Hello Tomorrow by Spike Jonze | 始点
テツandトモの「なんでだろう〜」という歌がテレビから頻繁に流れていた2003年。将来のビジョンもまだはっきりとしていない若かれし自分は、当時流行語のように流行った『フリーター』という何の保証もないただ聞こえの良い逃げ道を何の迷いもなくまっすぐ突っ走っていました。
ポストカードの宅配とかカフェの店員とか、映画館のチケットのもぎりとか、それこそ掛け持ちでコンビニの深夜バイトとかたくさんのアルバイトをしていました。もし『THE フリーター』という架空のB級映画があれば僕はその主人公としてスクリーンデビューをしていたかもしれません。
まあ、そんな冗談は置いといて、当時は毎日好きなことをして友達と遊んだり、夜な夜なクラブに行って朝まで遊んだり(その頃はオールなんて言ってたかな笑)、特段、何か秀でた能力、学歴、スキルもないのに、将来の対する不安もなく『根拠なき自信』だけで乗り切っていたと思います。自分の人生に残された多くの時間からもたらされる圧倒的楽観論「まあ、どうにかなるっしょ」的なあの『根拠なき自信』です。
そういった根拠のない自信と余りある体力を原動力に、日々精力的に遊びとアルバイトに励む生活を送っていたのですが、1年、2年と時が経ち、自分に残された時間も減っていくと同時に根拠なき自信もその分薄れていき、不安のようなものが心の中で芽生えるようになりました。周囲を見渡せば友達は大学の卒業を控え就活を始めたり、地元に帰省して家業を継いだり、そういったそれぞれ人生の大きな節目を間近に見ていく中で、自分もさすがにこのままじゃダメだと思い始め、自分の将来について真剣に考えるようになりました。そして、いろいろと考えた結果、子供の頃から職人的な仕事に憧れていたので、なんとなく物作り系の仕事をしてみようと思いました。
とは言え、まだ漠然としたイメージしかないため変わることのない日々を送っていたある日、僕は1つの映像と出逢います。
いつものように友達と暇を持て余し、暇つぶしになんとなく入ったゲームセンターのジュークボックスに流れていた映像が目に入ってきたのです。
『Hello Tomorrow by Spike Jonze』
その映像はスパイク・ジョーンズが手掛けたアディダスのCM『Hello Tomorrow 』でした。
この映像を観たときに僕は『ちょー、かっけー!』、『スパイク・ジョーンズ、やべー!』とチャラさ全開、混じりっけのないチャラ純度100%の感想を抱くと同時に、根拠のない自信と漠然とした将来への不安が化学反応を起こし、こともあろうか『こんな映像を作ってみたい!』と感化され、映像制作の道に進もうと決意したのでした。
『Hello Tomorrow 』
このタイトルの通り、自分の人生にとって何か『新しい明日の扉』が開かれたかのように僕の社会人としての人生がスタートしたわけです。
次号へ続く。