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コロナ禍で奇跡の食材

もう実家に帰れなくなってから1年以上となった。

実家は福井の若狭町という町である。
海と湖と山に囲まれた自然豊かな町である。
自然豊かといえば聞こえはいいが、単に田舎である。
のんびりと暮らすにはいいところだ。

都会の喧騒に疲れた方はぜひ一度訪れてほしい。
一応、観光地であるが派手さは無い・・・良いも悪いも・・・
食べ物も美味しい。
海の幸、山の幸など・・・
特に鯖、鰤、ぐじ(甘鯛)など。

↓若狭名物の焼き鯖

この地域は「御食国(みけつのくに)」と呼ばれ、古代から朝廷に海産物を中心に食料を献上されていた。
それだけ豊かな食材の宝庫であるということだ。

今は5月。
新ワカメのシーズンである。
先週、漁師の父から「干しワカメ、送ったろか?」との電話。
「とりあえず、今はいらん!」と返事。
今は料理する時間がないので断る・・・

おすすめのワカメ料理はシャブシャブである。
特に生ワカメをシャブシャブしてポン酢で食べるだけである。
このシンプルな食べ方が一番うまい!

潮の香りと歯応え、そしてツルツル感が何とも言えない。
いつでも食べれそうだが、天然のワカメはなかなか味わえない。
また色の変化が面白い。
熱湯に潜らせると、茶色から鮮やかな緑に変化する。

だったら、父の好意を無駄にするなと怒られそうだが、そういうことではない・・・

ぜひ、5月頃に若狭町に行く機会があればぜひ、生わかめのシャブシャブを食してもらいたい。

本題は、ここからである。

ワカメの他にも豊富な食材がある町であるが、先月に我が人生で初めて食した食材がある。

「鮒」である。

しかも東京の恵比寿のお店で。
コロナ禍の中、田舎に帰ることができていない人たちに地元を思い出して貰おうという企画だろうか。
地元三方湖で取れた鮒、鯉を食べてもらおうと言う企画だ。
しかし、そもそも「鮒」を食べたことがないので、これを食べても地元を思い出すことはないのだが・・・

地元の漁協と企画会社とのコラボ企画で、
一ヶ月の限定でランチのみの営業である。

同じ福井県人でマーケティング会社に勤務の知人からの情報を得て、一緒に恵比寿のお店でランチをすることになった。
しかしである・・・

日本海の漁師の息子として育った私としては「鮒」を食べる選択はあり得ない・・・
日本海で取れた魚が一番旨いに決まっている。

「・・・鮒・・・・えっ?」・・・声を殺して呟く。

私に限らず、鮒は泥臭いと思っている人が大半だと思う。
お隣の滋賀県には琵琶湖の鮒を使った鮒寿司と言う食い物がある。
これも臭いと言われている。
決して食わず嫌いではないが、あえて選択して食うことはない。

一緒に行った知人女性は、どうも怖いもの知らずのようである。
グイグイと何でも食す勢いである。尊敬に値する。

またこれを企画した会社の女性担当者もテンション高めでカウンター越しにお酒を勧めてくる。この女性担当者も若狭町押しで応援してくれている。
感謝である。

とりあえず、勢いに任せて食うしかない・・・

まずは前菜で酒が進む。
酒は、地ビール「若狭ビール」、地元の日本酒「鳥浜」で喉を潤す。


食材は全て若狭産である。
なんか不思議である。
東京で地元の食材を味わうことなどほとんどない。
もちろん美味しいがそれよりも地元で飲んでいるような安心感がある。

そこでメイン料理の「鮒」が出てくる。
しかも刺身である・・・



「えっ・・・」また声を殺して呟く・・・

「刺身か・・・ほ〜〜〜やってもうたな・・・」心で呟く。
見た目は、鰤のような少し赤みかかった白身である。
それと海苔で巻いた刺身、巻き寿司のようである。

生姜醤油でいただくらしい。
醤油皿に醤油を垂らし、生姜を多めに。
臭いを嗅ぐ。
無臭だ。

多めの生姜醤油に潜らせ、一口パクリ!

「ん?」あれ?

おかしいな?鼻がおかしい?

もう一口パクリ!

あれ?臭くない!
旨い!

そんなはずは無い・・・
しかし旨い。
鯛のような旨さ。
いや、鯛より旨いかも!
程よい脂と程よい歯応えを感じる。
こんなに旨みが濃厚でしかもさっぱりとした味わいは他には無い・・・
少し小骨が舌に触るが、旨さが勝る。

想像した食べ物とは全然違う!
今までの鮒のイメージは何だったんだ!

お世辞にも地元の湖「三方湖」の水質は綺麗とは言えない。
(遠くから見ると綺麗なんだが)
そこで取れた鮒料理は食えるものとは思っていなかった。

何で、こんな旨いもの今まで食えていなかったんだ?
何で、この鮒を食わす店がないんだ?
何で、誰も旨いと言ってくれなかったんだ?
疑問だらけである。

地元でも提供されていない。
一部の地域だけでこの鮒を食べているらしい。
何というか・・・残念。

この日は、さらに鮒の煮付け、鯉の丸揚げなど食した。
どれも旨い。
店のオーナーは怪しげな目線で、「どうだ」と言わんばかり。

鯉の甘酢あんかけである。

こんな食材が地元に密んでいたなんて・・・
逆に不思議である。
地元ではメジャーでない食材をよく東京に持って来たな!と・・・

次の日、地元の友人に電話をした。
「旨いやろ!この地区の者しか食ってないからな・・・」

何で黙ってたんや?
おそらく当たり前すぎて、話すほどのことではなかったようだ。

鮒、鯉のシーズンは12月から3月くらいまでである。
食したい方は鳥浜漁協に連絡してみると食せるお店を教えてくれるかも・・・
一度くらいは、騙されたつもりで食ってみい〜!

情報をくれたマーケティング会社の大田あゆみさん、若狭町ファンで企画会社の新井美穂さんに感謝です。

↑レインボーライン山頂から眺める三方五湖

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