【吹奏楽コンクール2024】注目の選曲:海外オリジナル作品編
楽曲解説のnoteが最近続いてたので、たまには違う内容を書こうと思い、今回はコンクールに関連したnoteを投稿します。
題して【吹奏楽コンクール2024】注目の選曲:海外オリジナル作品編です。
■どんな内容のnoteなの?
・今年のコンクールで個人的に気になった選曲を紹介していきます
"個人的に気になった"の中身については「往年の名曲」から「人気作曲家の新作」、さらには「この作曲家/楽曲はどこから見つけてきたんだ…?」と思った珍曲(?)まで様々です。
私が普段使いしている音楽サブスクアプリがAppleMusicなので、楽曲の一言紹介と合わせて極力AppleMusicの該当曲リンクを記載しています。無ければYouTubeリンクを記載。どちらも無かったらすみません。
・ピックアップ対象は「大編成部門(A部門)」かつ「支部大会(全国大会の1つ前の大会)に出場した団体」の選曲
後ほど紹介する参考サイトでまとまっている情報が上記の情報のため。小・中編成(B部門など)でも面白い選曲をしている団体はあると思うのですが、一旦今回紹介するのは上記の基準とします。
※すでに支部大会が終了している地域もありますがご了承ください。
・今回紹介するのは「海外作曲家による吹奏楽オリジナル作品」
厳密に区別するならば「ブラスバンド向けに当初作曲した楽曲を作曲者自身が吹奏楽編成に作り直した」という楽曲は今回の分類で紹介すべきでは無いのかもしれませんが、その辺りはあまり区別せず紹介するようにしています。
個人的には"編曲作品"という括りは「他人が書いた別編成(オーケストラ編成、室内楽編成…etc.)の楽曲を吹奏楽用に編曲したもの」というイメージなので、元がブラスバンド向け楽曲であっても作曲家本人が吹奏楽編成に作り直しているなら吹奏楽オリジナルって考えて良いのでは?と思い、こちらでまとめて紹介しています。
気が向いたら邦人オリジナル作品編、編曲作品編なども書くかもしれないです。
・参考サイト
・吹奏楽 tbt
・吹奏楽コンクールデータベース
【吹奏楽コンクール2024】注目の選曲:海外オリジナル作品編
ホット・アズ・ブルー・ブレイゼズ(R.Wスミス)
支部大会での演奏団体:ウィンドアンサンブル ドゥ・ノール(北海道)
『ホット・アズ・ブルー・ブレイゼズ(Hot As Blue Blazes)』は邦題だと「めちゃめちゃに熱い!」「むやみに熱く!」などのタイトルで紹介されているR.W.スミスの2023年の新作。
アルト・サクソフォンのどソロで始まる冒頭、ジャズ・スタイルの中間部などが印象的な楽曲。
上級バンド向けとのことですが、R.W.スミス作品としては比較的難易度高めといったイメージで中学生・高校生のバンドでも比較的挑戦できる難易度のように思いました。
交響曲第5番「さくら」(A.リード)
支部大会での演奏団体:上磯吹奏楽団(北海道)
アルフレッド・リードが1995年に作曲した最後の交響曲。洗足学園音楽大学の委嘱作品で、全3楽章構成21分程度の楽曲。
リード作品としては演奏頻度がかなり少ない作品であるものの、今年行われた東京佼成ウインドオーケストラの第163回定期演奏会で取り上げられるなど、再度注目の流れが来ているのでしょうか?
ボヤージュ・イニシアチク(A.コスミッキ)
支部大会での演奏団体:秋田市立山王中(東北)
アレクサンドル・コスミッキの『ボヤージュ・イニシアチク(Voyage initiatique、ボヤージュ・イニシアチブとしている場合あり)』は邦題だと『旅の始まり』というタイトル。
2020年作曲の比較的新しい楽曲で、演奏時間は15分程度。フリューゲル・ホルンの柔らかい音色で始まる冒頭が楽しい船旅を予感させるような楽曲です。
薄明の輝き(A.コスミッキ)
支部大会での演奏団体:大阪市立堀江中(関西)
同じくA・コスミッキの『薄明の輝き(Nitescence Crepusculaire)』です。Adams Musical Instrumentsの50周年記念委嘱作品で2022年に作曲された作品です。
17分程度の楽曲でフルート・グロッケンによって始まる幻想的な第1主題と、ユーフォニアム・クラリネットなどが演奏する激しい第2主題が印象的。
フラタニティー(T.ドゥルルイエル)
支部大会での演奏団体:名取交響吹奏楽団(東北)、福岡工業大学吹奏楽団(九州)
※上記の音源は吹奏楽版ではなくブラスバンド版です。
ティエリー・ドゥルルイエルはフランスの作曲家です。1983年生まれということで、作曲家としては若手作曲家の部類に入るかと思います。
『フラタニティー(Fraternity)』は2016年のヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップスの委嘱作品で、邦題に直すと『友愛』という意味になります。
1906年に起きた石炭採掘の歴史上の大事故であるクリエール炭鉱事故を題材にした作品で、吹奏楽版はノール=パ・ド・カレーの鉱業盆地のユネスコ世界遺産登録10周年(2022年)を記念して委嘱された作品で、2023年に出版されたばかりの新しい作品です。
ペーガン・ダンス(J.バーンズ)
支部大会での演奏団体:福井市足羽中(北陸)
ジェイムズ・バーンズは吹奏楽コンクールだと交響曲第3番の印象がとても強いですが、交響曲第3番が作曲された年より少し前の1991年に『ペーガン・ダンス(Pagan Dances)』を作曲しています。
邦題のタイトルだと『異教徒の踊り』といったタイトルでしょうか。「儀式(Ritual)」「神秘(Mystics)」「剣の達人(The Master of the Sword)」という3楽章構成・15分程度の楽曲で、不気味さと神秘的な雰囲気を併せ持つ独特な楽曲です。
ヴィクトリー(R.ガランテ)
支部大会での演奏団体:金沢市立長田中(北陸)
アメリカの作曲家、ロサーノ・ガランテ(もしくはロッサーノ・ギャランテ)の『ヴィクトリー(Victory)』は2017年にLake Braddock High Schoolからの委嘱で作曲された楽曲です。
ガランテ作品の特徴である輝かしく伸びやかな作風はこの作品でも健在。7分程度の短く分かりやすい楽曲なので、中学生などの学生バンドにピッタリな楽曲かと思います。
ドープ(K.コプリー)
支部大会での演奏団体:武生商工高(北陸)
※2024/9/5更新:上記AppleMusicで聴けなくなってしまったのでYouTubeの音源を加えました↓
カタジ・コプリー(Katahj Copley、"カタジ・コープレイ"と記載しているページもあります)は、アメリカのジョージア州出身の作曲家です。
失礼ながら作曲家も作品も知らなかったので個人的「どこから見つけてきたんだ」枠です。笑
『ドープ(DOPE)』は2022年作曲の比較的新しい作品。18分程度の楽曲で、コプリーが作曲当時興味のあったラップ、R&B、ジャズ、ソウルなどの要素をひとまとめにしたような作品とのことです。
オマール・トーマスのもとで作曲を学んでいたため、どことなく作風も似ています。オマール・トーマスの『カム・サンデイ』が好きならこの作品もハマるかと思います。
生きる歓び(R.ブトリ)
支部大会での演奏団体:京都橘高(関西)
ロジェ・ブトリ(Roger Boutry、"ロジェ・ブートリー"と記載しているページもあります)は、1970年代〜1990年代後半までギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の指揮者も務めたフランスの作曲家です。
『生きる歓び(原題も"Ikiru Yorokobi")』は創価学会関西吹奏楽団の委嘱で1987年に作曲された9分程度の楽曲。非常に演奏機会の少ない作品で、コンクールの支部大会以上で演奏されるのは21世紀に入ってから初めてだと思います。
神話とモンスター(P.スパーク)
支部大会での演奏団体:東海大学付属大阪仰星高(関西)
フィリップ・スパークの『神話とモンスター(Of Myths and Monsters、"神話と幻獣"と表記しているサイトもあります)』は、2012年に作曲された21分程度の楽曲です。
演奏機会は少ないものの、コンクールでも時折演奏されています。詳細な解説は以下で別途noteを書いていますので、良かったら見てください。
ディヴェルティメント(O.ヴェスピ)
支部大会での演奏団体:立命館大学(関西)
オリヴァー・ヴェスピ(Oliver Waespi)は以前コンクールなどで『アウディヴィ・メディア・ノクテ(Audivi Media Nocte)』が取り上げられている時期がありましたが、ついに別の作品もコンクールの全国大会に登場します。
『ディヴェルティメント』は「プレリュード」「メディテーション(瞑想)」「プロセッション」「ホーダウン」の4楽章構成で、ジャズと吹奏楽を融合した演奏時間15分程度の作品です。
サンタフェ・サガ(M.グールド)
支部大会での演奏団体:大津シンフォニックバンド(関西)
最近ではすっかり演奏されなくなってしまいましたが、『狂詩曲《ジェリコ》』で有名なアメリカの作曲家、モートン・グールド(Morton Gould)のもう1つの人気作『サンタフェ・サガ(Santa Fe Saga)』が久しぶりに全国大会に登場します。
1955年に作曲された『サンタフェ・サガ』は「リオ・グランデ」「ラウンド・アップ」「ワゴン・トレイン」「フィエスタ」の4つの部分が続けて演奏される10分程度の楽曲で、全国大会にて演奏されるのはなんと31年振りです。
フライング・ジュエルズ(J.M.デイヴィッド)
支部大会での演奏団体:玉野ウインドオーケストラ(中国)、日本経済大学吹奏楽部(九州)
近年、プロ・アマ問わず盛んに演奏されている『交響曲第1番「悪魔の聖書」』の作曲家、J.M.デイヴィッドが2021年に作曲した『フライング・ジュエルズ(Flying Jewels)』です。
10分程度の楽曲で、アメリカの作家ブライアン・ドイル(1956-2017)のエッセイ「Joyas Voladoras」に影響を受けた作品とのこと。
カワセミと同じような見た目の美しさを持つ小さな鳥「ハチドリ」をイメージしたキラキラと輝かしい音が印象的な楽曲です。
ドラムセットとコンサートバンドのための協奏曲(L.ニーク)
支部大会での演奏団体:香川高等専門学校詫間キャンパス(四国)
ラリー・ニーク(Larry Neeck)が2005年に作曲した『ドラムセットとコンサートバンドのための協奏曲(Concerto for Drum Set and Concert Band)』は6分半程度のドラム・ソロをフィーチャーした作品です。
ロック、ジャズ・ワルツ、スウィングの3部分が続けて演奏されるコンサート・ピースの作品なので、この選曲で支部大会まで進んだことに単純に驚きました。
ドラムミュージック~打楽器とウインドアンサンブルのための協奏曲(J.マッキー)
支部大会での演奏団体:川金アンサンブルリベルテ吹奏楽団(西関東)
ジョン・マッキーが2011年に作曲した『ドラムミュージック~打楽器とウインドアンサンブルのための協奏曲(Drum Music: Concerto for Percussion)』は3楽章構成、18分程度のドラム・ソロをフィーチャーした作品です。
ソロパーカッションと打楽器パート全体をフィーチャーした楽曲で、3楽章のマッキー作品らしい激しい部分はもちろん、1・2楽章の鍵盤楽器の美しい音色も魅力的な作品です。
■最後に
【吹奏楽コンクール2024】注目の選曲:海外オリジナル作品編と題して今年のコンクールで個人的に気になった海外オリジナル作品を15作品ほど紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
せっかく様々な作品を紹介するのにコンクールカットの音源を紹介するのもなぁ…、と思い極力ノーカット収録された音源を各曲の参考音源として添付しましたので、お時間ある時にぜひ聴いてみてください。
往年の名曲を改めて知るきっかけや、新曲・珍曲と出会うきっかけになりましたら幸いです!