『君たちはどう生きるか』考察
2023年7月14日に封切りされた、映画『君たちはどう生きるか』を僕の勝手な解釈で考察してみたいと思います。
ネタバレが嫌な方はここで閉じてください。
あらすじ
太平洋戦争末期。母を空襲で亡くし父と疎開したものの、新生活を受け入れられずにいた少年。ある日、彼は大叔父が建てたという洋館を発見し、謎のアオサギに導かれながら洋館に足を踏み入れる。。。
結論
この物語は日本人が日本神話を体験し、現代の抱えている問題を突き付けられた上で『どう生きるか』と問われている物語である。
と僕は思います。
青サギ/サギ男
疎開した眞人を監視している青サギ。その正体は大きい鼻を持った禿げ頭の小男、サギ男。
これは日本神話に登場するサルタヒコではないかと思う。
サルタヒコはニニギノミコトが天降りする際に高天原から葦原中国を照らした神。
物語では眞人の道中を案内したのではないかと思う。
ヒサコ
物語の冒頭で眞人の実母、ヒサコは病院で火災にあい死亡する。
これはイザナミではないかと思う。
イザナミはイザナギと共に国生みを行うが、火の神カグツチを産んだ際に大火傷を負って死亡する。
その後、黄泉国に落ち、逢いにやってきたイザナギに腐敗した自分を見られて怒り、追いかける。
物語では産屋にいる夏子が黄泉国パートのイザナミだったのではないかと思う。
下の世界と上の世界
物語では現実世界から塔を通じて下の世界に落ちていく。
下の世界は黄泉国そのものだと思う。
大叔父が住む上の世界は高天原なのだろう。
塔
物語の現実世界でかつての大叔父が力を秘めた隕石の周りを建物で隠したもの。
これは原子力発電所ではないかと思う。
人智を超えた核分裂反応を発見した大叔父はそのエネルギーを活用しようと建物で隠して、自らはその制御に一生を捧げたのではないか。
石のバランス
物語で大叔父は眞人に
「ここに13個の穢れていない石がある。3日に一つずつ積み上げて世界のバランスを取る自分の役目を引き継いで欲しい」
と頼む。
いつメルトダウンを起こすかもしれない原子力発電の神がかり的な制御を表現したのではないか。
また核抑止のバランスのことかもしれない。
大叔父は「悪意のない人間しかこの仕事は出来ない」と言っている。
真人
主人公の名前は眞人。
これは天皇から氏族に授けられた姓の一つ。
真人は八色の姓で最高位に位置付けられている。
つまり主人公眞人は日本人そのものを表しているのではないか。
よってもって
日本人の成り立ちをトレースし、不思議だけど腑に落ちる感覚を感じながら、最後は核の問題を突き付けられて
「さぁ、どうする?」
と問われていると感じました。
最後はあっさりと日常に戻って何事も無かったかのような雰囲気も現代の日本に近しいのかなと思います。
現実世界が太平洋戦争末期だったのは、単純に宮崎駿監督の趣味かなと。