見出し画像

【業界人が語る】古い車は税金が高いから損をする、は完全に騙されてます。

「ウチの車も古くなってきたから税金が高い…そろそろ買い替えるか」
「今の車を大事にしていたいのに、なんで税金を上げるんだ?」
「日本人のものを大事にする精神はどこへ行ったんだ!」

X(Twitter)などでよく見かける議論ですね。
スパッと行きましょう。
それ、完全に騙されてます。真っ赤な嘘です。

たしかに、自動車税は年数経過で高くなります。
しかし自動車にかかる税金は自動車税だけではありませんよね。
あなたの意識を自動車税にフォーカスさせることで、もっと高い税金から意識を逸らせようとしているのです。
新車を買わせて、税収を得るために。

(余談ですが、心理学ではこのテクニックを「フレーミング」といいます)

そんな罠にはまったままではいけない。
刷り込まれた嘘に気づき、あなたがカーライフで損しないために。
業界歴15年の僕が、気合いを入れて解説いたします。

野生の車屋ナカノ
整備工場、板金屋、中古車店、レースメカニックなど15年の業界歴。
自分の店を持っていたこともあり(私は居ませんが現存)
得意分野はサスペンションセットアップと地球が終わるまで乗れる錆止め。
頭が悪いため電装系は苦手。(できなくはない)

ナカノ

実は、古い車より新車のほうが圧倒的に税金が高い。

「え!?そんなことある!?だってエコカー減税とかあるんじゃない?」
と思ったあなたは、完全に罠にはまっています。
新車にもしっかり税金がかかっていますよ。

特に「消費税」は、新車を買わなければかからない税金ですからね。
今の車を大事に乗っていれば「消費していない」のでもちろん消費税がかかりませんし、中古車への乗り換えも消費税がかからない方法があります。
【業界人が語る】中古車は量販中古車店で買ってはいけない。【収益構造に欠陥】

もちろん新車は税金が減税されていたりしますが、
それを差し引いても「圧倒的に」古い車を大事に乗るほうがコスパが良いのです。
個人的な意見ではなく、統計を元に解説していきます。

まずは消費税を新車と古い車で比較してみる。


僕はN-ONE派

令和6年9月現在、日本で一番人気の車は「ホンダ N-BOX」だそうです。
たしかによく見かけますもんね。
今回はN-BOXで比較してみましょう。

  • 新車:180.7万円(R6.9現行型の平均値)

  • 中古車:111.8万円(2代目N-BOX平均値)

中古だと新車の6割程度の価格で買えるようですね。
しかし中古車相場には「新古車」も含まれるため、実際には実際には二桁後半台の車を見かけることが多いでしょう。

…さて、本題の税金に話を戻しましょう。
まずは消費税で比較してみます。
「商品の価格÷10%=消費税額」
簡単なのでササッといきます。

  • 新車にかかる消費税:18.07万円

  • 今お乗りの車:もちろん0円

早くも18.07万円の差がついてしまいました。
減税などで取り戻せるでしょうか?
次は自動車税で比較してみましょう。

新車の自動車税は確かに安い。

新車の自動車税と古い車の自動車税を比較してみましょう。
N-BOXの場合こんな感じになります。
※令和6年9月調べ

  • 新車:軽自動車税10,800円+重量税2,800円=年間13,600円

  • 今お乗りの車:軽自動車税10,800円+重量税3,300円=年間14,100円

年間で500円節税になりました。
雀の涙ほどお得です。
ただこれ、普通車で比較すると差が広がるかもしれませんね。
二番人気の「トヨタ・ヤリスハイブリッド1.5L」でも比較してみましょう。
ハイブリッド車なので、減税されまくっている車種です。

今時走り重視のフライヤーは珍しい

新車:自動車税8,000円+重量税0円=年間8,000円
今お乗りの車:自動車税30,500円+重量税12,300円=年間42,300円

年間で37,500円減税になりました。
これはお得ですね!新車万歳!エコカー万歳!

…と思いましたか?
これ、初回車検分までですよ。
二回目の車検以降は、今お乗りの車と同じ年間42,300円になります。

カエルは鶏肉の味

新車から13年経過・18年経過で増税されるけど

「20年前の車に乗ってるから税金ちょー高いんだよ!」
という方もいらっしゃるでしょう。
確かに、13年経過・18年経過で自動車税や重量税が増税されます。
実際、どれくらい増税されるでしょうか?

「トヨタ・ヤリスハイブリッド1.5L」と比較してみます。
※ヤリスハイブリッドは初回車検以降とします
※比較車両は同クラスのコンパクトカー・ガソリン車とします

  • ヤリスハイブリッド:自動車税30,500円+重量税12,300円=年間42,300円

  • 13年経過:自動車税39,600円+重量税17,100円=56,700円=+14,400円

  • 18年経過:自動車税39,600円+重量税18,900円=58,500円=+16,200円

13年経過で14,400円、18年経過で16,200円の差がつきました。
なるほど、これが毎年ならけっこう大きいですね!
ではヤリスの車両代「2,050,000円」は何年でペイできるでしょうか?

  • 13年経過:車両代2,050,000÷増税額14,400円=142.361111.…年

  • 18年経過:車両代2,050,000÷増税額16,200円=126.543209…年

イケメンよりイケオジになりたい

質問:あなたは、126年後まで車を運転しますか?
人生100年時代とは言いますが、僕はちょーーーっと嫌かな…(笑)
静かな田舎の古民家で隠居させてください。

「142,276kmの中古車」が最もコスパが良い。

実はこれ、これはデータから計算することができます。
もちろん中古車は個体差がありますし、乗り方やシチュエーションには個人差があります。
「平均値」になりますが、なんの根拠もなしに買うより良いですよね?
さっそくいってみましょう。

  • 日本人が一台の車に乗り続ける年数は平均8.5年

  • 日本人の年間平均走行距離は6,791km

※一般財団法人自動車検査登録協会調べ

仮に車の寿命が20万kmだとすると、(実際にはもっと乗れますが)
200,000km - 平均年間走行距離6791km × 乗る年数8.5年 =142,276km
総走行距離が長いほど中古車は安くなるので、
走行距離142,276kmの安い中古車を買うのが、平均的に最もコスパのいい選択となります。

増税やめてくれー

個人売買なら消費税もかかりませんしね。
「個人売買で中古車を買い、整備工場で整備をしてもらう」
個人と個人を繋ぐUber Eatsのようなサービスが普及した今、これが最も中間コストを抑えられる車の買い方です。
餅は餅屋。整備は整備工場へ。(中古車店は大した整備をしません)
【業界人が語る】中古車は量販中古車店で買ってはいけない。【収益構造に欠陥】

※車の寿命に関しては「事故で廃車」「壊れてないけど乗り換え」などの廃車要因があるため、充分なデータが得られませんでした。
ただ経験上、軽自動車でもメンテナンス次第で20万km以上余裕で乗れます。
僕のアクティトラックも現在24万kmです。とっても快調。

結論、減税で消費税や車両代の元はとれない。

ということで「新車にかかる税金>>>新車の減税」というお話でした。
初回車検までの3年間を無事故で20万kmくらい走れば、税金に限って新車のほうがお得と言えるかもしれませんが…
長距離ドライバーでもない限り、基本的にはあり得ませんよね。
(日本人の年間平均走行距離は6,791kmです)

”あなたの意識を自動車税にフォーカスさせることで、もっと高い税金から意識を逸らせようとしているのです。”

冒頭引用

冒頭に書いた文章ですが、おわかりいただけたでしょうか。
毎年やってくる自動車税の支払いはとても憂鬱です。
新車を買わせたいメーカーと国は、あなたが嫌だなと感じている”心の弱い部分”に容赦なくつけこんでくるのです。
「高い税金は嫌ですよね?」「古い車は損です」「新車がお得ですよ」と。

昔、バイアスタイヤってあったよね

自分にとって都合のいい情報だけを集めてしまうことを「確証バイアス」と言います。
あなたに確証バイアスを起こさせて新車を買ってもらうために、

  • 燃費がいい

  • 税金が安い

  • 新車なら安心

このような情報がメディア問わず無数に出回っているわけです。

確証バイアスは、正しい知識を持つことで逃れることができます。
「これ、本当にそうか?」と疑問を持ち、逆説を調べてみること。
これが現代社会の風潮や同調圧力に流されず、あなたがあなたらしい生き方を選ぶ方法です。
(メンタリストDa〇Goっぽいな…)

何の車のエンジンだろう…?

…冷静に考えたら「買い替えるほうがお得」なんてありえない話です。
直して乗れば部品数点。
買い替えれば車丸ごと(部品数万点)ですからね。
どちらが生産コストがかかるのか、比較するまでもありません。

「新車なら壊れにくくて安心」は嘘。データが示しています。

「税金はわかったけど、古い車はメンテナンス代がかかるでしょ?」
たしかに、新車が一番壊れにくいのは事実です。
なんたってすべての部品が新品ですからね。

でもこれは買ったばかりの時だけの話です。
日本人の年間平均走行距離が6,791kmなので、
初回車検で20,373km、二回目の車検では33,955km走ることになります。
もう新車ではありません。普通に中古車です。

さらに面白いデータがあります。
自動車のメンテナンス代は、実は年々増えていってるんですよ。

ちなみに富山や金沢の修理代が高いのは「融雪剤」で錆びるから
  • 2001年は年間17,663円

  • 2010年は年間18,838円

  • 2023年は年間29,246円

※総務省調べ

さまざまな要因が考えられますが、
この上がり幅は「物価の高騰」だけでは説明がつきにくいです。

私の整備士としての経験則と想像になりますが、
「自動車一台あたりの部品点数が増えたから」
というのが大きな要因と考えています。

  • ABS

  • エアバッグ各種

  • レベライザー

  • LEDヘッドライト

  • 自動ブレーキ

  • ハイブリッドシステム

思えばこれ、2010年ごろから流行り出した気がしますよね。
総務省のデータでは、メンテナンス代が急に増えたのもこのあたりです。

たしかに新車の装備は便利で安全ではありますが、
「新車=メンテナンス代が安いは勘違いである。」
これは総務省のデータから確かなことです。

旧車のメンテナンス代が高いと言われる理由

ただし「旧車」と呼ばれる30年以上前の車だと、メンテナンス代が高くつくこともあります。
その理由の多くは、部品供給がないからです。

車の部品というのは「発売から8年後までは生産すべし」と法律で決まっていますが、8年後以降は定められていません。
部品のあるなしは運次第となってしまうのです。
部品がない場合、旧車ファンはこんな感じで部品を調達します。

  • ワンオフ制作する(オーダーメイド一点もの)

  • 中古良品を探す

  • 専門ショップオリジナルパーツを買う

  • 部品取り車両としてもう一台同じ車を買う

これはメーカーが大量生産しているものに比べて、とても高くつきます。
(当たり前ですね)

とはいえこれは「旧車」の話。
15~20年落ちくらいの日本車であれば、部品が手に入らないということは業界15年の経験でほとんどありませんでした。
むしろちょっと古いほうが中古部品が手に入りやすいメリットがあります。
結果として安く済むことが多かったですね。

ということで、~20年落ちくらいの車であれば、部品供給はほとんど気にする必要がありません。
※ホンダTypeR系やランエボ系などは要注意かも

整備士が乗り換えを勧める理由は、慣れない作業をしたくないから。

「〇〇さん、そろそろ乗り換えませんか?」
古い車や過走行車に乗っている方なら、こんなことを言われた経験があるかもしれません。
これも乗り換えたほうが良いかな?と思わせる一つの原因です。

しかしこれは整備士目線で見ると単純な話で、

  • 5年前の車と15年前の車では壊れやすい部品が違う

  • 5万kmの車と15万kmの車では壊れやすい部品が違う

ということです。
…すみません、車の部品で説明するのは難しいですね。
わかりやすくスマホに例えましょう。

ホームボタンやイヤホンジャックがあるのにUSB-Cだと…?

あなたはスマホ修理業者です。
一番多い修理は落として割れた「ガラスの交換」
月に100台ほどガラス交換を依頼されるので、とても慣れた作業。
説明書など見なくてもできる、朝飯前の作業です

…ある日、野生の車屋ナカノという人が
「iPhone8のホームボタンが壊れたから交換してくれ」
と依頼してきました。※ガチでiPhone8使ってます

今時のスマホにはホームボタンはついていません。
あなたはまったく構造がわからない。
ネジのついている場所やガラスの取り外し方も、最近の機種と違う。
まいったな。どうやって直せばいいのかわからないぞ??
もし失敗してどこか割れたりでもしたら、責任を問われてしまう。

…ひらめいた!こんな時便利な言葉があるじゃないか。
「〇〇さん、そろそろ機種変更しませんか?」

古い車は古びた整備工場に任せよう。

「〇〇さん、そろそろ乗り換えませんか?」
この言葉の正体がわかりましたね。
”乗り換えムード”は整備士にとっても便利なんですよ。
慣れない作業を避けられますからね。
僕も昔はよく使った方法です。(ごめんなさい)

当時からわかってはいたんです。
コスパを考えるなら乗り続けるほうが圧倒的に良い。
でも15年前当時、自分が生まれた頃のような古い車を整備するスキルがなかったんです。
やはりよく入庫する車は、5~10年落ちの車が多いですからね。

古い工場にはすごいスキル持ってる整備士が多いです。

「…うーん、今乗っている古い車を整備してくれる工場あるかな」
と思ったそこのあなた、上の文章が大ヒントです!
新しい整備工場は、新しい車種が得意。
逆に古くから工場を構えている整備工場は、古い車種が得意です。

当たり前ですよね。
昔からやってる工場ですから、古い車に慣れているということです。
「懐かしいなこの車。ここが壊れやすいから点検しとくか…
でもこのへんは最近の車に比べて頑丈にできてるよな。」

みたいな感じで、サクサクッと整備してくれます。

※大がかりな溶接修理が必要になる「フレームの錆び穴」など、本当に乗り換えるべき場合もあります。主に雪国。
その場合は整備士の意向に従うのが良いでしょう。

古い車は税金が高いから損をする、は完全に騙されてます。まとめ

”コスパのために新車を買う”のは間違っている。
一言でまとめるとこんな内容でした。
「新車を買う奴はバカ」とか言うつもりはないので、ご安心ください。

初期型XDのサスペンションは「クソ」だったなぁ…(今は良くなりました)
  • 「ピカピカの新車が欲しい!」

  • 「欲しいと思える車が新車しかない!」

もちろんあなたがこう思っているのなら、新車を買うべきです。
僕も「DJ型デミオ XD」が出た時は迷わず買いました。
コンパクトカーでクリーンディーゼルは当時デミオだけでした。
高くつくのは知ってましたが、普通に欲しかったんですよね。

車は移動手段でありながら、嗜好品でもあります。
新車を買うにしろ、今の車を大事にするにしろ、
最終的には「この車なら楽しく乗れる!」と思える車を選ぶのが正解です。中古車を考えている方はこちらの記事もどうぞ。


約6000文字の長文を読んでくださり、ありがとうございました。
私は”元”業界人ですので、事実ベースで容赦なく執筆しております。

イキリトさんカッケー!!!

「言っとくが俺はソロだからな、一日二日オレンジになるぐらいどうってことないぞ」
こういうことです(笑)
※ソードアート・オンラインわからない人ごめんなさい

…間違った風潮や同調圧力って嫌いなんですよね。
今回の話で言うなら、根拠もなく「長い目で見たら新車のほうがいいぞ!」とか言っちゃう人や、そのムードで稼ごうとする人が嫌いです。
あなたにとって幸せな選択は、あなた独自の、あなただけのものです。
車選びに限らず、正しい知識であなたに合った選択をして欲しい。
そんな想いで魂を込めて執筆しております。

気に入っていただけたら、ぜひX(Twitter)のフォローもお願いいたします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?