【日本株】地味ですが、実はグローバル・カンパニーな工作機械メーカー。6月の工作機械受注を、少し掘ってみました。
今日は、「工作機械受注(6月)」と工作機械メーカー(5社)について書いてみたいと思います。
ちょっと地味なテーマですが、工作機械受注からは「日本のものづくり企業は、実はグローバルだ!」ということがよくわかると思います。
ポイントは、
① 7/23(火)に発表された「工作機械受注(6月)」を見ると、工作機械受注がようやく(1年半ぶりに)前年比でプラスに転じている。
② その中で、工作機械受注の回復の恩恵を受けそうなメーカー5社を選んでみました。
という内容です。
では、早速。
1.そもそも「工作機械受注」って何?
名前の通り「工作機械メーカーの受注額を毎月、集計している統計」です。
工作機械とは、自動車、航空機(の部品)、半導体、家電製品、スマホなどの製品を造るための機械のことです。平たく言うと、「メーカーさんの工場に設置してある大きな機械」です。
メーカーさんが工場を新設したり、新しい設備に入れ替えたりする時、工作機械は発注されますので、設備投資の先行指標といった位置づけになっています。
そして、ここでのポイントは「実は、海外からの発注が全体の70%ほどになっている」という点です。
ですので、日本の工作機械メーカーはかなりの「グローバル・カンパニー」であり、インドやASEANなどの経済発展が著しい国々の成長を(自社の成長の)原動力にできる立ち位置にいるという点です。
以下は、工作機械受注の推移です - 2007年~2023年。
工作機械受注は、概ね(年間)1.5兆円を中心に±3,000億円くらいの幅で推移しています - リーマン・ショック時やコロナ禍ではもっと大きな落ち込みをしていますが・・・。
そして、その内訳を「内需」と「外需」で分けると、以下のグラフのようになります。
2007年当時、内需と外需はほぼ同じくらいだったのですが、2023年には内需 4,768億円(32%)、外需 1兆円(68%)と外需が大きく伸びています。
発展途上国において製造業が成長していること、日本の製造業も海外に進出していることなどが要因だろうと思います。
ですので、「海外でビジネス(売上げ)を獲ってこられる日本の工作機械メーカーがあれば、その会社の成長力には期待できるのではないか?」と考えます。
もう一歩、話を進めます。
工作機械受注は、2023年1月からずっと「前年割れ」が続いていました。世界中で金利が引き上げられたため、メーカーさんの設備投資が減速したことが要因だと思います。
それが、2024年5月に1年半ぶりに(前年比)プラスに転じました。翌6月はさらに大きなプラスになっています - どうやら、回復基調のようです。
グラフにすると、こんな感じになります - 上段は「実額」。下段は「前年比 伸び率」です。
下段グラフの右端を見ていただくと、2024年の5月と6月が「プラス」に転じています。去年の10月を底に回復傾向でしたが、ようやくプラスになり、かつ2ヶ月連続のプラスです。
「前年比 伸び率」を内需と外需に分けると、「外需の貢献」がより鮮明になります - 上段が内需。下段が外需です。
グラフにするとわかりやすいと思うのですが、外需の方が落ち込みは小さく、かつ回復も先行しています。
(前述のように)外需の方が受注の絶対額も大きくなっていますので、「海外のビジネスを獲れるかどうか?」がとても重要なように思います。
と、言うことで、まとめると、
① 日本の工作機械受注を牽引しているのは「外需」
② その外需が主導するカタチで工作機械受注が回復してきている
③ ならば、外需(=海外からの発注)を獲得できる工作機械メーカーには期待が持てるかもしれない
ということです。
そして、世界では、これから金利が下がってくる可能性が高いので、メーカーさんの設備投資が強くなる可能性も高い、と。
(やや脱線しますが)もう少し話を広げると、「日本の工作機械メーカーは、グローバルにビジネスをしているのに、企業規模が小さい」という弱点を持っています。そのため、本当のグローバル企業(トヨタやソニーなど)に比べて、それぞれの国・地域における現地オペレーションがかなり弱いのではないか。それが、失注や成長の足かせになっているのではないかと思っています。
ですので、(本当は)日本の工作機械メーカーは再編して、より大きな企業となった上で、世界市場で戦えば、もっと大きな成長ができるのではないか? と思ったりもします。特に、インドやASEANといった大きな市場が立ち上がりつつあるので、そこで大きなビジネスを勝ち取って欲しいなと思っています。
2.チェックすべき工作機械メーカーは?
海外ビジネスの比率が高く、特定の分野で強みを持っていたり、工作機械受注の回復が「業績の変化率」に寄与しそうな5社をピックアップしてみました。
① 三菱電機(6503)
PER 17.2倍、PBR 1.44倍、ROE 8.17%、ROA 4.85%、海外比率 51%。
工場向けオートメーション機械(FA機器)の売上げ構成比が13%あり、ここがずっと停滞していました。それが、(上記のように)外需中心に回復の兆しが見えているので「FA機器の売上げ・利益増加 → 業績の上方修正」といった「期待値」が高まる可能性があるのではないか、という視点です - 実際に上方修正があれば、「期待値 → 実績」となりますので、株価はついてくるのではないかと思います。
また、この note の文脈とは異なるのですが、同社は「防衛」分野も少し持っているので、投資家の注目を集めやすい側面もありそうです。
② ブラザー工業(6448)
PER 12.4倍、PBR 1.17倍、ROE 5.00%、ROA 3.62%、海外比率 86%。
昔はミシンの会社。現在は、本業がプリンターとデジタル印刷機。工作機械も手掛ける(売上げ比率は9%)。今年12月からインドの新工場(工作機械)が稼働予定。現地の自動車部品メーカーからの受注を狙っているが、ここの成長に期待大 - インドの自動車産業は大きく伸びると思います。
③ DMG森精機(6141)
PER 14.1倍、PBR 1.76倍、ROE 13.21%、ROA 4.69%、海外比率 84%。
工作機械の世界最大手 - 2009年、欧州最大手の工作機械メーカーであるドイツのギルデマイスターグループと資本提携。2016年、TOBにより同社を買収。
(前述した点です)工作機械メーカーは売上げの大きな部分が海外からの受注となっているグローバル・カンパニー。しかし、実際の経営や現場オペレーションはドメスティック企業のままというのが現状。
そうした中、同社は海外の大手企業を買収し、規模の経済とグローバル・オペレーションを追求できる体制になっています - 再編と成長の期待銘柄!
④ オーエスジー(6136)
PER 12.2倍、PBR 1.01倍、ROE 8.26%、ROA 5.97%、海外比率 67%。
世界トップクラスの切削工具メーカー(切削工具=刃物を用いて材料の不要な部分を除去し、必要な形状に加工する道具)。主力は自動車向け。特に、自動車(および航空機)のエンジン精密加工のタップ(ネジ穴の内側のネジ溝を作る工具)は世界トップ。2020年、グローバル・二ッチ・トップ企業100選に選ばれる。
インドに3工場あり。新たに第4工場に着工。急増するインドの自動車生産で恩恵を受ける会社。
⑤ アイダエンジニアリング(6118)
PER 12.1倍、PBR 0.62倍、ROE 3.51%、ROA 2.32%、海外比率 68%。
プレス機(圧力を加えることで金属を特定のカタチに仕上げる機械)の専業メーカー。自動車向けプレス機が70~80%。2014年、グローバル・二ッチ・トップ企業100選に選ばれています。
今期の業績が急回復する予想 - 営業利益で(対前年比)+57.7%、当期利益で(同)+49.6%。
と、こんな感じです。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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