「一人がいい」のに「独りは嫌い」な人
もう家の周りでは視界のどこにも桜のピンクが映らない。
まだ寒かったり暖かいのを繰り返したりもしたけれど、もうそれも終わるみたい。
この前電車で若い学生風の男性が二人こんな話をしていた。
「はぁ、ほんとめんどくせーわ。」
「何?あれ、彼女?」
「そう。今日会えないって言ったらじゃあ明日は?だってさ」
「いいじゃん。愛されてんじゃん。」
「愛してんなら察してくれって感じだよ。学校でイチャツつかれんのはまだいいけどさ、家とか一人の時にまで来られるとキッツいわ。」
「ほら、俺一人が好きじゃん?一気に萎えるんだよね、グイグイ来られると。」
「一人だと気遣わないでどこに行ってもいいし、家に引きこもっててもいいし。何時間ゲームやってもだれにも文句言われないし」
「ひとりって楽だわぁあああ~」
「まぁ、言いたいことはわかるけどな(笑)」
「けど、お前言ってなかった?一人で飯食うの得意じゃないって」
「飯は誰かと食った方がうまいって言ってたじゃん」
「言った!(笑)飯は一人で食うもんじゃないでしょ!つまんないもん!」わかるわかるぞ青年。そうだよな、飯は人と食った方が楽しいよなうんうん。
と、心の中で頷いていたら、二人は六本木の駅で降りて行った。
「えっ・・六本木で飯なんて食うのか・・・?マジか・・・いや、けど・・・マジか・・・」
なんて、軽く動揺を隠しつつも先ほどの二人が話していた内容を頭の中で反芻していた。
あーだこーだ考えていくうちに思ったことがある。
「一人で食う」のと「みんなで食う」時の飯の味ってなんというか、別モノじゃない?
一人で食う飯が美味しい時ってあるよなぁ、と。
「今日は給料日だからいつものラーメンに半熟玉子追加しよう!」とか
月に3回ぐらい思うもの。結果追加するし。
自分で選択して食べる「ひとり飯」と食べる人がいなくて仕方なく一人で食べる「独り飯」は似てるようで違う。
それぞれの良さってあるもんね。
その時その時で胃袋が欲しているものが違うように
心もまた、その時々によって違う。
それがぴったり合った時の飯はたまらなく、美味しい。
けどあれか。
一番美味しいのって「人の金で食べる飯」かな。