ネジの目覚め
今日も、青い太陽が昇り始め、街に光が差し込む。
昔は鳥がさえずっていたが、今はネジがキュキュとなる。
建物や機械の中にある、さまざまな大きさのネジたちが、「今日も頑張ろう」と言っているかのように、キュキュと鳴り響く。
朝のネジの音が鳴り終わると、街には動くものは何もなく、静まった時に戻る。
・・・
星全体が生物の住めない環境となり、星の住民が選んだ選択肢が「ネジになり、誰かが救いに来るのを待とう」ということだった。
今、かつて星に生息していたものは、すべてネジとなり、建物や機械などの一部となっている。
・・・
毎朝、キュキュと、ネジ自ら締めて、今日が救出される日になるかも、と思いながら待つ。
締め足りないと抜け落ちてしまい、風や振動で少しづつ緩み、脱落するネジがたまにいる。
・・・
その日、何事もなく時が流れ、太陽が沈み始める頃、ネジたちは、明日に期待を懐き、眠りにつく。
そうした日々を、すで相当の年月が経っていることは、ネジたちは忘れている。
かつて星で暮らしていた光景を夢に見ながら、明日を待つ。