SingOut!のまとめ 2025版
昨年書いたものから新たな気づきがあって、当時書いていたものと一部違う内容になってしまったので書き直します。
アイドルを見るにあたって、第○章という分け方をされることがよくあります。
乃木坂でもそれについて考えたことがある人は相当な数いると思います。
設楽さんもバナナムーンの中で言ってました。
初紅白あたりまでが第1章とか、橋本奈々未卒業までとか、早い人ではセンターが生駒から白石に替わるまでが1章と考える人もいるかもしれない。
これに関しては人それぞれで、それぞれが納得するのが答えでいいと思いますが、僕は確固たる理由があり、SingOut!までが第一部としています。
章ではなく「部」にしたのは、乃木坂がジョジョの奇妙な冒険のように主人公が交代しながら続いていく物語なので、それに倣ってです。
山下美月卒業コンサートあたりから、「全員が主役のグループ」「ライブは全員が主人公」というコピーが使われるようになりましたが、それでも乃木坂の縦軸としては主人公を設定しているのではないかと思っています。
乃木坂第一部は生駒里奈が主人公、ヒロインは西野七瀬。
乃木坂第二部は久保史緒里が主人公、ヒロインは山下美月。
この辺りについてはもう確定としています。
第三部については現時点では主人公遠藤さくら、ヒロイン賀喜遥香ではないかと思っているんですが、これについてはちょっと審議。
一旦今回の内容には無関係なのでまた別の機会にします。
SingOut!までが乃木坂第一部という根拠について、改めてまとめておきます。
前述の通り、乃木坂第一部の主人公は生駒、ヒロインは西野。
乃木坂の物語には明確なテーマというかゴールがあって、第一部は「AKBを超える」というもの。
これはAKBリクエストアワードでの生駒の発言から。
それを元にした「私たちには、超えなければならない目標がある」という文言は公式サイトにも記載されていました。
今となっては現実的に考えると売れているのは乃木坂の方ではありますが、SingOut!までの期間ではどうしてもAKBの方が格上感がありました。
そんな中、乃木坂が初めてAKBに勝利したのが2017年のレコード大賞であり、翌年のシンクロニシティ。
明らかに数字でAKBが上回っていましたが、シンクロニシティで初めて初週の売り上げで上回り、上半期のアーティスト別セールスでも乃木坂がAKBを上回りました。
ここでついに数字でも乃木坂が上回った。
それを達成したのがAKBを超えると宣言した生駒里奈の卒業のタイミングというのは、物語としてあまりに出来すぎている。
僕の持論ですが、物語にはクライマックスの後の余韻が絶対に必要と思っています。
ゲームで言うと、ラスボスを倒したら即エンディングというのは情緒に欠ける。
ドラゴンクエストでは、ラスボスを倒した後、平和になった世界をみてまわることができます。そこで冒険が終わったことを実感できるようになっているんです。
乃木坂でいうと、シンクロニシティがクライマックスで、その後が余韻であり、次回作への引きの部分にあたります。
AKBを超えるという目標達成のシングルとしてシンクロニシティ。
次回作に繋がる新世代の台頭として、ジコチューでいこう!
ヒロイン西野七瀬の卒業、帰り道は遠回りしたくなる。
第一部の物語が完結し、大団円を迎えるいわばエンディングテーマとして、SingOut!
生駒と西野は自身の最後のセンター曲で歌っています。
共通して、「ここ」から出て、新しい場所を目指している。
そんな卒業生に向けて歌うのがSingOut!です。
Againstでは「孤独にならなきゃいけない」とも歌っていますが、それに対してもSingOut!では「ひとりぼっちじゃないんだよ」と歌っています。
乃木坂は卒業しても乃木坂、帰る場所として乃木坂があるというのは過去何度も書いてきたように、帰る場所としての乃木坂を守り続けるという歌詞になります。
遠回りしながらまた帰ってくる際、道に迷わないように足を踏み鳴らし、手を叩いて待っているというメッセージ。
それこそが風にのせて飛ばしたい愛の歌なのだと思います。
AKBを超えるというのが選抜が背負った宿命で物語だとして、その一方、その陰でもうひとつの物語がありました。
それがアンダーの物語です。
選抜を太陽が当たる日向とするなら、アンダーは日陰の物語。
日陰ができるのは、太陽の光があるから。
自分より太陽が当たる存在が近くにいるから、そばにいる人にとってはそこが日陰になる。
アンダーは日向に立っている選抜メンバーのそばにいたから日陰になった。
アンダー。良くも悪くも、その言葉が最も似合ってしまうのが中元日芽香だと思っています。
選ばれない、光に照らされないというアンダーの残酷さも、場所に限らず花を咲かせることができるというアンダーの美しさも、その両方を体現していました。
妹は世界で活躍するBABYMETALのSU-METAL。乃木坂では同い年で仲が良い同期に生田絵梨花。
彼女のそばには常に天才、いや、怪物がいました。
それだけならまだしも、残酷な言葉を浴びせたものがいました。
「代わりはいくらでもいる」
これを誰が言ったかは定かではないですが、そんなことを言いそうな人間に心当たりがあります。
そんな中元を守り、救おうとしていたのが北野日奈子ですが、結果として中元はグループからの卒業を選びました。どこか自分に似た後輩のことを気遣いながら。
中元の卒業あたりから、北野は体調不良で活動休止となりました。
北野は先輩の星野みなみや、同期の相楽伊織に支えられ、46時間テレビでファンに姿を見せ、生駒の卒業コンサートでステージに立ちます。
21枚目、アンダーメンバーとして活動した北野。
その時、3期生久保史緒里が乃木坂としての活動を一部休止すると発表がありました。
中元が座長のアンダーライブで乃木坂に入りたいと決意した久保。
中元が「自分に似ている」と気遣っていた久保。
「何を敵に回してもしーちゃんを守るよ」と北野は久保に伝えました。これはかつて北野が中元に向けて言った言葉でした。
北野に救われた久保は、かつて憧れた舞台であるアンダーライブに立ちます。
センターは北野。裏センターに久保が立ったその楽曲が、日常。
北野の活動休止が「中元を救えなかった」ことに起因するのであれば、久保が北野に救われたことで、北野も救われたのかもしれない。
そんなふたりが福神として、SingOut!に参加します。
アンダーの物語を背負ったのが久保史緒里だとするなら、選抜の物語を継いだ齋藤飛鳥と同じブラウスを着ていることに意味が生まれるのではないでしょうか。
ところで、SingOut!のフロントメンバーが乃木坂の歴代センターを元にしているように思えて仕方がない。
この時点で在籍しているメンバーに加えて、
生駒里奈は生生星としてフロントに並んだ生田絵梨花が。
西野七瀬は活動の中で常に支えになっていた高山一実が。
深川麻衣はハルジオンで手を引いた堀未央奈が。
橋本奈々未は孤独兄弟として共にセンターの両脇を守った白石麻衣が、それぞれ代役を務めたのではないかと思っています。
SingOut!のMVの中、1:55あたりからフロントメンバーが次々出てくるシーンがあります。
ひとりで踊る齋藤飛鳥の元に白石と生田がやってくる。手をつなぐ二人に齋藤飛鳥はもたれかかり、そのまま白石と画面からはけていきます。
ひとりで踊る生田の元に、今度は高山が加わり、ふたりで向かい合って踊る。
互いに掴んだ腕の下をくぐって堀が加わるも、生田と高山はすぐにはけて堀はひとり踊ります。
その後ろに大園桃子と与田祐希がやってきて、堀はふたりと絡むことなく画面外へ。
与田と大園はふたりで踊り、最後にもう一度齋藤飛鳥が現れて、メンバーとダンサーが集まってくる。
1期生→2期生→3期生の順で出てくる中、堀だけが誰とも絡まずひとりで踊っている。
これが乃木坂と太陽の関係性についてでも書いたように、堀が太陽から目を逸らされたからかも知れない。
SingOut!には無限に考察の余地があります。
手を叩き、足を踏み鳴らす。
手を叩く音は久保史緒里がセンターの「僕が手を叩く方へ」に。
踏み鳴らす足音は山下美月がセンターの「チャンスは平等」に出てきます。
昔も今も、この曲は乃木坂にとっての道標になる曲だと僕は確信しています。