「自衛隊について知ろう!!!」
本人の同意を得ずに、自治体から自衛隊に青年の名簿が当たり前のように提供される昨今。対象者を抱える教職員や保護者、当事者はどのくらい自衛隊について知っているのだろうー。北星学園教職員組合が「自衛隊について知ろう!!!」と講演会を開きました。
北星学園教職員組合は5月25日、フリージャーナリストの布施祐仁さんによる「自衛隊について知ろう!!!」講演会を開き、現役教員や学生らが受講しました。
本間涼子教諭は、「単に安定した収入を得られる職業の1つとして生徒たちに勧めていいのか?!自衛隊について話すことが〝タブー〟という風潮がある中で、自衛隊や若者の将来と向き合えるよう学び合いたい」と語りました。
講師の布施さんは、長年、自衛隊や防衛、安全保障についての取材を続け、自力では大学に通えない貧困層の若者たちをターゲットに、経済的メリットを強調して軍にリクルートするアメリカの社会問題を取り上げ、日本の自衛隊も人ごとではないと警鐘を鳴らす著書「経済的徴兵制」などを出版しています。
冒頭で感心を持つキッカケとなった経緯を紹介した布施さん。10代の頃、沖縄で3人の米兵が起こした12歳の少女への暴行事件。8万人を超える県民大会があり、沖縄の基地負担などについて考えるようにー。
沖縄の負担軽減を口実に北海道への移転計画があり、その過程の中で矢臼別演習場のど真ん中に住む川瀬氾二さん出会い感銘を受けたと紹介しました。
(著書「北の反戦地主:矢臼別演習場のど真ん中で生ききった!川瀬氾二の生涯」)
川瀬宅に泊まった際に、自衛隊の大砲を撃つ演習の音や振動などをリアルに体感。「理屈抜きに戦争で使われる武器の威力を感じた」と振り返りつつ、川瀬さんの生き方から憲法があることの意味などを感じとった感動を語りました。
講演では、戦力の不保持(憲法9条2項)「陸・海・空軍その他の戦力はこれを保持しないー」がある日本に、なぜ自衛隊があるのか?自衛隊が作られた歴史や、2014年安倍政権が憲法解釈で集団的自衛権の行使を容認し、これまでの自衛隊の性格を変えた経過や、現在岸田政権下で進む専守防衛の枠を超えた任務や、基地の強靭化、ミサイル配備や装備が進んでいる実態などを解説しました。
また一方で、自衛隊への志願者が激減し、計画に対し50%に満たない程の採用者数しかいない現実を告発。当初18歳〜26歳だった募集対象者を32歳までに引き上げたにも関わらず、自衛隊が必要としている人数は集まらず、今の自衛隊を維持すことは困難との見方がされていると示しました。
リクルートでは、会社員と比較して家賃や食費が浮くなどの経済的魅力をアピール。学校(教育現場)との連携をはかるため、授業へ自衛隊が参加することや、見学、職業体験などを通じ、将来的に職業選択の1つとして選んでもらうという取り組みが強化されている実態を告発しました。
2011年東日本大震災以降、志願動機として増えている災害派遣は〝従たる任務〟であり、自衛隊の主たる任務は〝防衛〟であると強調。
自衛隊内では、海外派遣を機に〝死生観教育〟が始まり、隊員に遺書を書かせ「命を賭す任務につく軍人としての矜持である」と教えている実態があると告発しました。
自衛隊員は「服務の宣誓」で「危険を顧みず身をもって責務の完遂に努める」"国民の付託"と言うが、果たして国民の意見は国会を通じて反映されているか?と疑問符。
参加した学生は、「ドイツと違いなぜ日本は靖国参拝など旧体制を引きずっているのか」と質問。教員からも、沖縄・南西諸島の要塞化について「軍隊は住民を守らない」と心配する住民の心境に思いを馳せ、「住民よりも米軍を守るための計画なのでは」「なぜ日本はそこまで米国の従属なのか」また、「教え子を人殺しにもしたくないし、殺されてほしくない。生徒を自衛隊に送り出した時に、教育や訓練で沖縄県民に暴行をする米兵(軍人)のような人間性になる心配は」など、寄せられた質問に共に考え合いながら答えていました。
「1番の問題は、送り出す親や教師、本人も含め戦場での任務を前提としていないこと」と指摘。多くは、「災害派遣で人の役に立ちたい」「公務員で安定している」「資格がとれる」などで、戦場のリスクについて説明もないままそういう状況に送り込まれる可能性があるとの懸念を示しました。
オンライン参加者から「自衛隊が米軍の一部となって戦争する仕組みがどんどん進められている。恐ろしい。日本国民ができることは―」との質問に、市民こそが安全保障の議論を主導し、1人ひとりが自分の問題として考え、学校や職場、地域などのコミュニティの中で考え合う場を作ることが大事と答えました。
また、「戦争は災害と違い人が起こすものであり防ぐことが可能」と訴え、「攻められたらどうする」や「戦争が起きてからどうする」という議論や武力の強化や備えよりも、「どうしたら起きないようにできるか」という議論が重要と強調し、「外交には戦争を予防する力があると、もっとみんなで共有し、どうしたら戦争を起こさせないようにすることができるかという議論を盛り上げていきたい」と表明しました。
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