フリマアプリの登場により脅かされる買取店の存在意義
そもそも買取店とは
買取店とは、中古品(新古品を含む)を現金等で買取するサービスを提供する店です。
みなさん、買取店を利用したことはあるでしょうか。
身近なモノですと本や洋服がありますね。駅近に店舗を構えているチェーン店もあるので、一度くらいは行ったことがあるのではないかと思います。
しかし近年、ヤフオクやメルカリの台頭により個人間売買が活発になり、買取店の存在意義が問われています。
私自身、買取店・ヤフオク・メルカリ どれも利用したことがあります。
そして、実は美術品専門の買取店で査定士として働いています。本や服に比べるとニッチな商材ですが、モノの流れはほぼ同じです。
今回は仕事で買取を行っている立場から、リサイクル業界における買取店の立ち位置や現状・将来などを書いてみたいと思います。
フリマアプリの登場でリサイクルはより活発に
近年急速に活発化した個人間売買。
スマートフォンに「メルカリ」や「ラクマ」といったフリマアプリを入れている方も多いでしょう。
フリマアプリの登場によりC to C(個人間)の売買が容易になりました。その結果、価値があるものは当然ですが、普段は捨ててしまうようなものでも気楽に売買できるようになりました。
テレビコマーシャルでも見かけることが多いためでしょうか、普段インターネットをあまり使わない方にも利用者が多いようです。元々自身が使っていたものの売却や中古品購入に抵抗があった方も、この流行に乗ってチャレンジし、抵抗が無くなったのではないでしょうか。
個人間取引が盛んになったことで、買取店へ行かなくなった方も多いでしょう。リサイクルが盛んになることは環境にとって非常に良い事ですが、商売として取り組んでいる私のような立場からすると、考えるべき点が沢山あります。
具体的な市場規模や業界の動向は?
国内のリユース市場は年々増加しています。
リサイクル通信(2019年5日11日付)によると、2010年は約1兆円でしたが、2017年には倍の約2兆円まで推移しています。
2022年には約3兆円まで成長するであろうという予想も立てられていました。
全体の市場規模を把握したところで、次は内訳が気になるところです。
2017年のデータになりますが、市場規模が約2兆円の内、34.6%がC to Cの個人間取引でした。2012年に日本で初めてフリマアプリ(現在のラクマ)が登場したことを考えると、凄い勢いで業界のシェアを獲得したと考えられます。
また、注目すべきはネット販売の割合が51.3%と過半数を超えている点です。コロナ禍という状況を考慮すると、今年のデータでは益々ネット販売の割合が増えることでしょう。
買取店とフリマアプリのメリット・デメリットを解説
すべてのサービスにはメリットとデメリットが存在します。勿論買取店、フリマアプリも同様です。
プライベートで両サービスを利用し、絵画・美術品の買取店で働いている立場からリアルなメリット・デメリットを紹介します。皆さまの状況に合うリサイクル方法選択にお役立ていただけますと幸いです。
買取店のメリット
・すぐに現金化できる
・売却後のトラブルが無い
・希少性がある高額商材は強み
・梱包などの手間がかからない
・早く片づけたい人には適している
フリマアプリのメリット
・出品してから最短1週間以内で現金化
・買取店よりも高く売れるモノが多数
・自分で価格を決定できる
・相場を調べることができる
・ポイント還元あり
買取店のデメリット
・個人間売買に比べると買取価格が安くなることが多い(人件費などコストが発生しているため)
・基本的には自分で価格を決める事ができない
・業者や担当者により買取価格に差が出る
・取り扱ってもらえないモノもある
フリマアプリのデメリット
・現物を確認できないため、詳細な説明が求められる
・売却後、トラブルになる可能性あり
・梱包や発送が面倒
・サービスを利用すると手数料が発生する
・出品は可能だが、長期間買い手が付かないことも
いかがでしょうか。思いつく限り、メリットとデメリットを挙げてみました。
やっぱり一番気になる点は【価格】だと思います。買取店の立場から見ても、正直、フリマアプリの方が高く売れる可能性は高いです。しかし、価格面でフリマアプリを上回る可能性がある商材も有ります。具体的にはアート・ジュエリー・コレクターアイテムなどニッチで高単価なモノです。
どんな売買方法を選んでも、理解ある買い手がいないと最大限の評価はされません。適切な流通経路で適切なお客様にアプローチすることにより本来の評価で売却できます。
買取店に頼むかどうかのポイントは【責任の所在】
先にも書いた通り、多くの方が売却時に一番気にするのは【価格】だと思いますが、個人的に一番気にすべきは【責任の所在】であると思っています。
責任の所在とは、売買後の事です。
買取店を利用した場合、売れば終了。相手もプロなので後々のトラブルはありません。(ただ、稀に変な業者もいるのでどこで売るかは重要になりますが。。。)
一方、個人間取引は売却後も責任が残ります。トラブルになる事は少ないですが、ちょっとした説明不足や認識の齟齬により、「思っていた品と違うから返品したい」など、面倒なことに巻き込まれる可能性があります。商材が高価なもの 且つ 真贋(本物か偽物か)が重要なモノであればあるほど、それは大きな問題になるでしょう。
私が仕事で行っている美術品の買取は、真贋が非常に重要なポイントとなります。鑑定書などがあればインターネット上の売買でもよっぽど問題ありませんが、そうでない場合、サインが直筆か、ポスター(カラーコピーのようなもの)ではないか・・・など、直接見てみないと安心できない点が多くあります。それについて素人同士、ネット上でコメントでやり取りするのはなかなか困難でしょう。
また、美術品はシミ、絵の具のワレ、など、コンディションのよっても値段が大きく変動します。その辺りもきちんと説明しておかないと、売却後の問題につながるでしょう。
これらのことから、ある程度高価な商材は買取店でプロの目を通して売却することを個人的にはおすすめします。
結論、個人間売買のメリットは非常に大きいが、思い入れの強い高価なものは買取店での売却がおすすめ
色々と書きましたが、やはり一番気になる「価格」の面からフリマアプリなど個人間売買サービスの利用が今後も増え続けるのは間違いないでしょう。
買取店の存在意義は、一般の方が行うには手間となる人間的なサービスを提供することや、商品の情報に責任を持ち商売する事ではないでしょうか。アート作品について言うと、真贋や作品のコンディション判断などは、やはり第三者を挟んだ方が安心ではないでしょうか。高単価になればなるほど商品に対する知識や説明の内容も重要ですね。
AIの開発・発展により人が活躍する場所が減る一方、新たに価値を見出される場所も出てきます。そのような買取店になれるよう、日々精進です。
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