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【旅掌編】ワーガワーガの珈琲屋。

私は卒業旅行で飛行機事故に乗り合わせた。
何人かの乗客は亡くなったが、私は生還した。

事故の後、日本に戻るか、目的地まで行くかを航空会社から尋ねられ、目的地まで行くこと決め、事故の翌日再び機上の人となった。

目的地のシドニーに着いたのは、天気のいい日曜日で、教会の前では結婚式の写真撮影が行われていた。
新婦の白いウエディングドレスが眩しすぎて、私は少し泣いた。

マンリーのビーチで砂浜に座り、海を眺めながら、内定をもらっていた会社の内定を辞退する事を決めた。つまらない学歴をチャラにする事に決めた。

深夜バスでメルボルンに移動した。
途中、ワーガワーガというところで、休憩のためにバスが停まった。
そこには小屋のような珈琲屋あり、同じバスに乗っていた初老のおじさんとコーヒーを飲んだ。

「ここはワーガワーガというんですね」
「そうここはワーガワーガ」

それ以外何も話さなかった。
真夜中の心地よい風に吹かれながら二人でコーヒーを飲んだ。

あゝ、これから生きて行こう

と思った。

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Eito
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