vol.7 モノづくりで明るい未来に貢献する【OREC】
経営者とブランディングデザイナー西澤明洋が対談し、ブランドの成長ストーリーを振り返りお届けするシリーズ「BRAND STORY」。
執筆・編集 加藤孝司
撮影 トヤマタクロウ
福岡県八女郡広川町にある草刈り機などの農業機械製造販売をするOREC(オーレック)は、1948年創業。2018年に創業70周年を迎え、現在二代目である今村健二さんが切り盛りをする。70年続く業界の老舗で、自走式草刈機のトップランナーとエイトブランディングデザインとの出会いは2013年。2016年のブランドリニューアルにより「草と共に生きる」を新たなコンセプトに掲げ、世の中に役立つものを誰よりも先に創る思いで、業界初の社会に貢献する草刈り機を開発する。リブランディングの背景とそこに込めた思いについて、OREC代表取締役社長 今村健二さんと経営総合部 部長 関雅文さんにエイトブランディングデザイン代表の西澤明洋が話を聞いた。
モノづくりのコンセプトから考える
ーー2016年にリブランディングした背景と当時の状況を教えてください。
今村:私の父がモノづくり企業として戦後に創業して今年で72年目になります。リブランディングをする前は、製品の機能を第一にモノづくりを追求してきましたので宣伝もそうですが、デザインは二の次でやってきました。実際、世の中に役立つものをオリジナリティをもってつくるということをやっていれば、宣伝もデザインもネーミングもなにも関係なしに売れてきた時代が長く続いてきました。
私が36歳で二代目になったタイミングで社名も大橋農機株式会社(創業時は大橋農機製作所)から現在のORECに変更しました。その背景には農業機械専門からその周辺にビジネスを広げていくという思いがありました。
当時は社名の変更をし赤い色でロゴマークをつくるだけで、それ以降もインナーブランディングもなにもしてきませんでしたし、製品の機能を追求するという思いのまま、外からどう見られているかということに対して関心がありませんでした。
ーーそれがなぜ機能とデザインのバランスのとれた現在の姿に変えようと思われたのでしょうか。
今村:そのような状況をなんとかしなくてはいけないという思いは常に頭の中にありました。それで2012年に知り合いのコンサルタントよりブランディングとはなんぞやということを学び始めました。約1年じっくり勉強をして出した答えが、これは本腰入れてブランディングをしなければダメだ、ということでした。それで紹介していただいたのがエイトブランディングデザインの西澤さんでした。
ーーデザインやネーミングのお話がありましたが、どんな部分でリブランディングしなければならないという問題意識をお持ちになったのでしょうか。
今村:独自性をもった業界初の製品を次々とつくりシェアも広げ、業績とともに業界内では知名度を上げてきていました。ところが、地域では全然知られていない、知名度がないのでリクルートでも苦労をする。それで業界内で少し知られているということも大事ですが、まずは地域での認知度を高めていかなければならないという問題意識をもっていました。
ーー実際にリブランディングをしてみてどうでしたか?
今村:これは目に見えて効果がありました。ブランディングをしたことで知名度の向上、リクルート面でも貢献しています。この二つをみただけでもリブランディングしてよかったと思っています。
ーーブランディングは採用にも効果があり認知度アップにも繋がったのですね。
今村:はい。それは名刺交換すると圧倒的に分かります。以前は何をされているんですかと聞かれていましたが、それが今では新聞やテレビでみたという言葉をいただくことが多くなりました。
ーーそれでは、お二人の出会いの話をお聞きしたいのですが、最初に顔合わせしたときはどんな印象を持たれましたか?
西澤:初めてお会いした頃は、まだ僕たちのオフィスが浅草橋にある時でしたよね。
今村:そうでした。その時に西澤さんに言われたのが、コンセプトを明確にするにあたり、時間がかかるということでした。
西澤:それでまずは半年ほど時間をかけて社内のヒアリングをしたんですよね。
ーー最初からデザインしまっせ、という感じではなかったのですね。
今村:はい。最初は少し肩透かしのような思いもありましたが、結果的にそれがよかった。私は私なりに西澤さんにお会いする前から「有機農業へ貢献する会社」というアイデアがあったものですから、最初は言葉をつくるだけなのにこんなに悩んで時間をかける必要があるのかと内心思っていました(笑)。私たちが目指していたのは、安心安全な食べ物を求める消費者とそれを生産する農家の方々を支援していくことでした。農業機械メーカーでそれを謳っているところはありませんし、それを実践しているところもありません。世の中には、農薬、化学肥料、いわゆる慣行農法に対応した農業機械ばかりで、私どもは有機栽培の手作業の部分を機械に置き換えようということをしています。
それで言葉の部分はさっさと決めて、次のところへ行こうと思っていたのですが、西澤さんは、もうちょっと考えましょうと言い続けていました。
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執筆・編集
Photo:Takuroh Toyama
加藤孝司 Takashi Kato
デザインジャーナリスト/ フォトグラファー
1965年東京生まれ。デザイン、ライフスタイル、アートなどを横断的に探求、執筆。2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。http://form-design.jugem.jp
撮影
トヤマタクロウ
1988年生まれ。写真集や個展での作品発表を中心に、クライアントワークにおいても幅広く活動。http://takurohtoyama.tumblr.com
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