【エッセイ】生きている意味@カナダバンフ
#エッセイ #カナダ #バンフ #サンシャインビレッジ #ゴーツアイ #デリリウムダイブ #スノーボード #♯バックカントリー #生きる意味 #引き返す勇気
生きている実感
2000年2月。
私と彼女はカナダバンフでの滑りまくる暮らしを満喫していた。
私たちの人生におけるハイライトの時期だ。 ↓
日本で蓄えた渡航滞在資金という名の燃料だけを糧に、消費と燃焼するだけのバンフでの日々にはストレスも不安もなかった。
若くて健康で働くストレスもなく毎日自由に好きなことをして過ごす。
あのバンフでの寒さの中で自分の体温を感じる。
そこには確かに生きている実感があった。
まさに素晴らしきかな人生、だ。
これを実現するために費やした地獄の運送業の日々も振り返れば愛おしい↓
デリリウムダイブ@ゴーツアイで幻覚と興奮を味わう
私たちはこの時期にバックカントリーエリアを滑るための装備も揃えた。
バックカントリーとはスキー場以外の整備されていないエリアのことである。
未整備エリアを滑るときの心得や知識などはウィスラー滞在の時にプロライダーたちからレクチャーを受けていた。
彼らが言っていたリスクマネジメントが思い出される。
「いいかブラザー、BC(バックカントリー)を滑るときに一番重要なことは雪崩の危険性が高い日には行かないことだ。それに尽きる」
彼は一緒に滑っていた仲間を雪崩で失ったことがあったそうだ。
『危ない時には決して危ない所へは行くな』ということを何度も言っていた。
そして積雪の安定状態を見るピットチェックのやり方や素早く埋没者を掘り出すコツなどを念入りに教えてくれた。
「危ない日は引き返すことを忘れるなブラザー。滑り手の都合に合わせて雪が安定してくれることは絶対にない」と言っていた。
ー 引き返す勇気。
これは人生においてもとても大事なことだと私は思った。一生の教訓だ。
私たちが通っていたスキー場、サンシャインスキービレッジのゴーツアイMtエリア山頂にはリフトを乗り継いで管理区域外にアクセスすることもできた。
その場所の名前こそ『DELIRIUM DIVE(デリリウムダイブ)』、直訳すると『幻覚に飛び込む』となる。
エリア外に出るときは自分の身に着けたビーコンと呼ばれる雪崩用送受信機をゲートのセンサーにかざさないと扉が開かないシステムだった。
そして管理区域外では必ずパートナーと行動しなければならない。
複数人で滑っていれば雪崩発生で埋没者がいた場合にビーコンシグナルを受信して埋没地点を探すことができる(ことになっている)。
だが15分で埋没者を救助できないならば要救助者が身についているビーコンは遺体捜索のためのツールにしかならない。
一緒に滑っている仲間同士でレスキューをするためにはそれなりの知識と経験と運が必要だ。
ビーコンやスコップや捜索用のゾンデ棒は救助のための最低限の装備となるが、やはり重要なのは危険な日にそこに行かないことこそが最も安全な判断ということになる。
私たちは教訓に従い慎重に行動していたので幸運にも雪崩には一度も遭遇することはなかった。
私たちは毎日飽きずに滑っていた。
幻覚ではなく現実を生き、その興奮を生きている意味だと感じていた。
生きるとはただ息をして毎日を眠ったような意識でやり過ごすことではない。
誰かと比べる必要はない。
自ら考え行動し、自分だけのラインを見つけるためにここまで来た。
まだまだ続くと信じていたバンフでの暮らしにもやがて終わりが近づいていた。
いよいよ帰国の途へ ↓