【カードワースリプレイ】先陣を切る槍 第1話 ジェーンと一緒
この記事はじぇんつ様制作のシナリオ〈ジェーンと一緒〉のリプレイです。
配布先はこちら(寝る前サクっとカードワースVol.3収録シナリオ)↓
ジェーンとの出会い
リューン近郊の宿場町にある宿、猫の王様亭。
そこで新たな冒険者パーティ――先陣を切る槍が結成された。
お家再興を目指す没落貴族の娘ブランシュが率いる先陣を切る槍は、
早速掲示板の前に集まって初めて請ける依頼を吟味中。
その中から、聖海教徒のカルロが怪しい文面の貼り紙を見つけた。
カルロ:なんだろうこの依頼文、”誰にでもできる簡単な仕事”とはずいぶんと曖昧な文面だなぁ。
アルフォンス:ふむふむ……我々を騙して何か違法なビジネスに加担させようと企んでいるのでは? と勘繰られても仕方ないほど怪しい文面ですね。
亭主、このあからさまに不審な依頼を出したジェーンとはどのような人物かご存じですかな?
ブランシュ:またろくでもない事……その方、過去にも似たような依頼を出したことがあるのですか?
ジャーダ:一攫千金なぁ……。そんな機会に恵まれたら試してみたいじゃねぇかよ。
カルロ:だけど親父さんの口ぶりじゃ、ことごとく失敗に終わったみたいだね。他の依頼を探したほうがいいんじゃ……。
アルフォンス:カルロの意見に賛成します。
どうやら亭主も、彼女と関わることを勧めていないようですし。
そんな会話を繰り広げているところに、
赤い帽子を被った若い女が慌てた様子で猫の王様亭に駆け込んできた。
テーオバルト:な、なんだあの女? やけに慌ててんな。
カルロ:……匿って? あの人、誰かに追われてここに逃げ込んできたの?
リラ:死ぬかと思った……? そんなこと言うほど危険な相手に……?
ジャーダ:ふーん、あの赤帽子の女が噂のジェーンねぇ。
ブランシュ:と、盗賊ギルドを騙そうとしたんですか!?
ジャーダ:だけどすぐ偽物だと見破られるだなんて間抜けだねぇ。
なーんか大儲けできそうな仕事がどうとか言ってるけど、さすがのあたしもアレと関わって大丈夫か? って心配になるよ。
……まぁ、うまく立ち回れば稼げるチャンスだと思って、話だけでも訊いてみるか。無理そうなら断りゃいいんだ。
アルフォンス:ジャーダ、君も彼女のことを信用して大丈夫な相手かどうか心配しているのに、正気ですか?
アルフォンスにドン引きされながら、
ジャーダはジェーンに依頼の詳しい内容を訊こうと声をかけた。
先陣を切る槍は、ジェーンに宿から連れ出され、
彼らを見送る親父さんは「どうなっても知らんぞ」とため息を漏らした。
依頼の話
宿から連れ出された先陣を切る槍が行き着いた場所は、
リューノの町なる人気のない場所だった。
アルフォンス:(人気のない場所で依頼の話……部外者に聞かれて不都合な情報が含まれていると考えていいでしょうが、”違法性がある内容かどうか”をしっかり見極める必要がありますね)
ジェーンから聞かされた依頼内容を要約すると、
”ダイタイシヌ病”なる致死性が高い病気の治療薬が開発されたので、
その材料となる薬草の”ワリトイイネ”の需要が近いうちに高騰することが予想される。
そうなる前にまとまった量のワリトイイネを採集して大儲けしたいが、
ワリトイイネの生息地には魔物が生息しているので、ジェーンが単独で現場に行くのは心許ないから協力者を募集している。
とのことだった。
ジャーダ:もともとタダも同然の薬草が、薬の材料になるなんてすげー話だな!
これは乗るなら今のうちじゃね?
アルフォンス:盗賊ギルドを騙そうとした件があるので、実際に詳細を訊く違法な案件ではないかと勘繰っていましたが、その心配はなさそうですね。
ブランシュ様、この依頼を引き受けますか?
ブランシュ:引き受けましょう。今後のために活動資金も欲しいですし、薬の安定供給に貢献できるというなら。
こうして、先陣を切る槍とジェーンは、
早速ワリトイイネを求めて魔物が棲む森へ向かうことになった。
ワリトイイネを求めて
生息している魔物も大して強い者がいないことと、
近隣の村人が寄り付かない――ライバルがいないことを知ってジャーダはさらにやる気が増した。
ブランシュ:道が二手に分かれていますね。迷っても仕方ないし、とりあえず直進してみましょう。
何もなければここまで引き返せばいいのですから。
リラ:マッピングも……忘れないでね。
森の入り口から直進すると、薬師の老人と出会った。
ジャーダ:あのじいさん、魔物がいるせいで諦めて帰っちまったな。
……ん? これは……?
ジャーダ:おーっ、早速ワリトイイネはっーけん!
奥に進んだらもっとありそうだな!
ジャーダはワリトイイネを見つけて上機嫌になり、
さらに奥へと道なりに進んでいく。
すると、ゴブリンの群れに出くわした!
ブランシュ:敵の数は3体、大して私達は7人います。
よほど下手な立ち回り方さえしなければ、苦戦することはありませんね!
先陣を切る槍とジェーンは、危なげなくゴブリンを退けた。
逃げ出すゴブリンを見送り、ワリトイイネ探しを続けることに。
しばらく歩いていると、ワリトイイネの群生地を見つけた。
ところが、その目の前にはコボルトの群れ。
ジェーンがコボルトの群れの前に飛び出し、戦闘に。
コボルト相手にも危なげなく勝利……かと思いきや……
追いつめられたコボルトが遠吠えで仲間を呼び、7人の前に続々とコボルト達が集まってくる!
テーオバルト:なんて数だ! 10や20どころじゃねぇぞ!
アルフォンス:さすがにこの数を7人で捌ききるのは厳しいですね。
ブランシュ様、ここは一度撤退しましょう。
アルフォンスがブランシュに撤退を勧めたその時、
周囲の草むらからカサカサと草がこすれる音と、あちこちからコボルトの鳴き声が聞こえてくることに気づいた。
アルフォンス:こんなに大規模なコボルトの群れと遭遇することになるとは思いもしませんでしたね。
この状況では、撤退するのも至難の業でしょう……。
なんとか隙を突いて逃げようと試みる先陣を切る槍とジェーン。
ところがそう簡単に突破できるはずもなく、
あっけなく囲まれて袋叩きに遭い、ブランシュ達は意識を失った。
何者かが呼びかける声に気づき、ブランシュ達は意識を取り戻した。
アルフォンス:(鳴き声や草むらを利用して、実際の規模よりも群れが大規模なものだと敵に思い込ませるとは……このコボルトの群れ、なかなかの策士ですね)
リーダー格のコボルトは人語が通じるようだった。
話し合いで解決を図れる。そう判断してジェーンがとった行動は……。
ブランシュ:(コボルト相手に命乞いですか!?)
カルロ:(それに農民って……そんなバレバレな嘘が通用するほど、この群れが馬鹿だとは思えないけど大丈夫……?)
ジェーンはいかにも都会育ちの人間が想像した田舎者のような言葉遣いで、
自分達は母親の病気を治すための薬草を採りに来ただけだと言い張り、
コボルトの群れ相手に土下座までしてみせた。
その様子を見た群れのリーダーは、ジェーンに「戦う意思がないのか?」と問いかける。
ジェーンはリーダーの問いかけに肯定して、先陣を切る槍の面々にも土下座するように促してきた。
ブランシュ:(冗談はよしてください! いくら実家が没落したと言えど、コボルト相手に頭を下げるほど落ちぶれてはいません!)
カルロ:……仕方ない。ここはジェーンに倣って土下座しよう。
ブランシュ:カルロさん、正気ですか!?
カルロ:そうだよ。コボルト相手に土下座だなんて癪だろうけど、
こんな所で意地張って死ぬほうが馬鹿らしいよ。
カルロはジェーンに後押しされて、嫌がるブランシュをなんとか言いくるめた。
ブランシュ:どうか命ばかりはお助けをー。
(うぅ、本当にコボルト相手に土下座するだなんて、なんという屈辱……)
リーダーが穏健派だったおかげで、命乞い作戦はなんとかうまくいった。
ところが、青い牙のコボルト団はまだ先陣を切る槍とジェーンを解放してくれないようだ。
ブランシュ:(役に立ってもらうとは、どういう意味でしょうか……?)
ブランシュ:(本物の冒険者に冒険者のフリをしろとは……)
コボルトの群れとゴブリンの群れの交渉
一通りコボルトのリーダーから事情を訊き終えてしばらくすると、
交渉相手のゴブリンの群れの姿が見えてきた。
アルフォンス:(コボルトリーダーから聞いた通り、ゴブリンロードは明らかに我々の姿を見て狼狽えましたね。
……あとは肝心の交渉事がどうなるか、見守りましょうか)
コボルトリーダーとゴブリンロードは互いの群れの縄張りについて話し合いを始めるが、議論は膠着状態に陥った。
言い争う両者の主張を聞いてあることに気づいたリラが恐る恐る口を開く。
アルフォンス:確かに、森全体に対してコボルトの縄張りもゴブリンの縄張りも狭いですね。何か、彼らよりも強大な力を持った第三勢力がいるのでしょうか?
アルフォンス:やはりいましたか。第三勢力が。
テーオバルト:とんでもなく強い魔物がいて、そいつにコボルトもゴブリンも縄張りを奪われてピンチなんだな。
……だったら戦おう! そいつと!
リラ:た、戦う? テーオ、私達に勝ち目があるかどうかわからないのに?
ブランシュ:私も助太刀いたしましょう!
人間、コボルト、ゴブリン。力を合わせれば相手が誰であれ遅れはとらないでしょう。
リラ:ブランシュもやる気満々だよぉ……。
成り行きでコボルトとゴブリンと共闘して、森を荒らす”あいつ”に立ち向かうことになった先陣を切る槍とジェーン。
ブランシュ:何をおっしゃいますか。
私達冒険者は困っている人の味方をするものです! ……あっ!
アルフォンス:ブランシュ様……!
ジャーダ:馬鹿! 今までの演技が台無しだろうが!
カルロ:(これはマズい……! 今からでもみんなで逃げられないかな……?)
カルロ:(た、助かった……の……?)
共闘
ブランシュがボロを出して青い牙のコボルト団に冒険者だとバレるアクシデントはあったが、
先陣を切る槍とジェーン、青い牙のコボルト団、ゴブリンの群れはそれぞれ戦いの準備を整えて、
討伐対象となる”あいつ”の巣にやって来た。
”あいつ”とは……
ブランシュ:今更弱音を吐いていられません!
覚悟を決めて戦いに臨みましょう!
こうして、人間、コボルト、ゴブリンVSミノタウロスの戦いが幕を開けた。
最初にコボルト達とゴブリン達の第一陣がミノタウロスを囲んで攻撃を仕掛ける。
一見すると格上相手に善戦しているように見えるが、しばらくすると逃げ出す者がちらほらと現れ始めた。
ブランシュ:私達も参りましょう!
今のうちに攻めれば勝ち目は充分あります!
アルフォンス:敵は一体だけ、とはいえ我々にとっては格上。
考えなしに攻めても勝てる相手ではありません。攻撃を中てるだけでも苦労するでしょう。
フェイントで隙を作って攻める作戦が有効かと。
ジャーダ:フェイント? そりゃあたしの得意技だよ!
カルロ:うぅ、ミノタウロスの攻撃……なかなか強力だよ。
ブランシュ:カルロさんは2発目を喰らったら倒れそうですね。
カルロさんは無理しないで身を守ることに専念してくださいまし!
リラさんは隙を見て回復をお願いします!
機動力が高いジャーダがフェイントを仕掛け、他の面々が攻撃を叩きこむ作戦で攻める先陣を切る槍とジェーン。
そしてついに……
ブランシュの槍の一撃がミノタウロスの急所を的確に突き、
勝ち目がないと思われた戦いに勝利した!
ミノタウロス討伐を祝う宴が終わり、
ついに青い牙のコボルト団と別れる時が来た。
コボルトリーダーは別れ際に、コボルト切りなる技を教えてくれた。
実体がない敵にも有効な斬撃系の攻撃技だ。
猫の王様亭に帰還
先陣を切る槍とジェーンは、
出迎えてくれた親父さんに森での奇妙な体験を語った。
ところが親父さんは冗談だと思ったらしく、
いくら本当のことだと訴えても、親父さんは信じなかった。
ブランシュ:ワリト……イイノカ……?
じゃぁ、私達は一体なんのためにコボルトに頭を下げて……(フラッ)
アルフォンス:ブランシュ様! お気をお確かにっ!!
ブランシュは薄れゆく意識の中でこう思った。
ジェーン……赦すまじ!
結局のところ、ジェーンの勘違いのせいで1spも稼げなかった先陣を切る槍だった。
収支報告
カルロ:まさかパーティ結成してからの初仕事で報酬ゼロになるとはなぁ。
……でも、ワリトイイネには50spの売値がついたよ。
収入:50sp
所持金:50sp
カルロ:それから、コボルトリーダーからコボルト切りを教えてもらえたね。
性能はリューンの闘技場で教えてもらえる居合斬りと同程度なんだって。
テーオバルトが使うことになったよ。
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