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織田信成選手の全日本出場不可問題について考える

普段何かを読んでばかりでアウトプットができていないので、この問題について情報を整理し、自分なりに考えをまとめてみようと思います。

経緯

2014年1月:織田選手が日本スケート連盟(JSF)及び日本アンチドーピング機構(JADA)へ引退届を提出。
2022年10月:織田選手がJSF及び大阪府スケート連盟に現役復帰の報告を行った。
2022年11月:第77回国民体育大会(国体)派遣選手選考会(大阪)に出場
2023年1月:第77回国体へ出場。個人第9位、団体第3位。
2023年7月18日:JSFがJADAへの復帰届が未提出であることに気づき、その日のうちにJSFは織田選手と連絡をとり、JSF経由でJADAへ復帰の意向が伝えられる
2023年7月:JSFから織田選手へ「世界アンチドーピンク機構(WADA)へのドーピング登録が済んでいない。全日本選手権出場への登録期間を過ぎているので、すぐに除外申請書をWADAに提出してほしい」旨の連絡があり、織田選手はWADAへ除外申請書を提出。
2023年8月8日:織田選手から世界アンチドーピンク機構(WADA)へ不服申し立てを実施。
2023年8月末:WADAから織田選手へ除外申請を却下する旨連絡
2023年9月30日-10月1日:近畿ブロック出場。(JSF許可済み)シニア男子シングル第2位
2023年10月26日:JSFから織田選手へ「全日本出場不可の旨を関係者や報道各社へリリースする」旨連絡
2023年10月27-28日:西日本選手権出場(JSF許可済み)。シニア男子シングル第1位
2023年10月28日:織田選手が全日本選手権へ出場できない旨報道

JADAの規定

日本アンチ・ドーピング規程2021の第5.6条において、引退した競技者の競技会への復帰について次のとおり定められています:
JADAの登録検査対象者リストに含まれる国際レベルの競技者(織田選手はこれに該当)又は国内レベルの競技者が引退し、競技へ現役復帰しようとする場合は、当該競技者は、その国際競技連盟(フィギュアスケートの場合は国際スケート連盟)及びJADAに対し、6ヶ月前に事前の書面による通知をしなければならない。

また、WADAは、6ヶ月前の事前の書面による通知の要件の厳格な適用が競技者にとって不公平である場合には、その通知要件を適用しないことができること、及び、当該決定に対しては、日本アンチ・ドーピング規定第13条に基づき(おそらく選手側から)不服申立てを提起することができるとされています。

上記で紹介した日本アンチ・ドーピング規程に従う必要のあるアスリートは、JADAのウェブサイトにおいて「国内レベルアスリート」と定義されています。

この「国内最高レベルの競技大会」にはどんな大会が該当するのか?ということになりますが、該当する大会が競技別にJADAウェブサイトに掲載されています。

これを見ると、今年度は「全日本フィギュアスケート選手権(2023年12月20-24日)」と「国体(2024年1月27-31日)」が国内最高レベルの競技大会に該当することがわかります。

上記経緯と規程を踏まえた出場可否

①第92回全日本フィギュアスケート選手権

上述のとおり、JADAにて国内最高レベルの競技大会と定義されている第92回全日本選手権には日本アンチ・ドーピング規程が適用されるため、試合日の6ヶ月前(つまり2023年6月20日まで)までにJADAへ書面による競技会復帰の通知をしなければ競技会へ参加できないことになります。
織田選手が復帰の通知をJADAに行ったのは2023年7月19日であることから、今年の全日本選手権には出場することができません
ただし、6ヶ月前という部分に対して、規程に則り織田選手側は当該通知要件を除外申請ができる権利を有していましたので、WADAへ除外申請をしましたが、結果的にWADAは除外申請を認めず、6ヶ月前、という規定がそのまま適用されることとなりました。

②第78回国体

もう一つの国内最高レベルの競技大会である「第78回国体」については、試合日が2024年1月27日〜ですので、試合日の6ヶ月前は2023年7月27日ということになり、6ヶ月前までのJADAへの通知が完了しているという扱いになります。
つまり、第78回国体へは織田選手は出場することができます。
そのため、織田選手は2023年11月11日に開催される第78回国体派遣選手選考会(大阪)に出場予定である旨西日本選手権後のインタビューで表明しています。
ただし、懸念点としては前回大会(第77回国体)の取り扱いです。前回大会についてもJADAによって「国内最高レベルの競技大会」に定められており、日本アンチ・ドーピング規程が適用されていました。
2023年1月当時、織田選手はJADAへ復帰の旨を通知していなかったことから、日本・アンチドーピング規程を違反している状態で第77回国体へ出場していたことになります。そのため、JADAは現在今後の処分を検討していることから、処分によっては第78回国体への出場ができなくなる可能性も否定できない状況にあります。

本件が発生した要因

なぜこのような事態になってしまったのか?個人的には大きく2つの要因があったように考えます。

・選手側の認識不足

織田選手が引退届を提出したのが2014年1月、現役復帰の意向を示したのが2022年10月ということから、約9年の間が空いていたことになります。
なお、JADAへの引退届には、「国際競技大会や国内競技大会に参加するため復帰を希望する場合は、JADA書式『復帰届』を提出する必要があります。『復帰届』をJADAが受領した日から6か月の間、ドーピング検査を受けられるようにする必要があるため、その間『国際競技大会』および『国内競技大会』への参加はできません」と明記されていたようですが、前述のとおり、復帰まで非常に長い期間が空いたことから、選手側も認識から抜け落ちていた可能性も否定できないのかなと思います。

・JSF側のサポート不足

JADAへの復帰届は、各競技連盟経由で届出がされることとなっており、今回のケースではJSF経由で提出されます。しかし、織田選手からJSFへ復帰届が提出された際に、JADAへの復帰届が提出されていないことをJSF側が認識していれば、今回のような事態は防ぐことができたのではないかと思います。
ニュース記事等でも、「引退後復帰する選手について必要なサポート体制の整備を検討する」とありますので、競技復帰しやすいような体制の構築、そしてフィギュアスケート競技の発展に繋げていただければと思います。

なお、大前提として、JADAへの復帰届の提出及び日本アンチ・ドーピング規程の遵守はアスリートの責務であることを申し添えます。

参考資料

・JADAウェブサイト

https://www.playtruejapan.org/

・日本アンチ・ドーピング規程2021

https://www.playtruejapan.org/entry_img/jadacode2021.pdf

・第92回全日本フィギュアスケート選手権 大会要項

https://www.skatingjapan.or.jp/common/img/event/23-24announcement_jsfc.pdf

・織田選手のInstagram

・各種ニュース記事



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