【愚痴6】慈悲浅い
どうも、エイトブリッジのLINEの返信が遅い方、
篠栗です。
3月11日という日は、
日本人にとって
思い出したくないけど、決して忘れられない日であり、
これからも語り継いでいかなきゃいけない日だと
僕は思う。
あれから10年。
やっと10年なのか、もう10年なのか。
人それぞれ感じ方は違えど、
その日を迎えると思い出す記憶が皆にあるはずで、
今日は僕の10年前の3月11日の話を少し。
東日本大震災の話に少し触れさせてもらいますので、
辛いことを思い出してしまいそうな方は、
遠慮なくここまでで退出してくださいね。
先に言っておきますが、
そんなたいそうな話をするわけでもありません。
あの日僕は、
数日後に控えていた養成所の卒業ライブに向けて、
中目黒の養成所のフリースペースでネタ合わせをしていた。
何のネタをするか、とか
どんなやりとりを増やすか、とか
話し合ってる最中に、急に壁が揺れはじめた。
養成所は、目の前が大通りになっているため、
なんかデカいトラックでも通っているのかな、と思っていると
徐々に揺れが大きくなり、建物全体が揺れ始めた。
大急ぎで相方と一緒に机の下に隠れ、
揺れが収まると、急いで建物の外に出た。
それから近所の避難所に移動し、
携帯から流れてくるニュース映像の数々に
度肝を抜かれた。
当然のように電車は止まり、
当時埼玉県の志木というところに住んでいた僕は、
帰る術をなくした。
家に帰れないことは確定したけど、
その日の僕には渋谷の居酒屋でのバイトがあった。
店が営業するのかどうか
電話をしても繋がらず、
しょうがないので、とりあえず渋谷のバイト先まで歩いて行った。
店に着くと、店のシャッターは開いていて、
店内には店長が1人で立っていた。
店長は同い年の女性の店長だった。
25、6才で、いち店舗を任せられる立派な社会人の女性。
かたや、僕はお笑い芸人という遠い夢に憧れるアルバイト。
同い年だなんて恥ずかしくて言えない立場の差。
当時、店長の目に僕はどう映っていたのかわからないが、
おそらく軽めに軽蔑されていたとは思う。
そんな店長が、
食器が割れたり、お酒のボトル倒れたりしている店内で
立ち尽くしていた。
そんな店内に入って行き、
「今日って、店どうするんですか?」と聞いてみた。
「営業…できないね」
「ですよね。・・・これ、片付けるんですか?」
「そうだね。」
「手伝いましょうか?」
「いいの?」
「いいですよ。どうせ帰れないし」
そんな感じで、
店長は事務作業や電話対応に追われたりもしながら、
なんとか地震が起きる前の状態に戻せたかな、くらいまで
店内を2人で片付けた。
片付けが終わると、
店長が僕の元に擦り寄ってきて、ボディタッチ多めのトークで盛り上がり、
次第に2人は見つめ合い・・・
みたいなことはなく、
僕は片付けが終わると再び中目黒まで歩き、
養成所の近所に住む同期の家に泊まることにした。
店を出るときに、店長にすごく感謝された。
1人じゃ多分こんなに片付けられなかった、と。
今日は営業できないから給料は出ないけど、なんかしらでちゃんとお返しはするから、と。
本当にありがとう、と。
とんでもないです、と言って、僕は同期の家に向かった。
それから数日後、
開催が危ぶまれていた養成所の卒業ライブが
日程をずらして無事に行われることになり、
それに向けてネタを仕上げつつ、
自分の中で何かが足りない気がした僕は、
髪の毛を金髪にした。
自分にも何かしらキャラを付けようと思った挙句、
金髪にするということで、自分の見え方を変えようとしたのであった。
金髪にして挑んだ卒業ライブ、
黒髪でネタをやっていた時となんら変わらぬ手応え。
なんなら、黒髪の時の方がウケていたんじゃないかというくらいの手応え。
髪の色とか、そういうことじゃなかったんですね。
でも、今後金髪に見合う芸風になっていけばいいか、と
どこか楽観的に考えていた。
そして、金髪にして初めてのバイトの出勤で、僕はクビになった。
たしかに、1年前にバイトを始める際、
就業規則に「染髪禁止」と書いてあった気はしていた。
でも、僕は少したかを括っていた。
詳しく話すと長くなるので省略するが、
この僕のバイト先の店舗は色々と問題の多い店舗で、
オーナーや店長がいなくなったり、
よくわからない役職のおじさんがずっと店を仕切っていたりするような
店舗だった。
キッチンの中もほぼ外国人だし、
そんな中で、1年間でホールからキッチンから他店へのヘルプやレジ締めまで仕事を覚えて、
この店に不可欠な存在に成り上がった気持ちでいた。
店長の目にどう映っていたかはわからないけど、
僕は店にとってかなり重要な存在だという自負を持っていた。
だからこそ、地震が起きた日だって無給で店内を片付けたし、
それで店長にどれだけ感謝されようとも、
「当然のことをしたまでよ」とすら、思っていた。
でも、髪を金色にしたら、一発でクビになった。
正確にいうと、
出勤してきた金髪の僕を見て店長はまず言葉を失い、
営業が始まってから、キッチンで焼き鳥を焼いている僕の元にやってきた店長に、
「もう、明日から来なくていいから」
と言われた。
僕も僕で、「わかりました」とすんなり受け入れた。
今思えば、
「すみません、芸のためなんです。明日からは黒髪のカツラでも被ってやりますから」とか、
「そんなこと言わないでくださいよ〜」とか
言うべきだったと思うけど、
当時の僕は、
「へぇ、結局その程度の存在だったんだ。こんだけ店に貢献した僕をそんな簡単にクビにするなんて、慈悲の心はないのかい?全然慈悲深くないよ。慈悲浅いよ。慈悲浅い店だねぇ。ってか、俺がいなくなってこの店大丈夫なの?知らないよ?」
みたいなことを考えていた。
そうして僕は、
情けなく謝り倒してどうにか辞めずに済む方法を考えることなく、すんなりクビを受け入れて、その日が最終出勤日となった。
無論、僕がいなくなったとて、店は大丈夫だった。
チェーン店だったので、補充なんかいくらでもできるんだから。
慈悲とか関係ないんだから。
それが大都会東京なんだから。
むしろ、この店をクビになって以降、
中々金髪でも雇ってくれるアルバイトを見つけることができず、
2ヶ月ほど路頭に迷い、僕の方が大丈夫じゃなくなったのであった。
毎年、
3月11日が近づいてきて、
「あの日、何してた?」という話題になる度に
僕はこの出来事を思い出すので、
「地震が起きてめちゃくちゃになってたバイト先の店内の片付けを無給でやったのに、その数日後に金髪にしたら、一発でクビになったんですよ」
という話をする。
そうすると、
大体の人に
「お前が悪いだろ」
と言われる。
その度に僕は、
あんな地震、もう二度と起きてほしくないと
強く強く願うようにしている。
浅いのは、慈悲の心とかではなく、
多分大丈夫という考えで金髪にした僕自身だった。
ってか、
そもそも「慈悲浅い」なんて、
そんな言葉ないからね。
ここまで読んでくれた皆様、
ありがとうさぎ!ぽぽぽぽ〜ん。
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