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【実話怪談ですよ20】生きている雛人形

 本日はひな祭り。
 たまには時節柄にちなんだお話をと思い出しましたので、コチコチと書こうと思う。これは私の家に今でもある雛人形の話である。


雛人形の由来

 我が家にある雛人形は、私が生まれて初めてのひな祭りに両親が人形の街、松屋町という(今はかなり寂れた感じがする)人形やおもちゃの問屋街で昭和の頃に慌てて買いに行ったものだ。私も幼い頃の記憶に、母と共に棚を組み立て、人形を並べ、お菓子やお花を飾り、「桃の節句」について話を聞いたな…と懐かしい思い出がある。
 大阪の下町で育った私には豪華すぎる木目込人形で、今日も私の家の彼らは静かに存在している。


年に一度だけ見れる怪異

 もちろん、「ひな祭り」というのは年に一度しか来ない時節柄的・伝統的な日本人のイベントとなっている。元は中国の「上巳(じょうし)の節句」にさかのぼり、人形に災いを移して川や海に流す「流し雛(ながしびな)」という風習が起源とAIさんがちゃんとまとめてくれているので、大学院での研究を漁らなくて済むのは助かる。
 まぁ、「桃の節句」ですから、女の子の健康と幸せなどを祈願し、祝う日ですから…めでたい日なのである。

 そこで準備をするのだが、いつの頃からか私の母が「アラアラ…」と言いなが数体の人形の髪を解かしながら、ハサミで伸びてしまった髪をカットする。幼稚園・小学生・中学生…。
 確かに人毛を使ったものは少しは髪が伸びることがあると、何かの書物で読んだことがあるのだが…毎年、毎年、毎年…必ず、カットする。何センチなのか何ミリなのか分からないけど、必ず髪を整えてからカットする。

 母親が亡くなって、少し落ち着き始めた時に…フッとこれを思い出したことがあった。私の年齢と同じ歳の雛人形たちは年に一度、飾られる。
 年に一度、髪をカットする。

 ずっとそのままにしておいたら、呪物とは言えないが「髪の伸び続ける人形」として存在するのだろうと思う。
 ただコレを書いている今も、子どもだった頃も…それ(母と一緒に話しかけて、髪を整える)は当たり前のことであったし、恐怖感など一切ない。逆に愛おしさというか、「あー、今年も綺麗に着飾って、いっちょお祭りを(一緒に)するか!」という感じがする。

 今年は雛人形たちをきちんと飾ってやれるように…本当に片付けをしなくちゃなと思う新暦の三月三日である。
 きっと飾る時には彼らの髪を整えて、私が「おー!」と言いながらカットするのだろうと思う。半世紀近く一緒に生きているのだから…。





八山さん家の怪談
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(注意)
この作品は八山家の怪談…八山法龍が個人的に体験したことや聞いたお話になります。登場人物などは特定されないよう、偽名・イニシャルなどを使用しています。また場所や地域・ご神仏などを特定されないためにしておりますので、これを読んで勝手な憶測で他人様のご迷惑などないようによろしくお願いいたします。

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