SLEUTH / スルース 2024の感想(1回目)

※めちゃくちゃネタバレを含みますが含んだからなんだってんだって時期に公開する事にしました(2025年2月)

スルースを観劇した。
このあと京都劇場の公演も観劇予定だけど、とりあえず1回見た感想を書き留めておきたい。それくらい面白い演目だった!

アンドリュー(升毅)とマイロ(戸塚祥太 from A.B.C-Z)、どちらも回数を重ねる毎に役が馴染んでいきそうなお芝居だったのでもっともっと面白くなりそう。次回観劇が楽しみで仕方ない。
というのもストーリー展開としてはミステリーっちゃミステリーなのだが、セリフの端々からアンドリューとマイロの背景が見えてくる会話劇なのだ。板の上の二人が会話を重ねれば重ねるほどアンドリューとマイロが馴染んで板上の世界以外の世界が見えてくるように感じる。
叶うならどんなアンドリュー、どんなマイロが出てくるのか毎公演見続けたいくらい!

スルースの登場人物は二人。
アンドリューは著名な推理小説家で金もあり地元の名士でもある英国人。対するマイロは小さな旅行会社を営むお金も地位もない青年。そして生粋の英国人ではない。イタリア人の父親が英国に渡ってきたというルーツを持っている。
さらっと書いただけでも対照的な二人。この二人が同じ盤上でお互いが場の神となり悪趣味極まりない騙し合い(アンドリューから言わせると"ゲーム")をスタートさせる。これがこの演目の主線。そしてアンドリューが小説の中を超えて自分の神の視点を現実に据えたことですべてが狂いだした───という感じのあらすじ。

さて対照的な二人がなぜ同じルールのゲームで戦えたのか。それは彼らが二人とも夢見がちな人だったからではないだろうか。アンドリューは小説家で小説に書いたことが現実でも通用すると信じているし、マイロはお金がなくても愛があれば大丈夫だと信じている。
そんな2人の男性を知るマーガレットはどんな女性なんだろう?とちょっと気になった。

これは戸塚マイロならではの表現の仕方なのかもと思う場面がある。マイロがアンドリューと会話していく中で、自分の父親とアンドリューを比べるところだ。マイロの父親は時計職人でマイロを2流大学へやるために名前をイギリス人っぽくして働いた。結局成功はせず、今はイタリアへ戻っている。自嘲と憤り、そしてそれでも持ち続けている自分のルーツへの誇りを感じるお芝居で、その心情を感じて胸がぎゅっと押しつぶされる様な気持ちになった。そうやって一幕でアンドリューとのやり取りをしていくうちに、マイロが育ってきた世界への感情が一気にあふれる場面も非常に感情を揺さぶられた。始めは点のような羨望(だったと思う)が一気に自嘲と憤り、そしてそれでも持ち続けている自分のルーツへの誇りとして表現された瞬間が素晴らしかった。そのあたりからブワッと二人の背景が広がり、お芝居に引き込まれていった。これは戸塚マイロならではの表現になるのかも知れないなとも思っていいもん見たな~と思ってる。早くもう一度見たい。

逆に二幕ではアンドリューの失ったものが明らかになる。それはマイロが当たり前に持っているもの(要するに若さ)で、その対比を見守るのも面白い作品だった。二幕のマイロは正義のヒーローの様な気持ちも混ざっているのかなという雰囲気もあって、緑に満ちるのユウちゃんを思い出す瞬間もあった。実際、一幕でマイロはアンドリューから虫けらの様な扱いを受けたし、こんなひどい奴からマーガレットを救い出さねば!と強く感じたに違いない。ただ命を賭けるほどマーガレットを愛していたのかどうかはわからない。でも命を賭けて自分のプライドを守るために戦ったのだとは感じた。

男ってバカね。
マーガレットの高笑いが聞こえた気がしたような。

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