のあらわれであるとします。
　「死」もまた「苦」の一つとされます。
　しかしその出来事さえも大日如来のあらわれであると真言密教では受け捉えます。
　そこには何かの教えがあると私もまた考えています。

　私の母が残した言葉は「ありがとう。さようなら。またね」
　同じことを叔母は、夢の中で泣き虫でまだまだいたらない私に伝えに来たのだと感じています。

　

ここまで読んでくださって、ありがとうございます！

八山さん家の怪談

→八山さんの家の人で、普通の一般会社員。
怪しいことや怪談が好き。

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（注意）
この作品は鉢山家の怪談…八山法龍が個人的に体験したことや聞いたお話になります。登場人物などは特定されないよう、偽名・イニシャルなどを使用しています。また場所や地域・ご神仏などを特定されないためにしておりますので、これを読んで勝手な憶測で他人様のご迷惑などないようによろしくお願いいたします。