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5歳までの子育て
30余年、保母さんをしてきて、毎月のように児童心理学者や、小児科医さんを交えて、幼児教育を学んでこられた方の話。
子育ては、5歳までが勝負。
お子さんが、幼稚園で、先生に呼ばれても整列できないでいた。
何度先生に言われても、言うことをきかず、一人遊びを続けたことから、先生に厳しくいわれたという若いお母さん。
凹んだお母さんは、伯母さんに相談した。
で、くだんの保母さんが出てくる。
「あかんで」と。
5歳までに、大人に言われたことを聞けないというのは、とても問題のある事、らしい。
わたしは、オオカミのお母さんのことを思い出した。
オオカミは家族愛の強い生き物として知られている。
オオカミのお母さんが本気で怒って、子どもを噛むときがある。
自然界は厳しい。
外に出て、母オオカミに言われた通り動けなかったら、子オオカミは簡単に死んでしまう。
「危ないで!」「座りなさい!」「並びなさい!」と大人が叫んでも、聞けない子と、お母さんオオカミの言うことを聞かず、勝手に巣穴から這い出す子オオカミは一緒だ。
この世には、本当に危険なもの、害のあるものがあることが分からない、知らないということは、本当に怖いことだ。
大人の言うことが聞けない5歳児は、大人を舐めているだけでなく、危険を舐めているし、自分の手におえないものがあることを、分かっていないのだろう。
さらに、その保母さんが言うには、
「小学校でいじめられて学校行かないとか、仕事が合わなくて会社を辞めるとか、そういうことはなんでもないこと。
ほんまの問題は、善悪の区別がつかないこと。
5歳までに善悪の区別がつかないと、ほんまの大事になったとき、
人生を5歳からもう一度、やりなおさなきゃいけないようなことになるよ」と。
大人が本気で叱るとき、
危険というもの、
物事の善悪というものが、
身に付くのが、5歳頃なのだろう。
これがビシッと身についている子は、いじめられたとき、「なんでそんなことするん!」と言える子になる、と。
そうじゃない子は、「悪い子にそそのかされたとき、抵抗力なく染まる」と。
要は、ずるさや、弱さ、人のせいにすること、責任から逃げることを身につけてしまうのだろう。
子どもが5歳くらいで、善悪の区別ができなくなる要因はもう一つあって、
親の態度が、TPO・・・状況とか、相対している対象とか、気分とかで、コロコロ変わる場合。
こういう場合も、子どもの価値観は混乱させられ、
結果、善悪の基準が、ぐらぐらになってしまうのだそうだ。
私は、この話、すごく良く分かった。
善悪の基準がグラグラな人、大人でも結構いる。
そういう人を、年齢だけで「おとな」だと思って相手にすることは、危険でしかない。
見た目は大人、中身は子ども。
何をするか読めない、危険な動物とあまり大差がない人が案外いる。
「こういう場合は、こう」
「それは絶対あかんやろ」
というところが違う人は、ズルく、うまく生きているようで、生きるのが下手くそな人だ。
どこかで人生が行き詰まるというのも、よくわかる話だと思った。