【要旨】酸化グラフェンナノシートはDNA損傷を誘発し、in vitroおよびin vivoの両方で塩基除去修復(BER)シグナル伝達経路を活性化させる
ケモスフィア
第184巻、2017年10月、795-805ページ
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著者 Chun-JiaoLua1De-ShengPeia
https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2017.06.049
ハイライト
●新興汚染物質としてのGOを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて初めて調査した。●HEK293T細胞において、25μg/mL以上の濃度でGOに暴露するとDNA損傷が起こることが初めて確認された。
●BER経路は、in vitroおよびin vivoの両方で、GO曝露に対する内部応答機構となりうる可能性がある。
要旨
酸化グラフェン(GO)は、生物科学および医療応用の分野で広く懸念されている。
現在、過度のGO曝露は、活性酸素種(ROS)の生成を通じて、細胞のDNA損傷を引き起こすことが研究により報告されている。
しかし、GO曝露による塩基除去修復(BER)経路のDNA損傷を介した反応については、まだ解明されていない。そこで、HEK293T細胞およびゼブラフィッシュ胚を異なる濃度のGOに24時間暴露し、BER経路遺伝子の転写プロファイル、DNA損傷、および細胞生存率をin vitroおよびin vivoの両方で解析した。
さらに、GO曝露前後のHEK293T細胞の変形を原子間力顕微鏡(AFM)で調べ、細胞の構造に生じた物理的変化を同定した。CCK-8とコメットアッセイにより、GOを高用量(25, 50μg/mL)添加したHEK293T細胞では、細胞生存率が著しく低下し、DNA損傷が増加することが明らかとなった。HEK293T細胞において調査した遺伝子マーカーのうち、BER経路遺伝子(APEX1、OGG1、CREB1、UNG)は、高GO用量(50μg/mL)曝露により有意に発現が上昇したが、低用量(5、25μg/mL)では25μg/mLのCREB1を除いて有意な遺伝子誘導が起こらなかった。さらに、GO曝露によりHEK293T細胞の粘性は低下した。ゼブラフィッシュでは、発現上昇した遺伝子(apex1, ogg1, polb, creb1)の結果は、HEK293T細胞における結果と一致した。
以上のことから、高濃度のGOに曝露することにより、HEK293T細胞およびゼブラフィッシュ胚にDNA損傷が生じ、その内部応答機構としてBER経路が引き起こされる可能性がある。
キーワード
原子間力顕微鏡塩基除去修復グラフェン酸化物HEK293T細胞ゼブラフィッシュ胚