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【エッセイ】札幌からニセコへ移住するまでの話

#エッセイ #ニセコ #ビーグル #ラブラドールレトリバー #大型自動二輪  

旅人が犬を飼っちゃうとこうなる

2001年夏。
勢いで北海道に来てから1年が過ぎた。↓


私と彼女の札幌での生活に訪れた変化で特筆すべきは犬を二頭飼い始めた点である。

大自然の中で自分の犬を飼うことは私の悲願の一つでもあった。
これでニセコに住みたい気持ちにますます拍車がかかる。

一頭目はビーグル犬のメスで漫画スヌーピーのモデルとなった犬だ。
とにかく食欲が凄まじく旺盛で、こぼした牛乳を拭いた雑巾にかじりつくほどだった。

もう一頭遅れてやってきたのがラブラドール・レトリバーのメスだ。
こちらは盲導犬や介助犬でも活躍する賢い犬種のはずなのだが先住犬のビーグルの悪影響を受けビーグル犬の巨大版の様に食欲が旺盛になってしまった。

本当は黒いラブラドールが来るはずだったのだが縁あってイエローのラブラドールが我が家にやってきた。

北海道の冷涼な気候でのびのびと犬を飼ってみたい、という願望を後先考えず叶えてしまった私たちの気ままな長旅は事実上これで終わった。

犬を飼ってしまったら人に預けて気軽に『海外に行ってきまーす』とはならない。

だがこれでこの大地に住む覚悟と運命が決まったのだ。

この愛犬たちのおかげで私たちの運命が決まった。感謝。


彼女を自分のバイク趣味に巻き込んでみた

もう一点、生活の変化を挙げるなら彼女を私の趣味に巻き込んでバイクの大型二輪免許を取得してもらったことだ。

彼女も高校時代から原付には乗っていたようだったのでバイクの心得はあったのだが広い北海道で原付では少し物足りない。

二人で爽快に北海道をツーリングすべく私がうまいこと言いくるめて大型二輪免許を取ってもらったのだ。

私が乗っていたホンダのバイクを彼女に譲り、私は新たに目当てのカワサキのリッターバイクをゲットした。

4本マフラーがカッコいい


カワサキが80年代を通じて取り組んだ最速旗艦モデル。なんと270km/h出たらしい



北海道の夏のバイクツーリングは最高だ。

人生でやりたいことリストの上位にランクインするバイク乗りも多いと思う。
本州ライダーにとってはツーリングの聖地ともいえる。
気持ちが良すぎてついついスピードが出てしまうこともある。

真っ直ぐな道を走る気持ち良さはプライスレス


だが鹿やキツネなどの動物の飛び出しリスクは本州より高く、クラッシュしたらダメージも相当大きい。

私も彼女もハイスクールライダー時代の教訓を生かし安全運転を心掛けた。おかげで事故とは縁がなかったことは幸運だった。


バイク小僧時代の教訓 ↓


もう俺、早くニセコに住みたい


季節は巡り札幌へ来て二度目の冬を迎えていた。
私の中でいよいよニセコライフのことが頭をよぎる。

札幌での生活も便利で楽しいがアパートでの犬との生活や街での車や人の多さに窮屈さを感じていた。

雪山や大自然エリアまでの物理的な距離も寂しく感じていたし、カナダで味わったようなライフスタイルが恋しくなっていた。
都市生活に私の心が萎えてきていたのをはっきりと感じていた。

ある日、「俺もう、早くニセコに行きたい」と私は彼女に気持ちを打ち明けた。

すると彼女は「それは分かるけど向こうで住む所とか仕事はどうするの」と現実的なことを言ってきた。

「そういうのは行ってからでも何とかなるでしょ。もう札幌は俺には都会過ぎて合わないのよ。ほら俺、大型とか大特の免許もあるし選ばなければ仕事なんてあると思うんだよね」
私はどこでも働けるように大型自動車と大型特殊の免許も取得していた。

「でももうウチには犬もいるし、行ってみてダメでした、じゃどうにもならないよ。もう少し慎重に調べるとか計画が必要じゃない?」
そう彼女に言われても、私はもう勢いで行動したい気持ちが膨らんでいた。

「じゃあ、俺が先にニセコに前乗りして情報収集とか現地調査しておこうか。とりあえず住む家が決まれば安心でしょ」と私は必死にくらいついた。

「は? 自分だけ先に行くってそれずるくない?私と犬は札幌に置き去りなの?何それ」と彼女の機嫌が悪くなるのが分かった。

あ、こりゃいかん、と私は軟着陸できる地点を探った。

「わかった、とりあえず休みを合わせて二人で足繁く通おう。来週末さっそく犬連れて行ってみようよ。今日はラーメンでも食べに行こうか。俺が奢るよ。なんちゃって、テヘッ」と私は必死に方向転換に努めた。

ここで言い争いしていては明るい未来がますます遠ざかる気がした。
空気を察した犬たちも微妙な表情でこちらを見ていた。
不毛な喧嘩は犬も食わないのだ。


とはいえこれからどうプランを進めるか。
その夜、ラーメン屋さんで餃子を食べながらも私の頭の中はモヤモヤしたままだった。


ー 独り身ならもっと自由に動けたんだろうけどなあ。もう犬もいるしなぁ

ー ニセコでの住む場所と仕事か。さてどう探したもんかなあ。



グビッと煽るように飲んだサッポロクラシックビールの味がいつもより何だかほろ苦く感じたことは言うまでもない。



ニセコライフへの思いがますます募る2002年の晩冬だった。

都市部より 雪山恋し 世捨て人

いよいよニセコで家と仕事を探す話へ ↓


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