Shortstory*かぐや姫の君に*
✱この作品は友人の撮った写真を見ながら作り出したshort storyです✱
今日は満月だ。
「ねぇ、かぐや姫って月に帰りたかったと思う?」
病室の窓から月を見ていた彼女は振り返って僕にたずねた。
「さぁね。僕はかぐや姫じゃないからわからないや」
そんな僕の答えに彼女はちょっと笑ってこう言った。
「私はね、かぐや姫は地球にいたかったと思うの。最初は汚くて冷たい場所だと思っていたけれど、本当は美しくて温かい場所だとわかったんじゃないかな」
不思議そうな顔をした僕に向かって彼女は続けた。
「月には汚いも美しいも、冷たいも温かいもないから」
彼女はそういって冷たい手で僕の手を握った。冷たかった彼女の手はどんどん温かくなった。
「温かいね」
その時、雲に隠れていた月が光と共に姿を出した。
「美しいね」
僕はなぜか彼女が月に帰ってしまいそうな気がして握った手に力を込めた。
「そうだね、きっとかぐや姫は地球にいたかっただろうね」
僕の言葉に彼女はにっこりと笑った。
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今日は、満月だ。
僕は一人であの日を思い出していた。
部屋の窓から差し込む月あかりの先には、にっこりと笑った彼女の写真が今も飾られている。
by gure✱neko
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