「アッと!ホーム」〜スペクタープロジェクト 二章

結婚生活20年の私は最近少し寂しさを感じている。最愛の妻と息子が1ヶ月近く、まともに話してくれない。結婚20周年記念日にケーキでも買って写真を撮りたがったが、そんな雰囲気では無い。私が声をかけても、素っ気ない返事をされる。そんな寂しさを抱えながら今日も家族の為仕事に向かう。我が家には、暗黙のルールが有って家から最後に出る人が整理整頓をしていくこと。職場が近い私が必然的に最後になる。帰宅するのもそうだ。ある日家に帰ると違和感を覚えた。朝、揃えたはづのテレビのリモコンや椅子の位置がズレていた。3日連続だ。誰かが侵入したのだろうか?家族の為を思い了解を得て監視カメラを設置することにした。監視カメラを設置してから1週間、毎日、映像を確認したが何も映っていなかった。誰も侵入していない事が証明されたからカメラを外す事にした。きっと自分が整頓し忘れたのだろうと思った。今日も、いつも通り帰宅した。いつも通り鍵を差し込み開錠しようとした時、夏だと言うのに寒気を感じた。鍵が開いていた。家族の誰かが帰っているのか?だが明かりはついていないのは確認している。恐る恐る中へ入る。玄関からリビングまでの距離が途轍もなく長く思えた。明かりをつけた瞬間、破裂音と共に目の前に紙吹雪が舞った。「ハッピーバースデー!お父さん!」私は驚きのあまり腰を抜かしキュウカンチョウの様な声で「アッ!」と言った。


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