父の愛
「今年最後のいちぢくだ」
「お前が帰ってくるまでとっておいたんだ」
先日、久しぶりに実家に帰省した。そのとき、父からおもむろに渡された。いちぢく。実家にはいちぢくの木が二本あって、春と秋に実をつける。
私はいちぢくが大好き。それを知っている父はきっと、私の帰省が決まってから、形が良くて大きくて美味しそうな実を、私のために厳選してとっておいてくれたんだろう。
父の愛はさりげない。さりげないけど、深くて広くて、あたたかい。それを感じることができるようになったのも、ひとり暮らしをはじめてから。今までは、あたりまえになっていた。あたりまえに思って、見過ごしていた。気付けて、受け取れるようになれて、良かった。
いちぢく、昨日の朝ごはんにいただきました。
ふわりとさりげなく甘くて、優しい味。私にとっていちぢくは、父の味だなぁとふと思う。あと何回、父から受け取るいちぢくを食べられるんだろう。父の笑顔が脳裏に過ぎる。
ひとり暮らしは楽しいけれど、帰れるときは帰れるだけ、実家に帰ろう。そして、掃除や片付けを手伝ったり、家事をしたり、私にできることをできるだけしよう。それはいつか、かけがえのない宝物に変わる気がする。
今年も秋の味覚をいただきました。
ありがとう。