乃木坂饅頭の歌詞について大真面目に考える
逆張りとかではなく、とてもいい歌詞。
アイドルに対するファンの在り方を考えさせてくれました。
では折角なので歌詞も一緒に載せつつ考えていきましょう。
(推しくら饅頭)
ヨイショヨイショヨイショッヨイショ
(推しくら饅頭)
ソイヤソイヤソイヤソイヤ
『乃木坂饅頭』
チャンチキチン 鐘を鳴らして
ゾロリゾロとネリ歩く
どちら様のお座敷だい?
トンツクテン 太鼓を打てば
金襴緞子の美女たちで
石畳が華やぐよ
歌い出しが「推しくら饅頭」なので、これがアイドルとファンの歌であることはすぐに分かります。
よいしょとかそいやで、一緒に盛り上がれる曲ってことで前半部分。
でもこれ、あえてやってる気がするんですよ。秋元康とか今野さんの意地悪というか、メンバーとかファンにこういうことさせてやろう的なね。
ありがたい話です。
だってこれをマンキンでやってるメンバーもかわいいし、照れながらやってたらそれもかわいい。
こういう合いの手部分はもう楽しんだもん勝ちです。
それより何より歌詞凄いんです。
さすがに歌詞のテーマって花魁ですよね。出てくる単語が悉くそれです。
アイドルを、というか乃木坂を花魁に例えて、アイドルとファンの関係性について歌っている。
でもその上で、「僕」は徹底して「君」を守ることしか考えていない。見返りすら求めない。
「価値あるもの」の歌詞も同じ考え方の「僕」でした。
そうあるべきという圧を感じます。僕もそうあるべきやと思っています。
ほの字 ほの字 ほの字
今宵も受け月
(眼差しの矢が刺さる)
君は君は君は 何て名前だ?
『一目惚れ』
僕は念じる 覚悟 恋敵
守りたい 守りたい 君の純潔
狼の手から身を挺して
指一本触れさせない
らららららららららら
(はいはいはい)(お守りいたそう)
見返りなど要らぬわ
(はいはい)(親衛隊長)
この部分は前述のとおりです。
花魁道中の中で「君」に一目惚れする。
「今宵も受け月」が特に気になる。
受け月は細い三日月が盃のようになっている月で、願いが叶うと言われています。
君と出会うというのが夢なのか、そこから先が夢なのか。
それとも、君の夢を受け止めたいという見返りを求めない愛か。
最後のがいいかなと個人的には思います。
推して推して推して推して推しまくれ(ヘーイ)
ぐっとぐっとぐっとぐっと前に出よう(ヘーイ)
ほいさほいさほいさほいさ
さらば! 競う者たち
(はい!)そりゃ! (は?)推しくら饅頭
この部分、楽しいだけのパートと見せかけて、「さらば! 競う者たち」が味わい深い。
競う者たちっていうのは、見返りを求めている人を指しているのではないかと思います。
自称TOみたいな人、乃木坂以外のジャンルで今まで何度か目にしたことがあるんですが、少なくとも僕が見てきた人は「自称でしかない」人たちでした。
見返りを求めたり、我を出してくるオタクに対する苦言の部分っぽい。
レスもらえた!とか、認知もらえた!とか、それで喜ぶ人はかわいいけど、「俺のことを覚えてくれない!」って怒るのはさすがにみっともない。
チントンシャン 三味と笛とで
白塗り顔 紅引き笑う
ねえどちらからお越しだい?
その香りに君に決めたよ
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花だ
「私のどこに惹かれたの?」
「他にもいっぱいいるのに?」
「手を振ったの気づいた?」
「どこにも行かないでね」
「好きだと言ってよ」
恋は押し合いへし合い
花魁ブロックからのセリフ。
乃木坂で花魁というのも中々皮肉なところで、それも面白い。
セリフはそのままアイドルとしてのセリフ。
ところで、これもいずれどこかで書くか話すかしたいんですが、「王道アイドル」ってイメージで思い浮かべるのっていまだに昭和アイドルな気がする。
これは僕の世代的にそうなっているだけ説もあるけれど、乃木坂含めて握手券をつけてCDを売ることの是非を考えさせられます。
なんというか、そういうのも花魁的って感じがする。
だからこそこの後の歌詞がより良いものになるんです。
僕は念じる 覚悟 恋敵
守りたい守りたい君の純潔
狼たちの手から身を挺して指一本触れさせない
君は特別さ そばにいたいだけ
貫こう 貫こう 僕の純愛
子羊たちの群れでたった一人 運命と巡り逢った
サビ自体は一番でも出ているんですけど、花魁をテーマにして、「守りたい君の純潔」というのも、「そばにいたいだけ」「貫こう僕の純愛」というのもいいですね。
花魁である以上、そういうことは起こるものですが、その上で純潔を守りたい、僕は純愛を貫くという美しい痛々しさを感じる。
狼との対比として「君」を「子羊」と「僕」が思い込んでいるのも含めて非常に興味深い良い歌詞です。
ちなみに、羊といえば「羊飼いよ」って曲もあるんですが、この曲でも羊は乃木坂のメンバーを表していると思います。
らららららららららら
(はいはいはい)(ずっとどこまでも)
どうせ一夜の夢なら
(はいはい)(付き合いましょう)
この部分、合いの手部分は「ずっとどこまでも」「付き合いましょう」なのに、「どうせ一夜の夢」とバッサリいってるのが素晴らしい。
キン肉マンの「私は(ドジで)強い(つもり)」に似たものを感じます。
推して推して推して推して推しまくれ(ヘーイ)
ぐっとぐっとぐっとぐっと前に出よう(ヘーイ)
ほいさほいさほいさほいさ
さらば! 競う者たち
(はい!)そりゃ! (は?)推しくら饅頭
推しくら推しくら推しくら饅頭
推すなよ推すなよ推すなよ饅頭
綱引き綱引き綱引き饅頭
ああ 東京名物
推しくら饅頭
乃木坂饅頭
この最後の部分、その前の「どうせ一夜の夢なら」があるからこそ良いんですよ。
基本的にこの曲の中の「僕」って、独りよがりなんです。
見返りを求めない、君は特別、と頑張っているんですが、「僕」と「君」の関係はあくまで一夜の夢でしかない。
見返りを求める狼とは違うと思っているけれど、結局おしくら饅頭している有象無象と大差ない、「東京名物」で一括りにされてしまう。
考えすぎかなとも思いましたが、そんな残酷さも含めて「らしい」歌詞です。
乃木坂とファンの関係性はあくまでカーテンの中の内緒話と、それを盗み聞きしたい人たちなので、この感じがしっくりきました。
でもその上でファン想いな一面を見せてくれるメンバーに対する感謝を忘れないようにしたいものです。