
「大きい一年生と小さな二年生」の武蔵野景色
毎年入学式の季節にぼんやりと思い出す、「大きい一年生と小さな二年生」。
1970年に偕成社から出版された、古田足日さんの大好きな児童文学作品です。
背が高かった私は、ぬーっとしてぼーっとした主人公のまさやに完全に感情移入していたなぁ。
ふと気になり、Amazonで懐かしい本を注文してみました。
子どものころ、何度も何度も巻頭絵地図と見比べながら読み返していた時と同じように、地図を見ながら冒険の歩みを進める。
さらに、今度は母目線のはらはらと感動と身につまされる後悔も加わって、泣きながら読みました。
自立と友情の物語。大人も引き込まれる練られた巧みなストーリー展開。
1970年代の、迷信と科学や昔ながらの暮らしと急激な都市開発、まるであちらの世界と現世を行きつ戻りつのようなアンバランスでミステリアスな(子どもであったことを差し引いても)時代へタイムトリップできました。
作品の舞台は東久留米市とのことですが、武蔵野の景色です。武蔵小金井行きのバスも出てきます。
崖の小路、赤土と黒土の地層、透明な湧水の泉、氷川さま、けやき並木のまっすくな道、小麦畑、街の中に忽然と現れる巨木のある深い森…。
文字を追いながら、明らかに大阪とは違う景色にわくわくした、幼い私の武蔵野歩きの原体験。
大人になって、こんなにもハケが気になるのは、幼い頃のこの読書体験からかもしれません。