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「ずっと真夜中でいいのに。」という時代

「ずっと真夜中でいいのに。」という名前のアーティストが注目を集めている。YouTubeに投稿された「お勉強しといてよ」という楽曲は1ヶ月半で700万回以上再生され、AmazonPrimeMusicでもヒットチャートに上がっている。「ずっと真夜中でいいのに。」(以下ずっとマヨ)の魅力は、アングラ、ポップ、ロック、EDM、サブカル、どのような言葉で表しても説明しきれない独特の音楽性や世界観にある。解釈や感想を押し付けることは嫌いなので、ぜひMVや歌詞と共に鑑賞してほしい。

すぐれたアーティストは必ず時代を捉える感性がある。それは表面的なトレンドや統計に基づくマーケティングではなく、同時代の誰もが(少なくとも一定数の人)が心の中に持ってるドロドロとしたモノに言葉や形を与え、優れた技術で誰よりも早く世の中に提示する能力といえる。

ずっとマヨが時代の何をえぐり出しているのか、それはここでは述べない。ただ、最初にずっとマヨを聞いた時から感じていたdéjà vuの正体が最近ようやくわかってきたので書き残しておくことにした。

ずっとマヨは「たま」に似ている。ご存知かもしれないが、たまは80年代から90年代にかけて活躍したバンドだ。たまもまたどう表現していいのかわからないバンドで、音楽性としてはずっとマヨとは正反対だが、たまとずっとマヨの共通点は「一回目に曲を聞いた時には絶対に意味が理解できないけれども、なんとなく悲しいとか寂しいとかいうことはわかる」ということだ。

たまの活動した時代は、前半はバブル経済期、後半は失われた時代に重なる。物質的な豊かさと喪失のなかで、日本人が「なんとなく」感じていることを曲にした。

2018年デビューのずっとマヨが描いているものは、おそらくたまと通底している。それは自分で探して欲しい。

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