【愚痴1】お母さんがファンなんです

昨日、久しぶりに出たライブの楽屋で

後輩から声をかけられた。

事務所も違うし、芸歴も結構離れているが、

ライブでよく一緒になるので、

別に話したことがないわけでもないその後輩。

「お母さんがエイトブリッジさんのファンで、

よかったら色紙にサイン書いてもらっていいですか？」

申し訳なさそうに、そう声をかけてきた後輩。

むしろ、後輩にそんなに恐縮させてしまってるのが申し訳ないくらいに

恐る恐る声をかけて来たので、

なるべく満面の笑みで「全然いいよ」と答えた。

後輩は、色紙とペンをもう用意していて、

「これにお願いします」と、差し出して来た。

宛名としてお母さんの名前を書き、

その下に大きく「エイトブリッジ」と書き、

その右下に僕のサインを書き、

左下は別府ちゃんのために空欄にした状態で、

一旦後輩に「こんな感じで大丈夫？」と確認。

「あ、はい。別府さんはどこですか？」と聞いてくる後輩。

周りを見渡すと、別府ちゃんの姿があったので、

別府ちゃんを呼び、

「お母さんがサイン欲しいんだって」と伝えると、

別府ちゃんも嬉しそうに、

「ありがたいねぇ」言いながら、ペンを握る。

その別府ちゃんと入れ替わるように、

僕はその場を離れ、自分の荷物が置いてある場所に歩き出した。

出番に向けて衣装に着替えようとカバンを開けて、

衣装を取り出しつつ何気なく別府ちゃんの方を振り返った。

そこには、

別府ちゃんと肩を組んで嬉しそうに写真を撮る後輩の姿。

お母さんに送るのかな？

「今日、エイトブリッジさんに会ったよ」という一文を添えて、

その写真をお母さんに送るのかな？

「サインももらったから、送るよ」とLINEでもするのかな？

そしたら、お母さんからはきっとこう返信が来ただろうね。

「わぁ、すごい！エイトブリッジだ！！嬉しい〜」と。

「篠栗さんは？」なんて返信はきっと来てないだろうね。

その後輩と、後輩のお母さんのために

一応、言っとくね。

俺も、エイトブリッジだからね。

その写真に写ってるのは、

「エイトブリッジの別府ちゃん」だからね。

決して「エイトブリッジさん」ではないからね。

僕こと「エイトブリッジの篠栗さん」も、

「篠栗さんも写真いいですか」って言われるかなと思って

衣装に着替えてからしばらく待ってたからね。

待ってたけど、なかったからね。

お母さんが喜んでくれたんだったら、

それが一番だから、

別にいいんだけどさ。

一応、もう一回言っとくね。

俺もエイトブリッジだからね。

P.S.

もし、お母さんが

別府ちゃんのファンなんだったとしたら、

別府ちゃんより少し大きくサイン書いちゃってごめんね。