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キャンセルされたノイズの逆襲

 数年前からイヤホンやヘッドホンは有線から無線に切り替えた。ゴチャゴチャとしたコードに煩わされることもなく、また、端末のある場所から別の部屋へ移ってもそのまま音楽が聴けるのは本当に便利だ。

 そして極め付けはノイズキャンセリング機能。周囲の雑音を軽減だなんて、そんなこと出来るのかと最初は疑ったが、それが出来てしまう。
 試しにノイズキャンセルをオフにしてみると、昔はこんな雑音の中で音楽を聞いていたものかと驚愕する。近頃の製品はすごいと購入当初は感心したものだ。

 ちなみに今使っているのイヤホンはBOSE製(ヘッドホンはSONY製)。特にノイズキャンセル機能には定評のあるメーカーだ。決して安い買い物では無かったが、それ相応の性能であるのは間違いない。

 良い物だからとにかく使った。音楽を聞く時も動画を見る時も。逆に何もかけずにノイズキャンセリングだけ使っている時もあった。
 ところが、この文明の機器を堪能しているうちにある事に気付いてしまう。

以前より物音に対して過敏になった気がする。

 実感したのは仕事中だった。他の人のマウスやキーボードの操作音がなんだか気になってしまう・・・・・・いや、気になるどころではない。むしろ不快に感じてしまうようになった。
 特に苦手になってしまったのはマウスのホイールを回す音だ。ゆっくり回すのではなく、高速でガリガリと回す音が耳に入るともう気が狂いそうになる。僕にとっては非常に気色悪い感触だ。その音を聞いた途端に、とにかくその場から走って逃げ出したくなる。

 最初は耳栓を用いたが、容易に音が貫通してくるので無駄だった。そのため、今の僕はイヤホンを着けて仕事をしている(一応上司は了解済み)。
 
 どうしてこんな事に?と、僕は考えた。以前と何か変わったことを思い返すと、イヤホンやヘッドホンに行き着いたわけだ。ノイズキャンセリングが作り出す静かな空間に慣れすぎてしまったのだろうというのが僕の見解。何せ自宅では起きている時間は大体着けているほどだ。そりゃどこかおかしくもなる。
 結局のところ、苦手になってしまった音に関してはどうにかやり過ごして行く他ない。きっと治るものでもないだろう。誰にも理解されないのはよく分かっている。こんな苦悩、分かち合えるもんでもないし。

 ただ誤解しないでいただきたいのは、悪いのはノイズキャンセリング機能が付いたイヤホンやヘッドホンではない。これは勝手に音を愉しみ、勝手に音に苛まれている僕自身の問題。そこには念を押しておく。BOSEもSONYもようやっとるよ。


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