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おとうさんが大好きな娘の話

私の夫は、カフェでシェフとして働いている。

そして娘は、おとうさんが働いているカフェにいくのが大好きだ。

休日、わりとインドア派の娘は、家で遊ぶと主張するときがある。

娘の意向は尊重するけれど、買い物にいかないと夕飯の材料がない、みたいな日は困る。「公園で遊ぼう?」「大きい滑り台あるとこいこう?」と誘って快諾する日もあれば、かたくなに「嫌!」と拒否されるときも。

昨日は、いろいろ買い物があるにもかかわらず、LEGOを手に入れた娘が一歩も外にでないと主張する日だった。

お買い物もしたいし、ランチがてら「ピザ食べに行こう?」と聞いても、LEGOに夢中で「嫌!」とつれない返事。

ならば、と奥の手を切り出す。

「おとうさんのカフェにいこう?」

パッと娘が顔を上げた。

「いいアイディアだね!娘ちゃん、お父さんのカフェ大好き」と即答。

LEGOのピースを放り出して、いそいそと、お出かけの支度をはじめた。

夫が働くカフェは、カウンターからキッチンが見える。

注文するときに娘を抱っこしてやると、キッチンに向かってニコニコ手を振っている。

カフェのオーナーさんとも顔見知りなので、わざわざ「娘さんたちがきたよ」と呼んできてくれたりする。日曜の忙しい時間に、すみません、という謎の罪悪感。

娘には、ソーセージロールとフラッフィーを頼む。フラッフィーとは、スチームした牛乳とその泡をエスプレッソカップに入れたNZ定番のお子様用飲み物だ。店によって、カラフルなスプリンクルを散らしたり、ココアパウダーを振ってくれたりする。

この店のフラッフィーは、チョコレートで星が描かれている。まわりに、ピンクや紫の色とりどりな小さな粒がちらされていた。

「これ、おとうさんがつくってくれたのかな!」

顔を輝かせる娘。

いや、きみのお父さんはシェフだから、飲み物はつくらないよ。

アツアツのソーセージロールを器用に小さく切って、口に運ぶ娘。

それは、お父さんが作ったやつだよと教えてあげる。ちゃんと、ひき肉と玉ねぎと人参を刻んで炒めてイチから調理しているから、おいしい。

「お父さんがつくったの?すごいね!おいしー」

ほかにも、おいしいソーセージロールはこの世にあると思うけど。

世界で一番おいしいソーセージロールを食べているような顔をしている娘。

全てが、ご機嫌でなにより。

大満足のランチを食べて、近くの公園へ。小1時間ほど遊んで、買い物に行く途中、また夫が働くカフェの前を通りかかる。

「おとうさん、まだいるかなー?」

娘は、外からのぞき込んで手を振っていた。

きみ、おとうさん大好きだね。

その小さな後ろ姿を眺めて、幸せを感じたりした。そんな休日。

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