東京五輪はSDGs的に見て◯か✖︎か?〜武田砂鉄さんの記事を読んで〜
■G7一番の重要トピックは「東京オリンピック」だった?
6月13日、イギリス・コーンウォールで開催されたG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)が閉幕しました。大手メディアは「菅義偉総理は各国首脳から、東京オリンピック・パラリンピック開催の支持を取り付けた」と報じていました。
サミットでは新型コロナ対策や地球温暖化対策など、他にもいろいろな課題が話し合われたと思うのですが、日本にとって一番重要なのが「東京オリンピック・パラリンピック」(以下 東京五輪)だったのでしょうか?
■武田砂鉄さんの記事に激しく同意
菅総理や大手メディアにとっては”最重要課題”らしい東京五輪ですが、今朝(6月15日)の「しんぶん赤旗」に、ライターの武田砂鉄(たけだ・さてつ)さんが興味深い記事を書いています。
タイトルは「SDGsとオリンピック」。
実は私もこのテーマで書こうと思っていたのですが、先に書きたかったことを全て書かれてしまいました(う〜ん、やられた!)。
というわけで、全文を引用して紹介します。(太字にしたのは、私がとくに重要と感じた部分です)
Tシャツ&短パン&サンダルで、都心のオフィス街を歩いていると、向かってくるサラリーマン3人組がこちらを睨んでくるので、優しく睨み返すと、3人とも胸にSDGsのピンバッジをつけている。
この数年でよく聞くようになったSDGsとは、「持続可能な開発目標」のことで、具体的に17の目標が定められている。限りある資源を守り、次の世代によりよい地球を残すため、個々人ができることをやらなければならない。
もちろん、そこへの異論はない。だが、最近では、うわべだけ環境問題に対して熱心に取り組んでいると見せかけ、企業や組織のイメージアップのために使う「グリーンウォッシュ」なる言葉も出てきている。
で、そのSDGsのピンバッジをつけている3人組が吸い込まれていったのは、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサーとなっている大企業だった。
今、コロナ禍での開催可否が議論されている東京五輪だが、そもそも、商業化した運動会が持つ問題点は、感染症対策以外にも無数に存在している。それこそ、SDGsの17の目標と照らしてみると、問題が具体的に浮き彫りになる。いくつか並べてみたい。
「3 すべての人に健康と福祉を」。新型コロナのワクチン接種について、五輪選手・関係者に優先的に摂取している現状。「安心安全」と繰り返しながら、五輪関係者を優遇する。これは、「すべての人に」という目標から大幅に逸れるだろう。
「5 ジェンダー平等を実現しよう」。2月上旬の森喜朗組織委員会会長(当時)の女性蔑視発言を思い出せば、これほど平等から遠い組織もない。スポーツ界では、男女の賃金格差が深刻だ。
先日、アメリカのメディア「Sportico」が、2021年のスポーツ選手の長者番付を発表したが、上位100人のうち、女性アスリートはテニスの大坂なおみ選手、セリーナ・ウィリアムズ選手、たった2人だけだった。これほどの格差を埋めようとしているとは思えない。
「11 住み続けられるまちづくりを」。オリンピックを招致した都市は漏れなく、下品なスクラップ&ビルドを繰り返す。
東京五輪を招致した当時の東京都知事・猪瀬直樹は、ツイートで「2020東京五輪は神宮の国立競技場を改築するがほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一カネのかからない五輪なのです」と述べていた。
結果、どうなったか。そのまま使わない、とにかくカネのかかる五輪になった。
「12 つくる責任 つかう責任」。オリンピックが終わると、巨大なスタジアム、関連する施設が、運営を維持できるほどの使い道がなくなってしまう。どんな五輪の後にも繰り返されてきたことだ。
ということで、SDGsの考え方と、オリンピックの取り組みは相反する。ピンバッジをつけた3人組はオフィスに戻り、上司に「五輪に乗っかるのなんてやめましょうよ」と物申してくれただろうか。
「武田砂鉄のいかがなものか!?プラス」(しんぶん赤旗2021年6月15日)より
■東京五輪「反対」vs「賛成」賛同を集めているウェブ署名はどっち?
武田砂鉄さんの記事、いかがだったでしょうか。私はまったくこの通りだと思います。武田さんが指摘する通り、東京五輪の問題はコロナ対策だけではありません。
たとえば「新国立競技場」の建設では、土台のコンクリート型枠にマレーシアやインドネシア産の合板を12万枚以上も使用。これが熱帯雨林の環境破壊や現地住民の生活破壊につながっていると批判されました。
森林や生態系の保護をうたった「ゴール13 陸の豊かさも守ろう」に照らし合わせれば、完全にアウトです。
そもそも今回の東京五輪は「誰のため・何のためにやるのか」が不明確なまま、バタバタと開催が決まってしまった感があります。
東日本大震災からの「復興五輪」という大義も、かなり怪しいと思います。東京電力福島第一原発の事故が収束していない現在「復興」という言葉は軽々しく使えないでしょう。
実際に東京五輪の開催に、疑問を持っている人も少なくないようです。
弁護士・宇都宮健児さんの呼びかけで始まった、開催中止を訴えるウェブ署名は42万筆(6月15日・正午現在)を超えました。
一方、作家&政治評論家・竹田恒泰さんの呼びかけで、開催賛成のウェブ署名も行われていますが、こちらは現在のところ約9万8000筆。
宇都宮さんの署名が始まったのが5月5日、竹田さんは5月8日とほぼ同時期だったことを考えると、「東京五輪はやめるべき」という声が圧倒的なのは明らかでしょう。
私も、宇都宮健児さんの「中止」を支持します。
強引な開催は「スポーツの持つ力を信じる」というレベルのハナシではなく、持続可能な社会や誰一人取り残さない社会の否定につながりかねない深刻な問題です。
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