見出し画像

【カードワースリプレイ】先陣を切る槍 第6話 思いすがるものども

この記事はFulbright様作のシナリオ〈思いすがるものども〉のリプレイです。

配布先はこちら↓
https://ux.getuploader.com/fulbright_CW/


石くれの村ホスタ――依頼人と対面

先陣を切る槍は何度追い返しても洞窟に戻ってくるゴブリンの群れ退治の依頼を請けるべく、石くれの村ホスタに旅立った。
道中多少の雪が降ったことを除けば天気が大きく荒れることはなく、
一行は予定より少し早い二日目の夕方に、依頼人が待つ村に着いた。

「この調子で依頼も順調に終わればいいよな」と言うテーオバルトの言葉に仲間達が同意しつつ、
彼らは依頼人との待ち合わせ場所である”虎児の瞳亭”に入る。


カウンターの奥から店主が「いらっしゃい!」と先陣を切る槍に声をかけてきた。
夕食時ということもあり、忙しくて手が離せないように見える。
それを承知のうえで、ブランシュは今回の依頼人であるエゴン・パージターが泊っているかと店主に尋ねる。
店主はエゴンという客が泊っていると答えたが、今どこにいるかまでは把握していないようだった。
食事中でなければ客室にいるか、外にいるか。

アルフォンス:亭主はご多忙のようですし、あとは自力で依頼人を見つける必要がありそうですね。
……おや?

アルフォンスが食事中の客の中から依頼人らしき人物を探し始めると、
じっとこちらを見ている男がいることに気づく。
お互いの目が合うと、男はテーブルに置いた腕の肘より先を浮かして手を振ってきた。

ブランシュ:はい。私達がゴブリン退治の依頼を請けた先陣を切る槍です。
あなたが依頼人のエゴンさんですね?

依頼内容

エゴンから聞かされた依頼内容はゴブリン退治ではあるが、単なるゴブリン退治だけでは済まされなさそうだった。
何しろ現場となる洞窟は、ここ半年の間に二度もゴブリンが棲みついたという。
二回とも先陣を切る槍とは別の冒険者達が駆逐して、洞窟内に特に不審な点も見られなかったはずなのに、
また洞窟にゴブリンが棲みついてしまった。
エゴンは短期間に同じ洞窟がゴブリンの巣として利用されることは普通では考えられないと語る。
通常ならゴブリンは人間に駆逐されると、「ここに巣を構えても人間に狙われやすいから危険だ」と判断してしばらくその場に戻ってこないからだ。
ところがくだんの洞窟はその例に当てはまらないので、二度とゴブリンが入れないようにするために入口に発破をかけて封鎖することが決まったという。

その一方でエゴンは何度追い払ってもすぐにゴブリンが洞窟に居を構える謎を解明したいと考えており、
調査の前に洞窟に棲みついたゴブリンを退治してほしい。というのが今回の依頼内容だ。
調査の結果、原因が判っても判らなくても報酬は支払うという。

調査は明朝から行う予定なので、
先陣を切る槍はその前に報酬について確認した。
まずは前金として200sp支払われた。

それから、翌日の調査には調査終了後に入口を爆破する要因として盗賊ギルドの構成員も同行すると聞かされた。

一通り確認すべきことをエゴンから聞いた一行は、
翌朝の調査に備えて宿に一泊した。

調査開始

翌朝、先陣を切る槍は依頼人のエゴンと爆破要員のハイムと合流した。

一行がハイムに案内されて現場の洞窟に向かう道中、
エゴンは二度目のゴブリン退治に参加した冒険者が地図を描いていたことを思い出し、地図を持っていたハイムが先陣を切る槍に見せてくれた。

洞窟の地図

ハイムの説明によると、地図右下に洞窟の入口があり、
中央上寄りの塗りつぶされた円は大穴を表しているらしい。
さらに洞窟内部は岩盤の起伏が激しく、そこらじゅうに穴が開いているとも教えてくれた。

道中狼の群れに襲われるアクシデントがあったがなんとか退け、
一行は今回の現場となる洞窟の入口前に辿り着いた。

カルロ:見張りをつけないなんて不用心な群れだなぁ。
テーオバルト:でもその方が、俺達にとっちゃ好都合だろ? さっさと中に入ってゴブリン退治しようぜ。

洞窟内部に進入

洞窟に入ってみると、中は静まり返っている。

先頭に立つハイムが「足元が悪いから慎重に進むように」と注意を呼び掛けるほど、地面の起伏が激しい。

ブランシュ:こんなに狭くて足場が悪い場所では槍が使いづらいですね。
サブウェポンとして剣を持ってきて正解でした。

道なりに進み、最初の曲がり角を曲がった先で一行はゴブリンの姿を捉えた。
ゴブリンはすぐに奥へと走り去ったので、ハイムは待ち伏せする気かも知れないと警戒を強める。


最初の分かれ道の前まで来た。
地図によると右の道が奥に続いており、左の道はすぐ行き止まりになっている。

ブランシュ:もしかしたら行き止まりに何か手がかりがあるかもしれませんね。先に左の道を調べてみましょう。

行き止まりの場所は、天井から壁伝いに水が流れている。
それ以外に気になるものがないので来た道を引き返そうとすると、松明の灯りに驚いたコウモリの群れが襲い掛かってきた!

アルフォンス:小さいうえに飛び回って攻撃が中てにくいのが厄介な敵ですね。
ですが幸いなことに、こちらには確実に命中する攻撃手段があります。
ブランシュ:それでも先生の魔法の矢に頼ってばかりはいられません!
本命の敵がまだこの洞窟内部にいますから。

魔法の矢とフェイントを有効活用しつつ、コウモリの群れを退けた。

一行は分かれ道まで戻り、地図を頼りに洞窟の奥を目指す。

不出来な光石

狭い通路を抜けた先にある開けた空間で、
真新しい木箱を発見した。

ジャーダ:なんだこりゃ? 今棲みついてる連中が持ち込んだもんか?
カルロ:状態からして、そんな感じがするね。
ジャーダ:置いてある場所からして、大したもんは入ってなさそうだけど調べてみっか。
……鍵も罠もねぇな。開けるぞ。

ジャーダが木箱を開けようとすると、依頼人のエゴンが待ったをかける。

テーオバルト:そういや昨日はそんな話はしなかったな。

洞窟内で見つけた宝の取り決めが無事決まるのを見届けると、
ジャーダが木箱を開けた。

中身は小さな赤い宝石。
ハイムの見立てによるとカーネリアンで、大した価値はなさそうだが、
エゴンが宝石に微弱な魔力が込められていることに気づいた。

アルフォンス:魔力が込められているとなると、マジックアイテムそのものか、マジックアイテムの一部かもしれませんね。
エゴンさん、この宝石について何か判りましたか?

アルフォンス:だった……ということは、
今は故障してマジックアイテムとして使い物にならないのですか。
ジャーダ:ちぇっ。こんな鍵も罠もねぇ木箱から宝石が見つかったからラッキーだと思ったのに、
宝石としての価値も大したことねぇし壊れたマジックアイテムかよ。

思わぬ掘り出し物を得られたかと思いきや、その正体が壊れたマジックアイテムだと判ってがっかりしたジャーダを宥めながら、
一行はまた洞窟最奥部を目指して歩き出した。


しばらく道なりに歩いていると、二つ目の分かれ道に行き着いた。
左は細い上り坂で行き止まり、右は道幅が広く勾配がほとんどない。

アルフォンス:地図によれば、右の道に進んだ先に大穴があるようですね。
リラ:何かあるとしたら、大穴にありそうな気がするけど……。
カルロ:ブランシュ、今回もまた行き止まりを先に調べてみる?
ブランシュ:ええ、調べてみましょう。

一行は狭い上り坂を先に調べてみることにした。

上り坂の先

左の上り坂は進むにつれて傾斜がきつくなっていった。
すぐに、両手を地面に着かなければ先に進めなくなるほどに。

カルロ:こんな所でゴブリンに襲われたら一溜まりもないね。
テーオバルト:そうだな。さっさと上り切っちまおうぜ。
……リラもちゃんとついて来てるようだな。岩がごつごつしてやがるから、手を切らないように気をつけろよ。

しばらく急な上り坂を進んでいると、行く手に白光が見えた。
上り切った先にはぽっかりと穴が開いており、外に通じているようだ。

ブランシュ:外に出てみましょう!
アルフォンス:そうですね。もしかしたらゴブリンがここから洞窟に出入りした痕跡が見つかるかもしれませんし。

一行はゴブリンが出入りした痕跡を見つけられることを期待して、洞窟の外に出てみた。

外に出るとエゴンは実際の地形と地図と見比べながら、
「しかし、この道は地図によると行き止まりなんだけどな」と呟いていた。
二度目のゴブリン退治と今回のゴブリン退治の間に、洞窟の地形が変化するような何かが起きたのだろうか?

一行がそれぞれゴブリンが出入りした痕跡を探していると、
ジャーダは何者かの気配を感じ取った。
明らかにその気配が自分達に敵意を向けているので、ジャーダは「敵が近くにいるぞ!」と得物に手を伸ばしながら叫ぶ。
それと同時に、茂みに隠れていた敵――ゴブリンの群れが飛び出してきた!

テーオバルト:ホブゴブリンもいやがるのか。
アルフォンス:8対5でこちらが数で勝っているとはいえ、油断は禁物です!
確実に敵の手数を減らしていきましょう。

ブランシュ:残るはホブゴブリンだけになりましたね。
それにしてもあのホブゴブリン、巧妙に私達の攻撃を躱していきますね。
アルフォンス:それだけ戦い慣れした個体なのでしょう。
ジャーダ:あーうぜぇ! 図体デカいくせにちょこまかとあたしらの攻撃を躱しやがって! 次の一撃で仕留めてやらぁ!

宣言通り、ジャーダがホブゴブリンにとどめを刺して決着がついた。

テーオバルト:俺達は前にシャーマンが率いる群れを退治したことがあるけどよ、あの時の群れは……
カルロ:ワインでベロンベロンに酔っぱらってたよね。
アルフォンス:いつぞやの酔いどれゴブリンの群れを退治した時よりも苦戦する可能性は充分あります。用心して進みましょう。

大穴を目指して

挟撃を仕掛けようと企んでいたゴブリンの部隊を退けた一行は、分かれ道まで戻って大穴に続く幅広い道へと歩みを進める。

奥へ進むほど道幅が広がっていく。
今まで通った道は地面の起伏が激しく穴だらけで、一歩進むために足の置き場を考えなければならなかったが、
この道は平坦で歩きやすい地形だった。

そんな道を進んでいると、奥にゴブリンの群れが待ち構えていた!


ブランシュ:エゴンさんの見立て通り、シャーマンがいますね!
アルフォンス:最優先でシャーマンを倒しましょう。眠りの雲を使われると面倒ですから。

アルフォンス:これで一番厄介な敵を無力化できましたね。
ですがリーダー格が倒れたというのに、敵はまだ戦う気ですか。
ブランシュ:抵抗するなら向こうが諦めるか全滅するまでこちらも戦うまでです!
テーオバルト:そうだなブランシュ。……さぁゴブリンども! 今すぐ逃げなかったことを後悔させてやるぜ!

ブランシュ:あともう一息で決着がつきそうですね!
皆さん、最後まで油断せずに戦いましょう!

最後はリラが放った矢の一撃で決着がついた。

全員軽傷で済んだが、大穴を調べる前に簡単な治療を施した。


地図を見ると、大穴がある場所より手前に狭い脇道があり、
行き止まりになっている。

テーオバルト:もう調べられる場所は大穴と左の脇道だけになっちまったな。どっちを先に調べる?
ブランシュ:大穴を調べてみましょう。

一行はたいまつで前方を照らしながら大穴に近づいた。

最奥部の大穴

大穴に落ちないように慎重に、一行は大穴の縁まで近づいた。

カルロ:うわぁ、底が見えないほど深い。こんな所に落ちたら一溜まりもないよ。
ブランシュ:どこかに、安全に大穴の底に下りられるルートはあるでしょうか? ……あら、あんな所に木の棚が。

ブランシュは大穴の脇に粗末な作りの木の棚があることに気づく。
棚に近づいて見ると、ゴブリンが作ったものとおぼしきガラクタが並べられている。
棚に並んだガラクタを見た依頼人のエゴンは、
「ゴブリンが彫刻をするとはな!」と石製の人形とおぼしきものを手に取りながら感嘆の声を漏らす。

魔物の生態を研究するエゴンにとっては大きな収穫が得られたようだが、
大穴の下に下りられそうなルートが見つからなかったので、一行は脇道の前まで引き返した。

最後の脇道

ブランシュ:調べられる場所は3つ目の脇道だけですね。
今までゴブリンが寄り付く原因になりそうな怪しいものは何もなかったので、あるとしたらこの脇道の奥でしょうか?

一行が狭い脇道に進むと、ハイムが何かに気づいた。

テーオバルト:おいおい、たいまつなしで先に進んで大丈夫か?

テーオバルトの心配をよそに、
ハイムはたいまつの灯りがかろうじて届く場所で地面に手を着け、何かを調べている。
しばらくするとハイムは納得したと言いたげな表情を浮かべて戻ってきた。

ハイムが言うには、脇道の奥は土から油が染み出ているので、
たいまつを持って先に進めないとのことだ。
先に進もうと思ったら、火を使わない灯りが必要だ。

アルフォンス:……火を使わない灯りですか。
それならちょうどいい術がありますね。
ブランシュ:あっ、あの術ですね!

アルフォンスは魔法の灯火を唱えた。


アルフォンスが魔法の灯火をアレトゥーザで教わっていたおかげで、油が滲む脇道を進めるようになった。

奥まで進んでみると、二つの木箱が置かれていた。

ジャーダ:まーた木箱だな。今度こそお宝出てこいよー!
……どっちの箱も鍵も罠もねぇぞ。
また中身が役立たずのガラクタじゃねぇだろうな?

鍵も罠もないとわかり、ジャーダは中身に期待が持てないまま一つずつ木箱を開けた。
左の木箱には金貨。466sp相当の価値があるものだった。
右の木箱には石板。そこに刻まれたものは……

テーオバルト:丸い物の方を向きながら洞窟に入っていくゴブリンの図?
なんかよくわかんねぇけど、これで調べられる場所は全部調べたな。
ブランシュ:それでは、最後に二つの入口を塞いで依頼完了ですね!

一行が洞窟から脱出したその後、
ハイムが用意した爆弾で二つの洞窟の出入り口は塞がれた。

ゴブリンが集まる理由

ホスタに戻る道中、
「結局あの洞窟にゴブリンが集まる理由って何だったんだろうな?」とエゴンが問いかけてきた。

テーオバルト:聖地?
カルロ:そう、聖地だよ。
僕はあの石板を見た時、
ゴブリン達はあの洞窟……洞窟の奥にある大穴を奉っていたんじゃないか? って思ったんだ。
エゴン:ということは、洞窟に集まるゴブリン達は宗教を持っていたと?
カルロ:大穴の近くにあった石人形やガラクタはゴブリン達の大穴信仰の祭具なのかもしれないし、
石板に彫られた絵は儀式の様子を表したものに見えたんだ。
アルフォンス:確かにあれは宗教儀式か何かが行われている様子に見えますね。
聖北教会が成立する以前、人間達は太陽をはじめとした自然を神として信仰していました。
……であれば、暗がりを好むゴブリンが闇を信仰の対象として見ていた可能性も考えられますね。
ブランシュ:信仰の対象がそこにあったから、何度人間に攻め込まれても、ゴブリン達はあの洞窟に固執した。ということですか?
カルロ:まぁ、あくまでもこれは僕の推測だけどね。
ジャーダ:(ゴブリンの信仰なんて、あたしにとっちゃ知ったこっちゃねぇよ……。あー、それにしても早く報酬もらって美味い酒が飲みてぇなー)

ホスタに帰り先陣を切る槍は、エゴンから報酬として400sp受け取った。
さらに洞窟内で手に入れた不出来な光石を10spで売却した。

収支報告

カルロ:今回は何度追い払ってもすぐにゴブリンが集まってくる洞窟でゴブリン退治と、
ゴブリンが集まる原因の調査をしたよ。
報酬は調査前夜に渡された前金の200spと、
成功報酬の400spの合わせて600sp。
洞窟の最奥部にあった木箱から446sp相当の金貨も見つかったね。
それから、洞窟で見つけた壊れたマジックアイテムは10spで売れたよ。

収入:1056sp
現在の所持金:2036sp

カルロ:それにしても、ゴブリンにも宗教の概念があることに驚いたよ。
ジャーダはどうでもよさそうな反応してたけど……。


いいなと思ったら応援しよう!