思い立てば、海芝浦。
令和3年は7月中旬。
カフェで勉強していた私は、
思い立って海へ行く。
話はそう難しいことではない。
前日のアルバイトは裏方仕事が多かった。
裏で紙を数えながら駄べる。
なんだか話が合うのかなんなのか。
盛りに盛りあがった。
聞けば彼は鉄オタらしい。
在来線だけで仙台に行くような人だった。
私たちの話は某有名コーヒーチェーンの期間限定フラペチーノの話になる。
「メロン食べたいんですよ、茨城」
「茨城ねー。俺明日長野行こかな」
「え、スタバの為だけに?wwww」
「スタバいって飲んですぐ帰宅」
「それはさすがに草」
まあ私はりんごに関心が薄かった訳だが。
そんな話になったもんだから他県が近づいた。
私はもう別にひとりでどこへでも行けた。
そんな歳になっていた。
ちなみに彼は次の日、なぜか熱海へ行った。
(これについてはまじで訳が分からない)
「サフィール踊り子乗りたい」
帰宅後唐突にそんなLINEが送られてきた。
それで実際踊り子乗って熱海に行ったらしい。
嬉嬉とした座席の写メが送られてくる。
ふと、なんか海行きたいなあ、と思った。
それをそのまま送り付けると複数案がきた。
江ノ島は?
ちょっと遠く…あれ、思ってるより近いな?
あとこんなんもあるよ。
海芝浦?何それはじめまして。
比較したら安かった。
14:00過ぎてたし。
そんなこんなで私は、海芝浦へ向かった。
ノーブラどすっぴんで。
JR京浜東北線: 大井町~鶴見
JR鶴見線: 鶴見~海芝浦
結局勉強は微塵も進んでいなかった。
むしろ電車の中でのが捗った。
それで少しだけ覚えて、それで良しとした。
何も良くはないけどね。
事前情報通り、駅から外へは出られない。
十五歩くらいで歩き切れてしまうような公園。
駅と、トイレと、自動販売機。
真昼間ではなかったけど青空に月が見えた。
単純な私はサイダーを買って、
好きな人が作った歌を聴いた。
(私にしては)久しぶりに聴いた。
やっぱりどうしようもなく好きだった。
口ずさんでしまったそれは、
何人の人に聞かれてしまっただろうね。
意外と人多いなと思いながら、
意外と強い海風にびゅうびゅう吹かれた。
前髪やばかったけど、そもそも化粧も何もしてないからどうでもよかった。それがよかった。
汚い海も、なんかすごい趣があったり。
ひとりスマホ構えて写真撮りまくった。
それはとても今どきの若い子の姿で、
でも今どきの若い子は海で歌ったりしないか。
サイダー振って弾き飛ばしたかった。
さすがにそんなインモラルなことはしなかった。
別に何も変わってないけど、
別に収穫があったわけでもないけど、
ただなんとなく、少し身が軽くなった気がした。
フットワークが軽くなった。
そして一週間後、私は茨城へ行く。
メロンを飲む為だけに。