【カードワースリプレイ】先陣を切る槍 第3話 酒蔵の妖魔退治
この記事は、サトウチ様作のシナリオ〈酒蔵の妖魔退治〉のリプレイです。
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依頼受注
ある朝、宿の亭主が先陣を切る槍に声をかけてきた。
ついさっき新しい依頼が発注されたので、彼らにこなしてほしいと言う。
その依頼内容とは?
依頼人が宿にいると言うので、詳しい話を依頼人から聞いてみることに。
親父さん曰く、「よく運搬の依頼を持ってきてくれるお得意様で信頼できる人物」だと言う。
依頼人のシャルドは、リューン郊外のコシュー村でワインの製造と卸売業を生業としているという。
その話を聞いて、アルフォンスはコシュー村と言えばワインが特産品の村として知られていると思い出した。
ブランシュ:酒蔵の修繕中に魔物!?
……それで、ボルドさんと従業員の皆さんはご無事なんですか?
カルロ:魔物がいる洞窟に一般人が取り残されるなんてマズいことだよ。
ブランシュ:一刻も早く救助に向かわないといけませんね!
アルフォンス:ブランシュ様、落ち着いてください。
現場についてよく知らないまま向かうのは危険すぎます。
今のうちに現場の場所、敵の情報、救助対象の特徴を確認しましょう。
ブランシュ:うぅ、先生のおっしゃることも一理ありますね。
……それでは、酒蔵に出没した魔物の特徴はわかりますか?
テーオバルト:ゴブリンなら、俺達でもなんとか勝てそうな敵だな。
アルフォンス:ただ、シャーマンやロードが率いている場合は苦戦を強いられる可能性があるので油断は禁物です。
リラ:ゴブリンは一匹の強さは大したことないけど、シャーマンやロードがいる群れは危ないって……お父さんも言ってた……。
カルロ:これで敵の情報は判ったね。
それじゃあ次は、救助対象のボルドさんについて訊いてみよう。
ジャーダ:赤い帽子がトレードマークだな。ばっちり覚えたぜ!
アルフォンス:最後に確かめるべきことは、ここから現場までの道程ですね。
魔物がいる洞窟に一般人が取り残されたので、可能な限り早く現場に駆けつける必要がある案件なので。
テーオバルト:森って土地勘がない奴はすぐ迷っちまうから、
現場まで道案内してもらえるのは助かるぜ。
その後、先陣を切る槍は報酬の金額を依頼人に確認したうえで、
依頼を引き受けると返事をした。
魔物の駆除で600sp、酒蔵に取り残された依頼人の兄の捜索(生死不問)で300sp。
合計900spの依頼。
先陣を切る槍は依頼人から渡された紹介状を握りしめて、
コシュー村行きの馬車に乗り込んだ。
その道中、酒豪のジャーダは「飲み比べしたいから葡萄酒を買っていこう」と語っていたが、仲間達はそれどころではない。
何しろ、いつ救助対象が命を落とすか判らない状況にいるのだから。
酔いどれゴブリン
コシュー村に着くと、先陣を切る槍は村長に紹介状を渡して現場の酒蔵まで案内してもらった。
酒蔵の前に着いた頃には、日が傾き始めていた。
酒蔵の入口には、見張りとおぼしきゴブリンの姿が見える。
テーオバルト:おかしいって、どこが?
カルロ:なんだかあのゴブリン、ふらついてるように見えるよ。酔っ払いみたいに。
ジャーダ:酔っ払いみたい……ていうか、アイツ本当に酔ってんじゃねぇか? ワインボトルを持ってやがるし。
アルフォンス:ゴブリンも酒で酔うのですね。……いやいや、それよりもあの見張りをどうにか始末する方法を考えましょう。
いくら相手が酔っ払いと言えど、正面から襲い掛かるのは悪手。
内部にいる仲間に我々の存在を悟られないようにするためには、忍び寄って仕留めるか、遠距離攻撃で仕留めるかの2択ですね。
テーオバルト:それなら、リラの弓矢で仕留めるのがいいんじゃねぇか?
大きな物音を立てずに攻撃できるぜ。
アルフォンス:なるほど。ではリラ、お願いできますか?
リラ:うん、やってみる……。
アルフォンス:的確に急所を突いて一発で無力化するとは素晴らしいですね。
ブランシュ:それでは見張りが倒されたことが気づかれていない今のうちに、中に入りましょう。
ブランシュが先頭に立ち、先陣を切る槍は酒蔵内部へ入っていった。
床に散乱した木箱の破片をどかしてみると、見たことがないキノコが生えていた。
カルロ:そういえば、魔物が現れる前に木箱にカビが生えたとかなんとかって、依頼人が言っていたよね。それが成長したのがこのキノコかな?
テーオバルト:このキノコ、食えるのか?
アルフォンス:これは私も見たことがないキノコですね。
依頼が終わった後に食べられるかどうか調べてみましょう。それまで皆さん食べてはいけませんよ。
道なりに奥に進むと、左右に道が分かれていた。
ブランシュが妙な物音に気付いた矢先に、ゴブリンの群れが襲い掛かってきた!
ブランシュ:まだ入ったばかりだと言うのに、もう気づかれてしまいましたか! こうなったら強行突破するしかありませんね!
なんとか無傷で敵を退けたが、
酒蔵内部にいるゴブリンの群れに侵入者の存在を気づかれてしまった。
「今後の戦闘は長引けば増援が来ると想定して動く必要がある」とアルフォンスは仲間達に告げる。
その言葉を聞いた仲間達に緊張が走る。「早く救助対象を見つけて脱出させなくては」と。
そんな状況で、ジャーダは雑多なものが詰まった木箱から目ざとく未開封のワインを見つけ出した。
酒飲みの勘、恐るべし。
ブランシュ:こんなことをして大丈夫なのでしょうか?
カルロ:いくら瓶に傷だらけになって商品としての価値が落ちたものって考えても、気が引けるよね。
ジャーダは気にしなさそうだけど……。
ワインを見つけて上機嫌になったジャーダは、
探せばまだどこかにあるかもしれないと期待しながら、物音が聞こえた東の道の探索をし始める。
カルロ:こんな地響きみたいないびきをかく生き物って……、何がいるんだろう?
道なりに進んで行って、ようやくその正体が明らかになる。
ジャーダ:コイツに至っては酔いつぶれてやがるな。
殺るなら今のうち……えいっ!
ジャーダは得物のナイフを酔いつぶれたホブゴブリンの喉目がけて突き立てた。
リラ:骨が見えた時はゾッとしたけど、形からして野生動物のものだね。
……あれっ?
テーオバルト:どうしたリラ?
リラ:見て。横穴がある。……こんな穴、見取り図に描いてなかったよ。
見取り図にない横穴
ブランシュ:魔物が出現した穴でしょうか? 調べてみましょう!
カルロ:調べるって言っても、この穴、テーオバルトがギリギリ通れるかどうかって大きさだよ。
ゴブリンはともかく、ホブゴブリンが通るのは無理だと思うけどなぁ。
リラが見つけた横穴、その奥にあるものとは一体何か?
入る前に横穴の中を覗き込んでみると、細い道の先がわずかに明るくなっていることに気づいた。
リラ:あの明るさは……ヒカリゴケにしては明るすぎるような……。
アルフォンス:ランタンの灯りでしょうか?
ブランシュ:ランタン……まさかこの横穴の奥に……! 急ぎましょう! 手遅れになる前に!
灯りの正体が判った途端、ブランシュは横穴の奥に救助対象がいると確信した。
そして彼女は真っ先に横穴に入り、その後を仲間達が1人ずつ続いて行く。
ブランシュ:ああ、よかった! まだ生きています!
ボルドさん、私達はあなたの弟さんから依頼を請けて救助に来た冒険者です。どこかお怪我はありませんか?
ブランシュは水筒の蓋を開けてボルドに渡した。
水筒を受け取ったボルドは一息で飲み干した。
そのおかげでなんとか落ち着きを取り戻したボルドは、
酒蔵で魔物と遭遇した後、注意を逸らしながらこの横穴の奥に逃げ込んだはいいが、
その後に酔いつぶれたホブゴブリンに横穴を塞がれて閉じ込められたと説明した。
一通り話を聞きながら、カルロとリラが応急処置を施した。
とはいえ、ボルド一人だけでゴブリンがいる酒蔵から脱出させるのは無謀だ。
かと言って、ゴブリン退治が終わるまで彼をここで待機させるのも危険だし、脱出させることを優先してその間ゴブリンの群れを放置するわけにもいかない。
テーオバルト:おっ、それ名案だな!
ブランシュ:それならボルドさんを安全な場所に誘導しつつ、ゴブリンの群れを退治できますね。
リラ:でも、1人だけで護衛は危ないと思うよ……。
アルフォンス:護衛をつけるなら2人が望ましいですね。片方は回復術を扱えるカルロかリラにしましょう。
問題は、ゴブリン退治とボルド氏護衛の内訳をどうするかです。
カルロ:僕とリラが別々になるのは、両方の生存率を確保するために必須だよね。
それから分けるべきなのは、前衛が務まるブランシュとテーオバルトかな。
ジャーダはゴブリン退治組にいてほしいね。まだ調べていない場所があるから。
ブランシュ:先生もゴブリン退治組で確定ですね。
となると、これから決めるべきことは、私、テーオバルトさん、カルロさん、リラさんをどちらに割り振るかですね。
テーオバルト:俺とリラがボルドのオッサンを酒蔵の外に連れて行く。
その後はすぐにそっちに駆けつけてやるぜ。
ブランシュ:リラさんは、テーオバルトさんと行きますか?
リラ:うん、テーオについて行く。
ブランシュ:決まりですね。私達は群れのボスを捜しに行くので、
テーオバルトさんとリラさんは、ボルドさんの護衛をお願いします!
テーオバルト:おう! 俺達に任せとけ!
ブランシュ、アルフォンス、カルロ、ジャーダがゴブリン退治に行き、
その間にテーオバルトとリラがボルドの護衛につく方針が固まった。
準備を整えた7人は、ゆっくりと横穴を潜り抜ける。
二手に分かれて
ジャーダが傷だらけのワインボトルを見つけた分かれ道で、
ボルドの護衛についたテーオバルトとリラを見送り、
ブランシュはまだ探索していない西の道へと歩みを進める。
4人はそれぞれの得物を構えながら、奥へと進む。
ゴブリンとキノコ
カルロ:あのゴブリン達、何してるのかな?
ブランシュ:何かの儀式のようにも見えなくもないですが……。
アルフォンス:なんという成長速度!
あの踊りにキノコの成長を促す効果でもあるのでしょうか?
アルフォンスの驚きの声に反応して、ゴブリン達が騒ぎ始めた。
アルフォンス:しまった……!
ジャーダ:何やってんだよ! あんたのせいで気づかれちまったじゃねぇか!
ブランシュ:仕方ありませんね。戦いましょう!
数では負けていますが、一体ずつ確実に減らす作戦で行けばなんとかなるはずです!
ジャーダ:なんだアイツ? 杖振り回しながら奇声あげてんぞ。
カルロ:仲間でも呼ぶ気なんじゃ……?
ジャーダ:なんも起きねぇぞ?
カルロ:ブランシュ、敵を一体ずつ減らせばなんとかなるって言ったけど、
誰を最初に狙う気なの?
カルロ:最初に倒すべき敵はシャーマンですね!
眠らせたり身動きの自由を奪う術を使われると厄介なので。
アルフォンス:ブランシュ様! ブランシュ様が敵の術で動けなくなってしまいました。
……そう言えばこのキノコ、解毒作用があるそうですね。試してみましょう。
カルロとジャーダは、シャーマンの無力化を最優先でお願いします!
アルフォンス:ブランシュ様の麻痺は解けましたが、まだシャーマンが立っていますね。
ここは魔法の矢で確実に仕留めますか!
ブランシュ:リラさん! ボルドさんを無事に脱出させたんですね!
……ところで、テーオバルトさんはご一緒じゃないのですか?
リラが加わり、なんとか厄介なシャーマンを無力化することに成功した。
ブランシュ:一番厄介な敵が無力化しました。
カルロ:それでも敵が数で勝っていることに変わりはないよ。
テーオバルト、君も早く戻ってきて……!
ジャーダ:あんた今まで何してたんだ? って、おいなんだその樽はっ!
テーオバルトがよくわからない装置のスイッチを押すと、
巨大な樽が敵陣目がけて突っ込んでいき、爆発した。
完全に無力化とまではいかなかったが、まだ立っているゴブリンの群れ全員にそれなりのダメージを与えられたように見える。
ブランシュ:あの樽のおかげで形勢が有利になりましたね!
一気に畳みかけましょう!
ゴブリンの群れとの戦いは、リラの翅貫きで決着がついた。
その後、ジャーダはゴブリンシャーマンがお立ち台代わりに乗っていた木箱を調べてみた。
箱自体は頑丈でジャーダのピッキング技術をもってしても開けられなかったが、
その代わりに木箱のそばに落ちていたシャカシャカ音が鳴るキノコのような謎の道具を拾った。
ジャーダ:こんなモン、何に使うんだよ?
気を取り直して、さらに奥へと進んでいく。
部屋の中央にはキノコが生えた柱のようなものがあり、さらに奥に横穴が見える。
おそらくあれが、ゴブリンの群れの侵入経路になったのであろう。
カルロ:穴を塞ぐと言っても、使える物ってこの洞窟にあるかな?
テーオバルト:それならちょうどいいもんがあるじゃねぇか。
ゴブリンシャーマンが乗ってたあの木箱!
ブランシュ:これでもう、この酒蔵にゴブリンが入り込む心配はなくなりましたね。
早く依頼人に報告しましょう。
酒蔵からの帰還
ジャーダ:とっておきのワイン……! じゅるり……。
ブランシュ:………………。
その後ブランシュ達はボルドの家に招かれて、
コシュー村産のワインを堪能しながら一夜を明かした。
マツタケ
依頼を終えて、葡萄の季節が過ぎた頃に、
シャルドが猫の王様亭を訪ねてきた。
ゴブリンの群れのせいで謎のキノコまみれになったあの酒蔵のことを親父さんは心配していたが、
仕込みは無事に終えられてワインはいつも通りの価格で流通できるとシャルドは語る。
収支報告
カルロ:今回請けた依頼は酒蔵に侵入したゴブリンの群れ退治と、
現場に取り残された依頼人の兄ボルドさんの救出だね。
どっちも成功させたから、報酬は900sp入ったよ。
それから、ゴブリンの侵入経路を見つけて再発防止に貢献したからと、100spのボーナスもついたよ。
おかげで今の所持金が1450sp。
それから、後日依頼人のシャルドさんが訪ねて来て、
酒蔵に生えた例のキノコーーマツタケを原料にしたお酒をくれたんだった。
精神を落ち着かせる効果の他に、中毒と麻痺を治す効果もあるみたいだよ。
きっとこれからの冒険に役に立つだろうから、ジャーダが独り占めしないようにしっかり管理しないとなぁ。
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