7 単著刊行の奇跡
今日は、自分が単著を刊行できた奇跡話をしてみます。研究者を目指す場合、特に人文社会科学系等の研究者にとって単著刊行は一つのメルクマールとして位置づけられるものです。たいていは、博士論文の成果を単著として刊行する場合が多いのですが、私の場合はそれとは異なった経緯を経ました。
海外でPh.Dを取得した私は、その論文を現地の大学出版局から刊行してもらおうと思ったのですが、計画倒れに終わってしまいました。それから数十年経過し、数々の論文を発表してきた私ですが、非常勤講師として生活も苦しい中、学会誌に掲載できた私の論文に、とある学会より優秀論文賞を頂けることになり、それを審査していたT大学(日本の最高峰の大学)の先生より、「先生がお書きになった論文で単著を刊行してみませんか」というオファーがありました。思いもかけないオファーでした。
その後、その方がT大学出版会の編集者と掛け合っていただき、話はとんとん拍子に進みました。通常、図書刊行には、出版助成金のような公的補助金が必要な場合もあったり、著者の金銭的負担があるのですが、私には全く金銭上の負担はありませんでした。すべて出版会が出版へ向けての費用を負担していただきました。
今まで書き溜めた原稿(これは博士論文ではありません)を編集者に手渡し、しばらくしないうちに、「これで刊行しましょう」というお返事をいただくことができました。まさか、こんな感じでスムーズに事が運ぶとは思いませんでした。原稿提出からわずか1年で私の単著が刊行され、おまけにある団体より賞をいただくことができました。これは私の人生の中で、唯一最大の奇跡でした。
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