【人間全体を診る】
春夏秋冬を通して、
人の身体を診ていくと、
春より夏の今、
コリが柔らかくなっていることに気づく。
春から夏の間の雨の時期や
夏から秋の間の雨季にも
雨が降った翌日
気温が上がり、温かくなると
やはりコリが柔らかくなっていることに気づく。
「あ、今日はラッキーデイみたいですよ」
というと、患者さんは、
「ああ、今日はコリが柔らかくて、とれやすいんだな」
とわかってくれるまでになった。
最近の人の後頭部には、
スマホ首というのか、
骨棘なのか(骨が延長したような塊)
ができてることが多くて、
解剖学的にデリケートな部位だけに、
慎重な施術が必要なのだけど、
骨と見まがうほど硬いコリがあるので、
ラッキーデイを狙って治療している。
(冬時期にとろうと頑張りすぎると
危険な部位なのでお勧めしない)
最近暑いので、コリが全体に柔らかく
骨棘のような硬すぎるコリでも
案外ほろっと取れてしまう。
異様に硬いコリがついているのは、
後頭部だけではない。
とくに危険部位ほど、夏のうちにとりたい。
そんなことが分かるようになったのは、
当院にメンテナンス会員という仕組みがあって、
一年、二年と通年通して、二週に一度
通ってきてくださっている
患者さんが何人もいるからで、
患者さんのお身体を通して、
学ばせていただいたおかげだ。
一年通して、一人の方のお身体を
詳細に拝見できる仕事は
鍼灸師をおいて、他にはない
と思う。
少なくとも、鍼を通じて、からだの中まで
拝見?させていただけるのは、
鍼灸師以外では、お医者さんしかいない。
しかし、外科医だって、鍼灸師ほど
くまなく、体中、鍼を刺す経験は
積んでいないだろうと思う。
私は、鍼は治療器具と同時に、
探査器具だとも思っている。
プローブだ。
筋肉や骨、腱を探って、異常を探す
道具でもあると思っている。
ずいぶん色んな発見があった。
それまた、体のどこか一部位、一か所だけ
治療していたのでは見えてこない。
全身をくまなく、メンテナンスしているから
気づけたことだ。
驚くほどに、人の身体は多様で、そして同じだ。
鍼灸学校に通っていた間も
勉強していたつもりだったが、
一人の人のお身体を、一年通して
それも全身、診るような、そんな
本物の勉強は
当時、思いつきもしなかった。
全身診る、全身どこでも刺す
みやこ式標準治療という技法は
私の発案ではない。
師匠の治療法の踏襲だ。
知識で学んだつもり、
知ってるつもりになることはできるが、
実際に全身に鍼をしてみないと
わからないことがある。
一年目でも気づかないことがある。
二年、三年たって、やっとわかるようになる。
どこか体の一部だけ見ていたら
気づかないことがある。
全身に鍼を刺してみて
はじめて見えてくることがある。
「これは季節要因」
「これは最近食べたものの影響」
「この反応は砂糖」
「痩せているけど、痩せてるのは見た目だけ」
全身診なくてはならないし、
通年で診なくてはならない。
身体の内部を鍼で丁寧に探っていかないと
見えてこない。
知識ではない、手で覚える。
「これは変だ」
「これは骨みたいに硬いけど骨ではない」
「ここには石灰化があるはず」
「カスッカスの段ボール」
「これはほぐせば消える」
「まだまだあふれてくる」
「こっちは時間がかかるが治る」
ありがとう。
なんかわからんけど、ありがとう。
生きていることのすばらしさを
生きている人の身体と接することで
強く強く、感じています。
ありがとう。