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目を凝らしてもコリは見えない。ただ、確かにある。

私は鍼灸師です。
ですが、超能力はありません。
鍼を使って痛みやシビレの原因になる
コリを取り除く技能を持っているだけです。

コリは皮膚の下にあって、
目に見えません。

それなのに、どうやってコリを見つけるか?というと、超能力や「気」のパワーで見つけているわけではなく、

1)患者さんの主張を聞く
2)経験的・解剖学的にコリがありそうなところを鍼先で探る。

この二つの手段に頼っています。
コリは見えないので、患者さんの感覚は、一番頼りにしています


コリを見抜く

もし、どこかの鍼灸師が、「あと5回で治ります」といったとしても、そんな言葉は信じないでください。

なぜなら、コリの層がどれくらい広く、深く広がっているかなんて、分かるはずがないからです。

確かに私たちは、鍼先でコリを探しだすことに長けていますが、分かるのは鍼先だけで、そこから、たった5ミリ離れた先がどうなっているか、見通す力はないのです。

それができるのは、超能力者だけです。


コリは成長する

コリは、痛み止めなどで胡麻化したり、長い間我慢していたりすると、根を深く、広く広がります。つまり、コリは成長するのです。

大人になると、時間の流れはあっという間。社会人は、常に仕事や家事に追われて、自分のことにかまける余裕がありません。ついつい、痛さ辛さを我慢してしまいます。

「実はここに来るまで、しばらく我慢していました」という患者さんのお話をよくよく聞けば、その「しばらく」とは10年どころか、20年を超えていることさえ良くあります。

その10年、20年で、たいていコリは、骨まで値をおろしてしまっています。


痛みのタイプとコリの根深さ

骨をコリがむしばんでいくと、「シンシン」としみ込むような痛みになっていきます。

ケガなどで痛めた瞬間は、ドクンドクンと拍動するような痛さだったとしても、しばらくして気づくと「ズーン」という重い痛みに変わり、また年数がたつと、今度は「しみ込むような」痛さ。つまり「神経痛」と呼ばれるような痛さに変わります。

また、痛みの場所も、「痛いのはここ」と言えず、「この辺り…全体に」と、痛みがボヤっと広がっている状態は、コリが「広く」根を張った証拠なのです。


治療の回数を見抜けるはずがない

ご本人にもどこが悪いと言えないほど、広範囲に広がったコリを、果たして、数回の治療で摂れるでしょうか? はなはだ疑問です。

ただ、その場合でも、鍼灸師が、悪意で騙そうとしているとは、思わないでください。

ゴールの見えないマラソンを、普通の人は走り出せません。
ですから、とりあえずの目標を提示することが必要だと、鍼灸師が考えているということなのです。

ただ、私は、同じ目的でも、そのようには言いません。
「あなたに当院の治療法が合うか、たった一回の治療では分からないと思いますので、4回試してみてください。それであなたが合うと思ったら、治療を続けてください」

これは、私の師匠から、教えられた言葉です。

…しかし、残念なことに、治療の本質は、先の見えない挑戦です。そこが分かっていないと、後々患者さんは苦しむことになってしまいます。

だから、嘘はいけない…と思うのです。


コリの大きさ、根の深さは病の年数で推理する

コリは目に見えず、どれくらい広範囲に広がっているか、施術前には想像もつきません。ただ、患者さんの「何年患っています」という情報から、「広いだろうな」「深いだろうな」という想像をするに過ぎないのです。

ここでも、患者さんから教えていただくことが、最大の情報源。患者さんご本人ほど、ご自身の体や痛みについて詳しい人はいません。

ですから、治療は、患者さんがリーダーで、私たち鍼灸師は助手なのです。


もし、治療しなかったら

あなたが耐え続けている、その痛さ、辛さを、そのまま来年、再来年まで放っておいたら、どうなるでしょうか?想像できますか?コリはさらに、深く根を広げるのです。

つまり、コリは、ただのコリではなくなります。慢性的な痛みは、癒着を生み、最悪、内臓まで蝕みます。

私が、自分の経験をもとにイメージするに、その痛みは、何十年でもずっと居座り続けます。自然治癒とはどこの世界の話かと思うほど、私たちを辛く苛み続けると思います。



コリの根を断つのは本当に大変です。
鍼灸治療、なんてったって痛いです。
外科的治療だし、麻酔はないし。

でも、「あ、確かに今、コリの根が一本切り落とされた!」と感じる瞬間、「努力は報われる」と感じられますし、自分を頑張った分だけ、好きになれます。

「そこです!そこを治療してほしかったんです!」

鍼灸治療でなければ、このコリの根っこはとれなかった。

放っておいたら、これ以上悪くなっていた。

間違いなくそう確信しているから、私は痛くても辛くても、自分自身が鍼灸治療を受けるし、自分がやっている仕事に誇りをもってできるのです。

https://www.89nagomi.jp/post/howfind


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