Chapter-7 ヒロマサさんの想い出「僕のメンター、人生のガイドです」
今回、8番館とおかあさんのすてきな思い出を共有してくださるのは、ヒロマサさん。
毎週末のように通う常連さんだったヒロマサさんは、閉店後もおかあさんと交流を続けていらっしゃるそうです。
有名店だった8番館に、遅めのデビュー。
僕が8番に通うようになったのは、2001年だったと思います。老舗の有名店ということは知っていましたが、デブ専で太めの人が行くお店という噂があったので、体の大きくない自分は、それまで遠慮していたんです。
でも、20年以上の友人が連れて行ってくれたのをきっかけに、毎週末のようにみんなで通うようになりました。
扉を開けると、おかあさんがあの仕草で「あらーいらっしゃーい」と迎えてくれたのを今も覚えています。
太っていないと優しくされないんじゃないかと思っていたので、ニコニコ顔のおかあさんの優しい雰囲気と、あのオネエトークに良い意味で拍子抜けしました。
僕はすぐにおかあさんとスタッフのウメ子さんのファンになりました。
今は火事でなくなってしまった、ひょうたん池の横のお店には、思い出がたくさんあります。
ウメ子さんが辞められた後、僕の仲間たちがお店のスタッフになったんですが、おかあさんは本当に厳しいことも言わないし、働きやすかったそうです。
おかあさんは、スタッフが心配するほど欲がなく、お酒もいただかず、パーティもしないスタンスだったみたいですね。
ポジティブになれる言葉をくれる人。
自分もおかあさんに「周年パーティとか誕生日パーティとか、しないんですか?」って直接聞いたことがありますが、「わたしはみんなに助けられ、今も助けられているのよ。
ここに通ってくれる人の重荷になるようなことはしたくないわ」と言っていました。
「パーティをすれば人は来るけど、そのぶん離れる人もいるのよ。
それよりこの店が何周年か覚えてないわ! 年の数は忘れたいわっ!」ですって(笑)
自分はそんなおかあさんの人柄に惹かれて、たくさん話をするようになりました。
前年にカナダから帰国し、とても情緒不安定な時期だったので、親の病気の話、自分の進路や恋の話なんかもしました。
おかあさんも、ご自分の経験からいろんな話をしてくれました。
長く付き合っている恋人のコウちゃんのことや、8番館の歴史。悲しい話も多かったけれど、不思議といつも、ポジティブになれるコメントをくれるんです。
適当なのも多かったですが(笑)
おかあさんは自分にとって、大事な人です。
メンターであり、人生のガイド。とにかく人に優しく、人からも愛される人。
おかあさんらしいラストナイト、そして今。
8番館最後の営業の日。
いよいよお店を閉めるという涙の時間、おかあさんが僕に「そろそろお店閉めたいから、あなた『閉めます』って言いなさい!」言ってきたんですよ(笑)
「大事な最後の瞬間に、そんなのダメですよ!」と僕がお母さんを説得して、ちゃんとみんなの前で挨拶してもらったんです。
「長い間、本当にありがとうございました」と、照れくさそうに言ってくれました。
最後まで、おかあさんらしかったなあと思い出されます。
お店を閉めた後は、外まで出て見送ってくれて、あの時はワーッと涙が出ました。
おかあさんがお店を閉めてから半年後くらいに、アクロス福岡でのThe Stag Party Showの舞台『夜汽車に乗って』におかあさんを招待したことがありました。
自分が演技と演奏で出演することになったので、小説やお芝居、映画が大好きで、僕にもおすすめの作品をよく紹介してくれていたおかあさんに観てほしくて。
おかあさんが観客席に座ると、周りのお客さんがその存在に気づいて、次々に挨拶している姿が見えました。
ちょっと前までは毎週会えていたのに、やっぱり寂しいなあと思いながら本番を迎えたのですが、芝居も演奏も下手くそで、自分に嫌気がさしました。
本番後、おかあさんから電話が。
「ヒロマサちゃん、ちゃんとしなさい!(笑)でも楽しかったわ! また頑張んなさい!」っと言ってすぐ切られましたけど、不思議とポジティブな気持ちになれました。
おかあさんとは、少し前までメールでやりとりしていましたが、恋人のコウちゃんから「メールは見づらいから電話が良いよ」と教えてもらって、今は電話だけの連絡です。
なかなかコロナ禍でお見舞いにも行けませんが、落ち着いたら会いに行こうと思っています。
冒頭から出てきましたね、あの仕草! “おかあさんのマジックハンド”!!
本当に、名物だったのですね。想像するだけで顔がほころんでしまいます。
立て続けに力作を送ってくださった元常連さんお二方のおかげで、おかあさんの佇まいや声が目の前に立ち上がってくるようです。
おかあさんをご存じない方の中でも、おかあさんの存在感がどんどんリアリティを増しているのではないでしょうか。
おかあさんエピソード、まだまだ募集中です。小さな思い出でも構いませんので、どうかお聞かせください。
こちらからインタビューに伺うことも可能です。お待ちしております。
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