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【実話怪談ですよ16】暗黙の了解

 前回は現在の職場のことを書きましたが、今回は昔勤務していた職場のお話です。
 こう見えて(別に姿をだしていませんが)若い頃は企画・宣伝という部署に所属する会社員でした。そんな20代、平成の頃のお話でございます。


雑居ビル

 何度目かの応募で、無事に就職出来た頃。まだ研修期間3ヵ月が徹底していた時代。もちろん、私もまだ研修中で最終月だったと記憶しています。当時のそういった系統の仕事は深夜までという職場が多かった時代です。きっとこれを読んできる人の中にも、深夜残業をしたこがある人もおおいかもしれませんね。

 そこは駅近くになる、比較大きめの雑居ビル。
 1階にはコンビニや銀行などが入っていたと記憶しています。2階以上は様々な企業の事務所が入っていたのですが、当時の私が属していた会社はそのビルの最上階とその下のフロアと2階分を借りておりました。

 毎日の深夜残業。帰宅は最終電車に駆け込むことが多かったので、途中から私は自宅からバイク通勤に切り替えました。
 そんな毎日、普通の勤務時間は別として、残業時間帯に入って.19時〜20時以内にほとんどの人は忙しくトイレに行っていることに気づきました。よーく観察していると、その後はよほどがない限りトイレに行っていないというかほかのフロアのトイレを利用している様子なのですが…。


トイレに駆け込み

 そんなことがうっすら見え始めた時、人間生きていると「緊急事態発生」でトイレに駆け込むことが起きるものです。当時、私も「やや緊急事態発生」でトイレに行くことになったのですが、そういう時は「うっすら気づき始めたほかのフロアのトイレを利用する」という見えないルールを忘れておりますから、いつものゆに自分のいるフロアのトイレに入ります。
 余談ですが、その時はまだ女性として働いていたので、女子トイレに入ったのです。

 「やや緊急事態」も無事に何とかなり、トイレから出て手洗いをしていると、ジャーっとトイレを流す音が聞こえました。
 「あれ?誰か入っていたのかな?」と思いながら手を洗い、手の乾燥機で乾かして、出口から出る時に何気なくトイレの中をチラ見する。

 自動で水が出る蛇口から水が出て、手の乾燥機がウィーんと鳴る。

 「!?」

 無言のまま、私はそこに立ち止まってしまいました。
 そうやって自動で動くものは動いているのですが、肝心の人の姿がありません。驚きと、今見ている光景の不思議さに呆気に取られていると、隣の課の課長さん(女性)が声を掛けてくれました。

 「もう、みんな仕事終えて、今日は帰ろうってなったら…戻って、片付けようか?」

 そう言われて、何が何だか分からないまま自分のデスクに戻り、片付けてみんなと一緒にそのビルの1階に向かうエレベーターに乗りました。


今思い出すと…

 私の記憶はこれで終わっているのですが、そこのビルではそういうことは、暗黙の了解で…無視して仕事をするというのが恒例だと、後で知ったのです。ただ私はその出来事があって、1ヶ月後ぐらいにそこは退社して、全然違う仕事についたのですが、あれは何だったのでしょうね。

 ただその会社はいつの間にかそのビルから消えておりましたし、近畿エリアではそこそこ大きな企業だったにも関わらず、今ではその影もほとんどありません。色んな企業がありますが、色々とあったのだろうと思いながら…やはり人の恨みまで買うような商売はするものではないなと思う今日この頃です。


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【実話スピ17】授かりしもの


八山さん家の怪談
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(注意)
この作品は八山家の怪談…八山法龍が個人的に体験したことや聞いたお話になります。登場人物などは特定されないよう、偽名・イニシャルなどを使用しています。また場所や地域・ご神仏などを特定されないためにしておりますので、これを読んで勝手な憶測で他人様のご迷惑などないようによろしくお願いいたします。

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