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再び縄文杉について|1998|YNAC通信6・7合併号巻頭言

概ねYNAC通信に乗せたままですが、わかりにくいところなど、すこし言葉を足したりして修正しています。

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創立以来、YNAC(屋久島野外活動総合センター)は縄文杉には背を向けて活動してきた。

過剰利用が問題になる場所でエコツアーというのはいかがなものか、コースが長すぎて自然を楽しむ余裕が無い、伐採跡が多いし線路歩きは不快だ、という建前で、日帰り縄文杉ツアーのガイドは基本的に販売しなかったのだ。

よく縄文杉を単に否定しているように誤解されることがあるのだが、そうではない。正直言って、まだ縄文杉縄文杉言ってるの? という感じだ。あるいは言い方が悪いけれども、マスコミなどが流し続ける縄文杉のイメージに洗脳されてしまった大勢の信者をなんとか救出したいという、よけいなおせっかい的発想もあった。屋久島にはほかに面白い素晴らしいところがいくらでもあるのに。

一方、内部の方針として、あえて縄文杉をはずしてやってみる、という実験的な戦略があった。縄文杉がシンポルとして威力があるほど、それは旧来の観光というチャンネル(これには企業も官公庁も、島民さえも含まれると思う)に巨大な広告塔として取り込まれ、イメージとして消費され、そこから開放されることは難しくなる。そこに係わっていると、縄文杉の影響下から逃れられなくなる。

逆に、縄文杉をはずした形で自然ガイド業を成立させることができれば、従来とは質の違う経営碁盤を確保したことになり、縄文杉がどっちに転んでも影響は受けずにすむ。

 とまあ、少々突っ張りながら、岩の上にも四年。いろいろな可能性が現実のものになり、この仕事の方向はこれでいいんだ、という確信はおおむねゆるぎないものとなった。縄文杉が有ろうと無かろうと屋久島の自然の魅力にはほとんど影響はない。新たな展開として、ボルネオや台湾など、定点としての屋久島から発想された海外のエコツアーも生まれはじめている。

 ところで、ここに来て島内でもいろいろ変化がおきている。

 優秀な同業者が少しずつ増えていることが何より心強い。しかし一方ではガイドがらみの不祥事やらトラプルやらの話もないではない。日本では、ガイドという仕事には「資格」が存在しない。したがってよくいえば実力勝負だが、看板を揚げれば誰でもガイド、ということでもある。少なくとも島内のガイド業者の連絡会議のようなものが必要だ、という話になるだろう。

 また、縄文杉にもっと手軽に登れる登山道を新設したいという計画が再び持ち上がっている.人気に飛びつくアイディアがいいとは思えないが、もし計画が動き出すようなことがあれば、これは屋久島の登山利用構造もガイド登山の状況も一変させてしまう可能性があるし、われわれとしても傍観しているわけにはいかなくなる。

ガイド業者のほとんどが、縄文杉を中心に動く現在、「老舗」のYNACも、なんらかのかたちで縄文杉や屋久島のガイド業界全体に再び係わらなくてはならない時が遠からず来るということだろうか。

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