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彼女

真夜中とんでもない音量で電話の着信が鳴って、何事かと目をこすって画面を見ると大体「彼女」からだ。まだ知り合って日が浅いけれど彼女は懐っこい女の子。彼女からかかってくる着信音は、聞いて!きいて!きいて!と鳴り叫ぶ。それを無視をした事はなくて、でもいつだってこっちの都合は御構い無しで一方的で衝動的だから正直ウザい。のだけれど、私は彼女の着信を無視した事はない。

はいはい…

と私が電話に出ると間髪入れず、ねぇ聞いて!ちょっと聞いて!と自分の言いたい事を話し出す。常識がないといったら話は早いけど、私は当たり前のように日々繰り返す「○○さん、取り急ぎお伝えしたい事がありましてお電話させて頂いたのですが、今大丈夫でしょうか?」みたいな対応にハタハタ疲れているからなのか、彼女の態度は私を気楽にさせてくれたりする。

そして彼女が真夜中唐突にかけてくる理由は大概オトコにフラれた話で、恋多き乙女である彼女のそれはむしろ私の中でシリーズ化されている。彼女はいつも躊躇いがちに自分の考えを試すように私に言うかと思えば、もし向かいあって話していたならば 思わず彼女の目を捉えてしまいそうな内容を抑揚もなくサラサラ話したりもするから、私は気付くといつも寝ぼけ眼が冴えてしまう。

彼女はいつも自分を中心にして回る小さな世界で、恋をした男と愛を約束するのだろう。
その蜂蜜漬けの少女漫画みたいな恋に憧れては、現実の恋愛に夢を奪い去られてきたのかも知れない。

私は、彼女が というか女の子という生き物が、どれ程愛を強く求めるかを身を以て知っているつもりだけれど、それを手にできる子というのがどれ程少ないかもよく分かっている(つもり)

大変迷惑極まりない時間にも関わらず、話を聞いていると思いがけずやさしい気持ちが湧くのが不思議でもあるのだけれど、多分それは若い頃の自分に何処か似ている所があって、天真爛漫 自由奔放な彼女が何処か孤独に見えて、強く絶対的な何かに愛されてみたいと心が叫んでいるような気がするからかも知れない。
#エッセイ #コラム #彼女 #魅力的

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