お城のセキュリティ対策?~今も昔も変わらぬ資産の守り方についての考察~
最近はテレビでも作られることは少なくなってしまったのですが、私は時代劇が好きだったりして、今でもケーブルテレビなどで昔の時代劇を見たりもします。
で、見ているとセキュリティ・コンサルの職業病ですね、いろんな場面で情報セキュリティにも通じる部分があるなぁ、というように見てしまうんですね。
ということで、今回は「お城」についてセキュリティの面から考察してみようかと思います。
<お城におけるセキュリティリスク?>
さて、日本の城といっても実はいろいろあります。統治の中心としての城、戦(いくさ)を意識した城などなどありますが、ここでは、統治の中心として建てられた城について考えてみましょう。
統治の中心として建てられる城の具体的な役割(業務・機能)は何になるかということですが、まず、統治の中心=象徴であるため、お城自体が立派である、お城自体が存在しているということに意味があります。で、そのお城にはお殿様がいらっしゃるわけです。
いや、「いらっしゃる」ではなく、お殿様の住居がお城なわけですから、お殿様とその家族が住んでいるわけです。住んでいるので、当然ながら食糧や水もあります。城主であるお殿様はその領地の最高権力者であり、ほぼ独裁者といってもよいわけです。
つまり、お殿様が亡くなるとか病気になるというのは、まずい状況なわけです。また、お殿様は男系による世襲制でしたので、お殿様のご家族、特にお世継ぎの若君というのは、お殿様についで大事だったりしたわけです。
また、統治の中心ということで政(まつりごと)を行う必要があり、お殿様以外に家老以下の役職の人が各種の日常業務、財政、年貢、開墾、治水等の業務を行っているわけです。さらに、各種の貯蔵庫としてお金、農産物、鉱工業生産物等を貯蔵する機能もあったりします。
ということで、城における「資産」は
・お殿様とそのご家族
・城自体
・城に蓄えられた金品・農作物等々
・城で行われている業務・文書(もんじょ)
といったあたりでしょうか?ということで、これらの資産におけるセキュリティリスクはどうなるかというと、
・当主、当主家族の命が害される。
・城の破壊(放火、外部の兵力による攻撃)
・兵力、財政など機密情報の漏えい、流出
・財産の盗難
・城への不正侵入経路の作成
みたいになります。
ということで、これを防ぐために城にはいろいろな仕掛け=セキュリティ対策がなされています。
<お城のセキュリティ対策>
お城のセキュリティ対策としてまず立地を考えてみるわけですが、戦のために作られた城の場合、想定される戦場の地形等を考慮しての戦術的に有利な場所を予め確保し、戦を有利に進めるための拠点として建てられるため、相手から「攻めにくい」ことが優先されるため、山間部・山の上、川の近くなどに建てられたりします。
しかし、統治の中心としての城の場合、立地としては領地の中心部=領民が多くいる場所の中心に立てられることが多いのです。そのため、平地や平地の中の低い山・丘に作られた城が多くなります。
こういった立地にある城の場合、
・堀がある(=堀にかかった橋を渡らないと中に入れない=出入口は橋だけ)
・大きな石垣がある(塀よりも物理的な強度が高く、建物の高さを出す)
・城の内部は領域が分けられていて(天守閣、本丸、一の丸、二の丸、三の丸)中心に近いほど、物理的に高い場所となる。(敵が侵入してきた場合に、高所・上から敵を攻撃できるようにする)
・出入口には門がある(いざという時に閉じることが出来る)
・領域間の経路が限定されていて、経路の途中に門がある
・城や通路の壁や塀には、狭間(細い隙間)があり、そこから鉄砲・弓・槍などで侵入した敵を攻撃
・出入口、経路途中の門には門番がいて、そこを通るには門番の許可が必要(アクセス制御と監視)
というようなお城における「境界防御」がなされているわけです。
で、お城の内部では、
・お殿様とその家族は城の奥のいる
・城の奥にいくまでに、部屋や廊下を横切る
・家臣が城内の見回り
・蔵には厳重に鍵
・外敵の侵入にそなえ家臣が待機
・お殿様の食事はお毒味役がチェック
・お殿様とその家族の世話をする側女中は信頼できる家臣の娘
といった形でいろんなこと(主に監視?)が行われているのです。
こうやってみると、情報システムのセキュリティ対策と同じように、
・境界防御:堀、石垣、門
・多層防御:内部での領域分割、経路限定と門の設置
・監視:門番、見回り、毒味役
・事故対応:家臣の待機、狭間の設置
みたいなことを実は考えられているわけなんですね。ということで、昔の人もお城を立てるときには、いろいろこんなことを考えて作っているわけです。
<そして忍者が登場する・・・>
ということで、実は城はいろいろセキュリティ対策を考えて作られています。
昔とあるシステム・セキュリティのトレーニングでアメリカに行ったことがあるのですが、その時の演習が「あなたは中世の城のセキュリティ対策設計者で、とある領主に新しい城のセキュリティ対策を任されました」という課題でした。
で、セキュリティ対策の例として、「跳ね橋を設置する」とか、「城の中にダンジョンを作る」とか、「魔法使い部隊を採用する」とかが書いてあって、参加者が結構いろいろ空想し楽しみながらその演習をしていたのを思い出しました。
さて、日本の時代劇としてはお城があると、そこに忍者や盗人が忍び込んで・・・・というのがあるわけです。ということで、次回は忍者?
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