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患者さんとクリスマスを過ごす(最終回)

看護師の朝の業務にウォーキングカンファレンスというものがある。

業務が始まり、学生さんが実習で居ますよ〜

だったり

工事が入りますよ

というような全体の申し送りのあと
一緒に勤務するスタッフとナースステーションを出る。

患者さんの病室、ベッドをひとつひとつ、あいさつをしながらみんなで周るのだ。

「失礼します、Aさん!おはようございます。本日担当させていただきます、看護師のかげです!」

一緒にウォーキングカンファレンスにまわるスタッフも「おはようございます」と声をかける

Aさんは眠そうにベットから顔を出して
「はーい、よろしくね」
と声をかける。

「すみません、ちょっと点滴のチェックをさせてください」

点滴台の棒についている輸液ポンプという機械を指差しながらベッドの横に立つ。

「9:10分、Aさん、エルネオパ2号………時間●、積算〜」
と読み上げて点滴がしっかり投与できているか確認する。

「もしここに点滴置くなら配置じゃない方がいいかも」

「そうですね、むしろいま空いてる3ベッドの方がトイレのとき歩きやすいですよね」

と病床環境についてみんなでチェックを行いながら病室をまわる。


「Bさん、今日は13時頃に頭のCTの検査があります、ストレッチャーで、寝たまま行きます」
と患者さんに今日の予定を伝えたりもする。

「Cさん、担当看護師のかげです、よろしくお願いします」

「……」

Cさんは目を閉じて呼吸をするだけ。


「また来ますね」


こうして全部の病室をまわったあと

「なんかある?」
「ないっす」
「じゃあ頑張ろう」
「はぁい」
と解散して、各々受け持ち患者さんの部屋へ向かったり、医師と連絡をとったり、点滴や処置室へ向かう。



「Cさん、失礼しますー!
検温、熱と、血圧と…測らせてください」

体温計を見せながら声をかける

「……」
Cさんは瞼を閉じたまま静かに呼吸をしている。

体温計を脇に挟んで血圧計を腕に巻く。

「今日は12月の24日なんですよ、クリスマスイヴ!」

「昨日よりは寒いんですけど風もないし、晴れてるんですよ」
「あ、血圧測るので腕がきつくなります〜」

「体温は36.8。血圧は128の62です、つまり、OKということです!」

はずしますね〜と言いながら血圧計を外すと
ゴホッゴホッと湿った咳き込みに合わせて身体が、頭が跳ねる。エアマットといって空気で膨らむマットは患者さんの体を柔らかく包んでいる。

「おおお…いい咳、吸引しますね」
モニターの数値を横目に見ながら手袋やゴーグル、エプロンを装着して吸引機に手をかける
「鼻からちょっと取らせてください」
吸引機のつまみをあげるとシューと音が鳴るのを聞いて、吸引チューブの先端を親指で押さえて折り曲げる。
そのままCさんの鼻にチューブを挿入する。
少しするとCさんが咳き込む、そうして指で押さえた吸引チューブを離すと吸引が始まり、シューではなく、痰を吸う、ズルズルという音が聞こえる。

10秒しないうちに吸引チューブを引いて鼻から取り出す。

Cさんは眉間に皺をよせる。やめてよと怒る声が聞こえてきそうだ。

吸引の違和感や痛みの苦しさ
痰がたまって息ができない苦しさ

どれを選択しても苦しいになってしまう

「その後」を考えて選んでいく

「おわりです!苦しかったですね、ご協力ありがとうございます。あと聴診器をあてさせてください、胸の音を聴きます」

聴診器をあてて、呼吸の状態を観察していく。

「ちょっと体勢を整えさせてください、左を向きます」

足を曲げますよと声をかけながら体を横にして背中にクッションを入れる。
病室の窓のカーテンから差し込む光が顔全体を照らした。

「あ、カーテン開けますね。ほらいい天気ですよね」
点滴を確認しながら、あっ、と思い出してカードを取り出す

「Cさん、ご家族の方…これはお孫さんかな?クリスマスカード届いていますよ」

クリスマスのカードにメリークリスマス!と手書きでメッセージが書かれていた。

「ここにおいたらちょうど見えますかね…面会、できるといいんですけどね…」

と声をかけながらカードを枕元に添えておく

「また伺いますね!しつれいします」
と部屋を離れる。




鎮静中や意識障害のあるときこそ、こちらが意識してしっかり声をかける。

クリスマスも関係ない毎日、こうして患者さんに声をかけている。


今日のことを言おうと意識しはじめた頃は、言ったあと
「シーン…」となる感じ…反応がない…自分だけだと思い違和感ですぐに言えなかった。

だんだん胸郭の上がりとかそういう全身の生きてる様子を見て静かだとか無であると思わなくなって自然に言えるようになった。

生きている時間を共有する声かけ。

既に行っている人にとっては当たり前と思うかもしれないけれど、日常会話に難儀する人見知りの自分にとって、挿管や意識障害さまざまな理由で話しかけても返事がこない人に声かけをするのは頑張らないとできないことだった。

言わなくても治療はすすむ。

伝わってないかも。

でも明日、これからも話する。

クリスマスもそうじゃない日も看護師にとって、患者さんにとっても治療や看護を行う、受ける大切な一日だ。


おわりに

アドベントカレンダーは12月24日まで行われます。
つまり、これで、最後です。
読んでくださってありがとうございました。
はじめ、行うにあたって決めていたことがありました。
・看護に関連したことをテーマにする
・1500〜2000文字くらい
・絵を本文に入れない
・楽しくなかったら書かない

これ一番最後がかなりポイントで現時点で(12/24時点)スカスカなんです。

何故かというと体調が悪かったからです…
体調悪い時に楽しくかけるわけないんですよ…。
あとは一応書き溜めていたのですが載せる前に思うことがあって下書きに戻したりもしました。
それでも毎日2000字程度の文章を書くことは僕にとって初めてのことだったのでとても貴重な体験でした。

執筆するのすごく早くなった……。ありがたい。

あとは絵を描くこともそうですが文章を紡ぐのも好きだなと改めて感じました。話をするのも好きですし、たぶん表現することが好きなんだなと思います。
看護はやっぱり苦手というか「難しいなこのやろー」と思うことがまだまだいっぱいあります。でも素敵だなと思うこともたくさんあるので、これからも何かしら、僕が楽しいと思える表現で作っていきたいなと思います。

アドベントカレンダーは体調がよくなったらしっかり24個、マガジンとして完成させていこうと思います。

支援してくださった方、感想くださった方、SNSに紹介してくださったりと本当に嬉しかったです。体調が悪いと自分は未熟…と思って気持ちも滅入るので助かりました。
こんなときに体調崩すとは自己管理が云々…となりますが、しっかり回復するよう努めます。

これからも仕事ではないか(描/書)きものは好きなように気のまま表現していこうと思いますのでよかったらお付き合いくださいませ

メリークリスマス!

看護師のかげ

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