【エッセイ】荷物運ぶだけで高収入!?①
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この国には希望がない
1995年、私が社会に出ようとした年度の就活戦線の異常さは、就職氷河期世代の中でも最大瞬間風速直下で極寒だった。
学生の当時私は教職課程にすすみ教育実習も無事修了し、ある自治体の教員採用試験に臨んだ。
結果はもちろん不合格だ。
もちろんというのは、ほとんどの受験者を落とすための試験だったからだ。
流れ作業の面接も虚しくすべてがアホらしかった。
あの氷河期の最強寒波が一体どれだけ若者たちの希望を奪い続けたのか。
とても筆舌には尽くし難く、ここに形容しきれるものではない。
人の尊厳を脅かすほど残酷だった就職氷河期の史実は、あれから数十年経った今でも度々メディアに取り沙汰されている通りだ。
この世代の多くが人生のレールに乗れず時代に置き去りにされた事と、日本の国難ともいわれる人口減少問題による国力の低下は決して無関係ではないだろう。
そして私は、若くしてこの国には希望がないのだという現実を思い知った。だが皮肉にもその事が私を奮い立たせ真剣に人生に向き合う覚悟を決めさせたのである。
―ここで今この逆風に抗っていても無駄だ。
―自分の事を知りもしない採用担当者の面接の合否に人生の進路を委ねてたまるか。
―希望はない、でも腐っている暇はない。
―自ら考え行動するしか道はない。
考え方を完全に切り替えた私は、もう徒労に終わる不毛な就活は一切しなかった。この希望のない国では足掻いていても無駄なのだ。
無理ゲームからのドロップアウトだ。
闇バイトの話ではありません
教採面接不合格以降、私が履歴書を出したのはただ一社だけだった。
面接と採用試験を経て、その会社にあっけなく正社員採用された。
初任給45万円。
その会社とは、飛脚マークでお馴染みの運送会社である。
私は社会人一年目でストライプシャツのセールスドライバーになる事を選んだ。
稼げる事は稼げるが無事では済まない。
キングオブザブラック企業。
挑戦するなら来る者を拒まないが過労で倒れる者も珍しくない、と揶揄されるほど過酷な仕事であることは当時、衆目の一致するところとなっていた。
ー父さん、母さん、ごめんなさい。私の人生はついにこの選択をするところまで来てしまいました。
私の心はまるで悪魔と契約して死地に赴く気分だったかもしれない。
私がこの極端な選択をした理由のひとつは国外脱出資金を短期で作る為だった。
その目的の為に地獄の苦しみに耐える道に進んだのだ。などと悲劇の選択に酔いしれていたが、その時はまだ本当に何もわかっていなかった。
だが心の中では熱く燃えていた。
―絶対に逃げ出さずやってやる。
―こんな国でこのまま埋もれてたまるか。
―就活で負けてもロングゲームでは勝つ。
―下を向くなロスジェネ世代、今こそ自分で考え行動する時だ。
―俺たちはやれる。
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