鵼の碑
読んだ〜〜17年ぶりって何?
「この世には不思議なことなど何もない」というのは百鬼夜行シリーズの一貫したテーマですが、今作は今までの作品とはこの「不思議なことなど何もない」の意味合いが全然違うというか。
前作までは「いやそんなわけあるかよ」という事象を「うるせえ、あるもんはある」と狂気的な文字数でブン殴ってくるような感じだったと思うんですね。それが気持ちいいのですが。
「本当にこの件、いる?」という登場人物個々の「自分は自分とか他人のこういう部分にこういう気持ちを持ってるんだよね」を何十ページもかけて読み、さらに数百ページかけて京極堂の蘊蓄や持論を辛抱強く読むことで「そんなこともある、この世には不思議なことなど何もない」までちゃんと行ける。圧倒的文章量のパワープレイ。
ところがどっこい、今作では今までの流れを盤ごとひっくり返して「ホラね、不思議なことなんて何もなかったでしょ」をやってきた。
拍子抜けした読者も多かったと思うけど、
私はすごくすっきりしました。
関口たちにまだこびりついていた塗仏の呪いを
やっと本当に解いてくれたという感じがしました。
上手く言えないけど、関口も木場もみんなそれまでの異常な事件に毒されすぎてしまって「いやだってこういうこと前にあったし」という感じで素っ頓狂な、まあ「推理」をしてたじゃないですか。
これって本来はすごく良くないことですよね。
という感じで良い続編だったと思いました。
ところで京極堂は相変わらず関口に当たりが強いですよねえ笑
関口は此岸と彼岸の境目に立ち、そしてナチュラルに妖怪を視ることができる、彼の中には大半の人が失った妖怪のシステムがまだ生きているから京極堂は彼のことが羨ましくてつい意地悪しちゃうんでしょうね。