ユメステ怪文書(いろみとてぇてぇシリーズHDリマスタースペシャルエディション1stシーズン)



邂逅編

 最近劇団電姫にヤバいファンがいると話題になっている。公演中に立ち上がったり、物販でグッズを買い占めたりしているらしい。他のファンからは顰蹙を買い、『厄介おばさん』と呼ばれている。

 今日も公演が終わり、物販の状態を見に行くと、

「あぁ!いろはさんのアクスタ、たまりませんわ!」

 と言っていろはちゃんのグッズを買い占める厄介おばさんの姿があった。しかもその後ろには2mを超える巨体を持つ屈強な黒服の男がそびえ立っていた。厄介おばさんはどこかのセレブなのだろう。あまりにも金払いが良いので何も言えない物販スタッフ。

「皆さんにもいろはさんの魅力を知っていただきたいので少しだけ残していきますわ。」

 そう言って厄介おばさんは帰っていった。

 こんなヤバそうな人に目をつけられるいろはちゃんが可哀想、守ってあげなきゃ、と思う白丸美兎であった。


対峙編

 カーテンコールの時、テンションが上がりすぎていろはちゃんに抱きついてしまった。役柄上いろはちゃんの役とは恋人同士という設定のため、美兎のセンスで役を降ろしすぎてしまい、内面は完全に役に染まってしまっていた。

 客席からは歓声が上がるが、見てしまった。あの『厄介おばさん』が立ち上がったのだ。とてつもなく鋭い眼光で美兎を見ている。背筋が凍る。

 公演終了後、着替えを終えて楽屋から出て行こうとする時、ドアを開けられ、厄介おばさんが入ってきた。

「白丸美兎さん、ですわね?」

 まさか楽屋まで入ってくるとは…。出口を塞がれ、未動きが取れない。そこまでの権力者なのかと恐ろしくなり、これから何をされるのか想像がついてしまった。

「あっ…あぁ…」

 脚の震えが止まらない。指先を動かすこともままならない。それでもお構いなしに厄介おばさんは近づいてくる。助けて、いろはちゃん…!

「カーテンコールの時の抱きつき…、たまりませんでしたわ…!いろみと…てぇてぇですわね…!これからもいろはさんをよろしくお願いしますわ。」

 そう言うと厄介おばさんは出ていった。とりあえず殺されなくてよかったとひと安心して尻もちをつく。厄介おばさんの言葉は何一つ理解できなかった白丸美兎であった。



妄想編

 今日も稽古は疲れましたわね…。最近忙しすぎていろはさんの舞台も観に行けていませんわ。自室で体を休める私。
 この前は変装していたとは言え、てぇてぇすぎて美兎さんの楽屋まで感想を言いに行ってしまいましたわ…。流石にあれはやりすぎましたわ。

 自室のベッドの上で寝転がっていろみとアクスタを眺めていると、隣の部屋から物音がしました。いろはさんが帰ってきたのですね。しかし、ガタガタとずっと音が響きます。何をしているのでしょうか…。あまり良いことではありませんが、私は壁に耳を当てて様子を伺うことにしました。すると、微かにですが、話し声が聴こえてきました。

『あっ…いっ…いろはちゃん…それは…ダメ…』

『みっ、みとちゃんが、わるいんですよっ…』

 美兎さんの喘ぎ声!?いろはさんが攻めているんですの!?私としては引っ込み思案な美兎さんがいろはさんに馬乗りになって攻めるほうがいいのですが…。もしや、ふたりはいろはさんのお部屋で濡れ場の練習をしてて、そのまま本気になっておっ始めてしまったのでは!?
 い、いけませんわ!!さすがにいろみとてぇてぇファンクラブプラチナVIP会員の私でも、千寿家の自室で快楽を求める性行為など、許されませんわ!
 このまま聴き続けたい欲を押し殺して、いろはさんの部屋に乗り込みましょう!

「いろはさん!美兎さん!およしなさい!ふしだらな行為で千寿の名を汚すことは許されませんわ!!」

「えっ!お姉ちゃん!?」

「あっ、暦さん…、お邪魔してます…。」

 あら?ふたりとも、衣服が脱げていませんわね。聞いてみると、ふたりでマ○オカートをして盛り上がっていただけみたいですわ。いろみとがてぇてすぎて早とちりでしたわ。
 その後は私も千寿家の女として、ふたりと一緒にマ○オカートをやりましたわ。でもふたりともお強いですわ…。負けすぎて、罰としてカリューのコスプレを着させられましたわ。恥ずかしめを受けている私の写真を撮り続けるおふたり。
 これがいろみとの間に挟まる女の末路ですのね…。



バイト編

 今日はいろはちゃんのバイト先で職業体験をしている。メイド服姿で接客するのは恥ずかしいけど、これも演劇のためだと思えば苦ではなかった。
 だがそこに一番会いたくない人物たちがきてしまった。

「ここがいろはさんのバイト先ですのね…」

「そうだ!皆私達を潤してくれる乙女ばかりだぞ。」

 厄介おばさんと初魅さん!?あのふたりが友人だったなんて…最悪だ…。

「お、おかえりなさいませ…」

「ん?美兎じゃないか。お前もここで働いているのか?素晴らしい!!」

「…!?白丸さん…あなたそこまでいろはさんのことが…。」

「あっ、あのご注文は…。」

「あっ、失礼しましたわ。デアエ・エクス・オムライスをお願いしますわ。」

「私も頼む。」

 ふたりはデアエ・エクス・オムライスを注文した。このオムライスは提供する際に、希望されたイラストや文字をケチャップで描くのだが、初魅さんは『いろみとてぇてぇ』、厄介おばさんは『結婚費用は貯めてありますわ』という文字を描くよう要求された。意味がわからなかったが、とりあえず仕事なので描いた。

 帰りに厄介おばさん、初魅さん、いろはちゃん、美兎の4人でチェキを撮った。

「いろみとは中央に陣取ってもらって、サイドは私達が固めますわ!いろみとの間は不可侵領域ですわ!」

 等と気持ち悪い妄言を吐き続けていたが、喜んでくれていたのでこれはこれでいいやと諦めの気持ちになる白丸美兎であった。




束縛編

 今日から電姫の物販に購入制限が課せられた。これまで『厄介おばさん』がマナーを守らずグッズを爆買いしていたためである。
 アクスタは1人2個まで、ブロマイドは1人3枚まで、トートバッグ、目覚まし時計、コップ等は1人1個までだ。
 公演が終わり、物販でグッズを買い占めようとする厄介おばさんに購入制限が伝えられる。

「そうでしたか…仕方がありませんわね…。」

 案外あっさりと引き下がり、規定内の個数だけグッズを買って帰っていった。
 これで皆の元にグッズが渡る!そう思っていたら、いつも厄介おばさんの周りにいた黒服達も物販に並び始めたのだ。

「イロミト、クダサイ。」

「コレガ、ジャパニーズテェテェネ…。」

 なんと厄介おばさんは黒服達に指示してグッズを買わせていたのだ。人海戦術により、グッズが枯らされてしまった。
 そこまでして買い占めてナニをするつもりなのか、白丸美兎には理解が追いつかなかった。


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