トレンドを見越したプロダクト設計について
先日、カンムナイト「大きな産業のトレンドから作るB2Cプロダクト」というイベントを行った。1万字を超える書き起こしをしてもらったので、中身は下記に。
テーマが「トレンドから作るプロダクト」、だけど自分の中の結論として、トレンドからプロダクトは作れない、となった。その補足を書いてみたい。
「未来を見通すのは(意外と)難しくない」と書いていたLayerXのfukkyy氏のブログに、自分もえらく共感した。
ボトムアップで、今ある情報から未来はこうなっているだろう、こういう課題が今既に存在していて、こういう解決策で解決しているだろう、というのを積み上げて考察するのはそこまで難しくない。ただ、いかんせん、その解決がいつ実現されるのか?は、極論、一個人の決定などの不確定要素が多く、読み切るのは至難の業だ、というか無理と言っていいかもしれない(例えば法改正するに、権力者が反対していたらそれだけで数年遅れる、とか)。
つまり、そのソリューションが市場に受けいれられるタイミングを読むことができないがゆえに、トレンドを先回りして掴むのはほぼ不可能だと考えた。結論としては、そのタイミングまで生き残るためのカードをたくさん持っていること、がトレンドを掴むには大事、となっている。具体的には、とにかく費用を抑えることは当然として、多めに調達することや、カンムナイトで@yamotty3が言っていたように営業キャッシュフローを早めに生める将来につながる商売をすること、などが思いつく。ここらへんの論点は、ラーメン代稼ぎ、という観点で2009年のポール・グレアムから延々と語られているように思う(ここでは、ラーメン代を稼げていると調達が有利、的なニュアンスが強いが)。
「ラーメン代を稼ぐと決める」が難しい
しかし、それが中々難しい。この2009年の記事からこの論点はあまり進展していないように思える。さらに言えば、最近はエンジェル・シードラウンドの調達環境が整ってきており、プロダクトリリース前から調達することが当たり前で、ラーメン代を稼ぐ必然性が減っている背景もある気がする(国内の事情だけ見てると)。1つ目のプロダクトにかけられる資金と時間がそこそこ生まれるので、ラーメン代についてあまり考えなくなるためだ。というかむしろそのプロダクトに集中することを推奨される。それも正しい。
この論点は、シリーズAの直前ぐらいで目の前に突きつけられる。というのも、特にB2Cプロダクトの場合、シリーズAの直前では、あまりマネタイズは見えていないが、ユーザー数などのKPIはある程度伸びている、というケースが多い印象で、
①マネタイズは後回しでとにかくそのKPIを伸ばすために大きめに調達する
②まずは立ち止まってマネタイズを優先する
の二択が戦略として提示されることになる(それはシリーズAではない、というツッコミは甘んじて受け入れる!)。
ほとんどの場合①を選択しているだろう。かくいう弊社も①だったように思う。ただ、①の場合、バリュエーションはpost10億円を超える場合がほとんどで、そうなるとM&Aの選択肢はあまりなくなっている。10億円以上も出して買収する企業は日本には多くないからだ。①の後、マネタイズモデルが見つからなかった場合、とにかく大きな絵を示して調達し続ける泥沼にハマるケースも出てくる。逆に、マネタイズモデルが見つかったら大きくハネる可能性があり、ベンチャーとしては正しい選択だった、ということになる。
ここで言いたいのは、①はギャンブルだから②を選べ、ということではない。今になってみると、①を選択する前に、そのプロダクトでIPOまで駆け抜けられるか?その後も成長し続けられるか?は自問自答しておいたほうが良かったと思ったため、②という選択肢も敢えて強調している。ちなみに②は保守的な決定、というわけではない。もっと大きな市場に参入できるパスを見つけるための英断、と取ることもできる。もっと大きなパイを取るために、今はキャッシュが回る仕組みを優先して、大きくオールインするタイミングまで待つための戦略でもある。それまで見晴らしの良い場所で虎視眈々と投資機会を狙うわけだ。
なんとなく、自分なりの指標としては、調達して5年以内に純利益3億以上を生めてその後も2桁成長できそうなら①でGoでいいと思っている。IPOできない、ということはほぼなくなるからだ(日本では)。ただ、シリーズA前時点で、そこを見極めるのは極めて難しいのだが、そこはもうセンスと自信次第。。。
②は"やりたいこと"じゃないともたない
ただ、②を選択する場合、10年20年スパン(30年?)で事業を行うことを覚悟する必要がある。普通の表現だが、自分のやりたいことを事業にしたほうが良い。が、自分がやっていることがそのやりたいことなのか?に答えを出すのが案外難しい。
@yamotty3と自分の共通点で鑑みるに、産業の行く末と自分の会社がリンクした瞬間に長期的なやりたいことになっている感覚を得た。例えば、自分はビジョンを考える際に、「経済を進化させる」というワードに具体的な仕様をつけるために経済学や金融の本を読み漁ったときから、明確に産業(この場合、金融)と今のプロダクトがつながり、長期的な会社の存在意義のイメージが持てた。これがやりたいことです、というのを明確に言えるようになった。このブログを書いたあたりからだと思う。
また、小売や金融といった重くて大きな産業は、知れば知るほど面白い。学習しないといけないことが無限にあって、未だにその1%も理解していない感覚がある。これは、学習意欲の高い人はそれだけでモチベーションだと思う。10年やってても飽きないだろうという自信。また、ゼロサムゲームではなく、本当に経済成長に寄与する感覚を得やすい、というのもある。ただ、実際問題、5年以上同じ待遇を維持するのはそれはそれでしんどい。そういう意味でもキャッシュが回る仕組みを早めにつくることが肝要だ。
そもそもやりたいこと・興味ある産業がないんです、という人は情熱を育んでみるのが良いと思う。
まとめ
後半、シリーズAの調達戦略みたいになってしまったが、トレンドを先回りしてプロダクトをしっかり仕込んで一気に伸びた、というケースはあまり知らない。というより、将来こういうのが受け入れられる、と腹をくくってその将来が来るのを耐えて、最終その波を掴み大きくなったケースのほうが圧倒的に多いと思う。そのために、一発一発のプロダクトで波に乗せるのを狙うだけではなく、長期的なベットの方法も考えてみると、より成功確率が上がると思いました。
(余談:自分はテキサスホールデム・ポーカーなりのギャンブルをやってみて良かった。目の前の勝ちを拾ってせこせこ稼ぐのではなく、大きく勝てる時に一気に勝負をかける方がトータルで勝てる、というのが身に沁みて分かる)
ちなみにこれはカンムのアドベントカレンダーの記事の一つ。弊社に興味ある人は他の人の記事も見てもらえるとありがたい。
あと、多分次のトレンドをつかめると思っている(笑、新プロダクトも仕込んでいるので、是非応募ください!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?